【病院へのお願い】“連携”という言葉を安直に使わないで!(1/2)

こんにちは。ジャムおじさんです。
今日は是非、みなさんにも知っておいていただきたいテーマを取り上げます。
 
昨年末から何件かの病院関係者と交渉する機会を持ちました。テーマはいずれも『地域連携』です。要するに、私どもNPOの会員さんのご家族が、入院先の病院から退院勧告を受けたものの、本人のみならずご家族も自宅に戻すにはまだ不安が残っていてどうしようか…という相談が、3件ほぼ同時に発生したというわけです。
 
内訳は、大学の附属病院、300床を超える待機の中核病院、100床未満の小規模病院です。
こちらから先方に話した内容はほぼ一緒で、①本人またはご家族が抱いている不安 ②その上で退院時期の再調整依頼 ③転院先医療機関の紹介依頼 の3点です。
 
そして驚いたことに、3人の担当者は異口同音に「どうにもならない。また、転院先についても患者さん側で探してほしい」と回答してきました。いゃあ、驚きました。相手してくれた職員はいずれも地域連携部門のスタッフです。私は怒りを通りこして呆れながら尋ねました。
 
「ところで、こちらでいう“連携”って…、具体的な定義は何なのですか???」
 
回答1. 「私どもスタッフで地域の病医院さんや介護事業者さんをまわり、患者さんに質の高い医療や介護を提供しようとするものです。しかしながら、転院先のご紹介は基本的に主治医が行うもので、私たちが権限を持っているわけではないのです。今回は、申し訳ないですが、こちらで対応することは困難なのです。」
 
回答2. 「私たちの目指す連携とは、紹介・逆紹介の患者さんをしっかりと相手方にお返しするよう徹底すること…でしょうか。そのための調整や連絡を行っているのが、私どもの部署ということになります。」
 
回答3. 「介護が必要な患者さんに対して、地域の介護サービス事業者さんをご紹介しています。残念ながら転医については今後の課題ということで、実際の対応はまだできていない状況です。」
 
これでは私の質問の答えになっていないことが、みなさん、おわかりでしょうか?
まったくもって“患者不在”ですよねぇ。まぁ、患者本人ですら紹介状(患者情報提供書)に自分がどう書かれているのか見ちゃダメッ!という医療界ですから、期待するだけ損ということはあるかも知れませんがねぇ…。
 
それでは、そもそも全国の病院で『連携』なる言葉が使われはじめたのは、どういう経緯だったのでしょうか。時は2000年の第一次小泉内閣がぶちあげた“医療改革”に遡ります。そこでは国民医療費抑制の手立てとして病医院の機能分化が掲げられました。
 
「これからはやってきた患者さんをなんでもかんでも診るのではなく、自分の病医院がもっとも得意とする分野だけに特化しなさい。本来の守備範囲以外の患者さんは、地域の然るべき医療機関に渡しましょう。でもそうすると、これまではひとつの病院内での申し送りで済んでいたものが、別事業体とのやりとりが必要になりますね。だから、患者さんに対する医療や介護の質が落ちないように、引渡しを円滑にする役割を担う組織を用意してあげたほうがいいですよねぇ。」
 
このころから病医院のなかに『地域連携室』的な組織が続々と誕生してきて今日に至っています。国の方針としては、各病医院の『選択と集中』と『地域連携(他機能を提供する事業体とのチームプレー)』はセットだったわけです。病院側の都合で退院勧告するのであれば、転院先の紹介と申し送りをキチンとやって患者さんやご家族の不安を取り除いてあげるのが本来の連携であるはずです。
 

しかしながら、この本質的な部分がすっかり忘れ去られている現状があちらこちらで見られるのです。「うちは連携先がたくさんあるから安心ですよ」と言っておきながら、いざとなると「転院先は患者さんのほうで探してもらうことになっていますので」とホカるのであれば、金輪際、“連携”という言葉は使って欲しくありません。(続く)

今年こそ、地域医療従事者に心より望む ~新しい年の初めに~

みなさん、新年明けましておめでとうございます。NPO『二十四の瞳』の、“ジャムおじさん”こと、山崎宏です。
今年も一年、みなさんが医療や介護を少しでも安心かつ納得して利用することができますよう、100%利用者側の視点に立って活動してまいります。昨年同様、ご支援ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。

さて、年頭に当たり、全国各地域の病医院の患者さんやご家族に成り代わったつもりで、医療を提供される病医院関係者宛てのメッセージを綴ってみようと思います。

一年の終わりの月光

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増え続ける国民医療費、全国的に脆弱な救急システム、止まらない医療過誤、情報武装したお茶の間からの医療バッシング。そして、世論および患者側の、ここまでもの気運に対してさえ鈍感な多くのドクターたち・・・。

 
ここ数年の医療界を取り巻く環境は総じて暗い
。10年ぶりに診療報酬が0.19%引き上げられようと、やっぱり暗い。わが国全体の懐具合を考えれば、2年後の改定ではまたまたマイナスに転じるであろうことはみな知っている。おまけに、小泉内閣時代から綿々と続く医療改革が本質的な改革になっていないこと殆どのひと知っている。

 
だからであろうか、私には、医療経営に携わる者たちが、あたかも、疲れたサラリーマンのように映ってしまう。ガード下で、どうにもなりようがない環境要因にグチを言っては嘆き節をうそぶく、あの姿がだぶって見えるのだ。
ここはひとつ冷静沈着に、今年は自身の足場固めから始めてみてはいかがだろう。

 
私も含めて、長きに渡り、医療経営を指導する側の人たちは、医療福祉の世界は制度リスクを伴うから、国家行政の動向を時々刻々ウォッチしていくことが重要・・・等と言ってきた。たしかに間違いではないのだが、私は今年からいささか視点を変えてみることをお勧めしたい。

 
国家レベルでのバランスシートを悪化させたのが誰なのか。そして、どう対処していくのか。そんな異次元なことで袋小路に嵌っているよりも、まずは現場(地域や自院)に目を向けて、医療商売の原点に戻ってみてはどうか。まさに、井上陽水の「傘がない」の発想だ。

 
国民医療費が、介護保険を創ったにもかかわらず、毎年
1兆円ずつ増えていく。医療事故が止まらず危機管理が遅々として進まない。療養型病床の大幅削減にどう対処しよう。こんなことは、いい意味で割り切って放っておこうというのが私の提言だ。

 
これらが重要なことは異論はないが、みなさんの中での優先順位の問題だ。きれいごとを言っていても始まらない。医療経営者のみなさんは、自院の収支悪化の解決をお上に求めても埒があかないということを自覚して、今ここで自分にできることに取りかかるべきだと心から思っている。

 
あえて「医療商売」と言わせてもらったが、「医療サービス」でも一緒。その原点は、患者さんと言うよりは、地域との関係作りだと言い切ることができる。もっと具体的に言えば、地域にあなたのファンを増やしていこうということだ。とくに開業医の方にとって、これからもっとも気にかけなければならない経営指標は新患数。例えば、医業収入の7割が国保連から入ってくると言っても、そもそも患者さんがこなければ始まらない。で、昨今の耳年増になったひとたちは、待っていてもやって来ないのだ。

 
ではどうするか。今年は、このテーマに特化していきたいと考えている。
1980年代、米国からわが国のサービス産業界にもたらされたCRM(Customer Relationship Management)という経営手法がある。時代とともに若干の変化はあれど、CRMの本質的な定義は、「費用効果的に新規顧客を獲得し、上得意客に育成していくための関係維持強化手法」ということ。

 
これを医療福祉ビジネス版にアレンジしたものを、
2000年以降、さまざまな地域の医療経営者の方々と実施検証してきた。その結果、百貨店、ホテル、航空会社、更にはメーカー各社が導入してきた手法は、医療福祉の世界でも極めて有効であるという確信を持つに至った。

 
このCRMの医療福祉版『PRM(Public Relationship Management)』を、
ひとつでも多くの病医院に提案していくつもりこれからは、サービス業界が全身全霊をかけて追求せんとしている「サービスマインド」なるものを理解し、実践するドクターの時代だと信じて止まない。これまでに実施した複数の調査結果から、開業医が地域から求められるものは腕や技術よりもサービスマインドだという結果が、既に出ているのだ。より厳しさを増す医療経営環境のなか、地域でサバイブするための切り札は、ドクターをはじめとする医療従事者たちのキャラクターとパーソナリティだと思う。

 

ここ数年、「患者様第一」とか「患者様本位」とか「患者様視点」といったフレーズを盛り込んだ標語のようなものが掲示されている医療機関をよく見かける。わかってないなぁとつくづく思う。それが証拠に、待合いで見かけるスタッフをひとり摑まえて尋ねてみればいい。「こちらの病院でいう患者第一とは、具体的にどのようなことなのですか?」と。果たして、10人に声をかけたとして、何人から然るべき回答が得られるのだろう。

 
もっともわかりやすい話をすれば、病院側が提供するサービス構成要素のうち、診療自体のことを除いて、患者側がもっとも改善してほしいと願っているのが診療時間の問題だ。これは、待ち時間の割りに診療時間が短いということではなく、診療時間の融通性のこと。つまり、休日夜間も含めた診療時間の設定のことだ。例えば私が社会人になった二十数年前、大手のコンビニは文字通り夜の11時までしか営業していなかった。それが今や全国津々浦々、どんな片田舎に行こうがコンビニは24時間開いている。百貨店、量販店、スーパーだって同様に営業時間を延ばし、休業日を減らしている。

 
が、しかし、あれから四半世紀以上が経った今日でも、医療機関の対応する時間帯は変わっていない。いや、それどころか休診日が増え、実質的にサービスレベルは落ちている。サービス業と言われる各企業が顧客サービス向上を叫び、利用者の便宜を図るべくさまざまな経営努力をしてきたのに対して、医療機関は何の努力も創意工夫もしていない・・・と言ったら言い過ぎだろうか?

 
実際のところ、医療の質とは、突き詰めていけば「診療(診察と治療)の確かさ」と「患者満足度」だと私は考えている。特に開業医の場合、前者は診立てと治療方針(自院で対応するか、然るべき連携先に振るかも含めての意味)、後者は根拠の提示とわかりやすい説明となる。そして、ここで医者と患者のコミュニケーションという問題がクローズアップされてくるわけだ。

 
かつて、母校の云十周年記念行事の講師として聖路加の日野原重明さんの話を聞く機会があった。彼は、「医療とは患者と医師の両者で作り上げるもの。そこには必然的に信頼関係が不可欠であるが、そのためにはまず、医者は聞き上手に、患者は話し上手になるべきです。」というくだりがあった。
臨床のプロとして日野原さんのレベルがどんなものなのか、私は正直知らない。が、同氏が発する一連のフレーズには、患者さんやその家族を勇気づけたり、癒したりするパワーが感じ取れる。

 
先述のことばを私なりに噛み砕けば、患者さんがうまく話せるように効果的な質問をしながら診立てと治療方針を提示する。かつ、その根拠をわかりやすく説明して理解させる・・・。そんな作業が医者には求められるのだと思う。考えてみれば、遠いギリシャ時代からプラトンも言っていた。「医術とは、患者の本性をよく考察した上で、今後の処置についてその根拠を示し、説明するプロセスである」と。こうしてみたときに、いま私たちのまわりにあふれているドクターたちは、果たしてそれを実践していると評価できる代物だろうか?

  
「医療もサービス業」という前提に立てば、今年以降、医療経営のキーワードは、ズバリ、エンターテイン。特にプライマリーケアを担う開業医のみなさんにとっては、専門的な医療を行うドクター以上にそう言える。そして、このエンターテインの最も基本的なものが前述のコミュニケーションということになる。

 
何かしらの苦痛や不安を抱えてあなたのもとを訪れた患者さんが、「ああ、キツかったけれど先生のところへ来てよかった」「痛みの原因がわかってホッとした」「痛み止めを売ってもらって幾分楽になった」「あの看護婦さんは注射を打つのがうまい。ちっとも痛くなかった」「受付のお嬢さんは、いつでも元気でにこにこ。本当に元気付けられる思いだ」・・・、何でもいい。

 
もしも、多くの時間を割いて来られた患者さんが、「この病院に来てよかった・・・」とまったく感じなかったとしたら、あなたはその患者さんからお金をいただく価値がないのである。それがサービス業の本質だ。

 
「人が人を癒す」ということがある。この言葉を改めて肝に銘ずべきなのだ。

医者をはじめとする医療従事者は、いつも病人や怪我人に囲まれている。それが日常の風景だ。だから気を緩めると、痛みに耐えながらさまざまな苦難を乗り越えて受診しにやってきた患者さんの大変さ加減に鈍感になりがちだ。

 

患者さんにとっては、病院とは非日常的な場所である。だから、何時間も待たされてようやく順番がきた患者さんに、労いの言葉ひとつかけられないようでは非常識ということになる。(初対面の患者さんに対して、ろくに挨拶もしない、名前も名乗らないなどあってはならない。) 

 
診察室においては、視診・問診・触診が基本。風邪と思しき患者さんの扱いはとくに重要で、彼らは、あなたの風邪の診察ぶりを観察していることだろう。高視聴率の医療番組を彼らは観ていたかもしれない。その番組によれば、風邪の患者さんとのやりとりこそが、かかりつけ医として相応しいかどうかのチェックポイントだから。

 
今、第一次小泉内閣以降の医療改革がジャブのように効いてきて、競合激戦区では数年前から事実上の倒産に追い込まれる開業医が確実に増えている。こんな冬の時代だから開業しても患者さんが来ない。これはもう見事なまでに来ない。遅ればせながらではあるが、医療経営も創意工夫や努力が求められる時代となったのだ。

 
真剣勝負である。私は、患者さんも納得感が得られ、かつ、医療経営の質も確保できる・・・。そんなドクターがひとりでも多く出現してくれることを望んでいる。そしてまた、医療経営に携わるドクターたちがこの真剣勝負を乗り切っていくための具体的なお手伝いができる
よう微力ながらお手伝いをしていきたいと考えている。(以上)

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