(前回からの続き)“連携”という言葉を安直に使わないで!(2/2)

こんにちは。ジャムおじさんです。
前回からの続きです。
今回は、“連携”という言葉に対する病医院側と患者側の意識格差についてお話しますね。
 
一般的な患者さんの病態推移を、大雑把に、『急性期⇒リハビリ期⇒慢性期⇒療養期』としましょう。第一次小泉内閣による医療改革以降、病態の推移とともに患者さんが治療を受ける医療機関は変わっていくことになっています。治療環境が変わるわけですから、当然、患者さんもご家族も何かと不安になるわけです。
 
この不安を低減するために、退院元病院と転院先病院の然るべき担当者たちが患者さんの情報を共有し、今後の治療や介護の方針や治療内容、考慮点や生活上の注意事項などについて患者さんやご家族同席の下で協議・確認をする…。これが本来の『連携』であり、患者側がその言葉から期待してしまう連携イメージなのです。
 
しかしながら、病医院の連携部門の方々と話してみると、本来の連携のあり方についての認識レベルが甚だ低いのです。この認識のズレが患者満足度を下げ、時にクレームやトラブルとなって爆発するわけです。例えば、私どもNPOに寄せられる相談のトップ3は、以下のとおりです。ちなみに、過去3年間、不動のトップ3(ワースト3?)です。
 
①病院から(患者さんやご家族にとっては)唐突に退院を迫られ、自宅での受け入れが心もとない家族は自ら転院先を探したり、折衝したりしなければならない。⇒ 各病医院の地域連携部門は、対外的なチャネル拡充活動はそこそこやっているかもしれないが、患者側の意向を汲み取りながら退院後の具体的なサービス提供体制を確保することについては関心が希薄であると言わざるを得ない。
 
②訪問診療を受けている患家が、休日および夜間緊急時の連携先と(主治医から)教えられた病院に電話すると、当直スタッフから「はぁ?」という対応をされた挙句、一から事情を説明しなければならない。⇒ 主治医に対して、特に高齢者は気を遣って言いたいことを我慢する傾向があるから表面化しないが、こんなのハッキリ言って詐欺です。
 
③「医療機関と連携しているから安心」と謳われている高齢者施設の入居者が、いざ夜間にナースコールを押すと、夜勤スタッフが救急車を呼んでくれるだけで結局は家族が夜中に呼び出される。⇒ これは双方に問題があるのだが、一般的には弱い立場にある利用者側に対して、自施設の医療機関との連携内容について事前にしっかりと説明し、理解してもらえるよう努めるのが本当のところであろう。
 
誤解を恐れずに言うならば、世の中の地域連携には偽物が多いと思います。今年からは、地域にひとつでも多く『真の連携』が構築・実践されることを望んで止みません。そして、『真の連携』を謳う以上は、是非とも以下の3要素を満たした上で“連携”という言葉を口にして欲しいものです。
 
(1)連携先の確保
自院の守備範囲外の機能やサービスを提供してくれる、可能な限り多くの病医院、介護事業者、生活支援事業者とパートナーシップを構築する。
(2)責任所在の明確化
連携に係る責任部署・責任者を明確にし、そのミッションを理解させる。多くの場合、地域連携室やMSWがこれに当たるのだろうが、医療と介護の垣根が無意味となった今、対外的に連携網を拡充していくためには、社会福祉士という国家資格者が適任ではないか。
(3)連携プロトコルの設計
患者さんを引き渡す側と受け入れる側との手続きやプロセスをマニュアル化することが不可欠だ。引渡し後のフォローアップや病態急変時のオペレーションは是非とも盛り込んで欲しい。特に、退院時カンファレンスには、受け入れ側からも然るべき担当者(看護師&地域連携担当責任者がベスト)を参画させることが肝であろう。
 

さて、“連携”という言葉について病医院側と患者側がイメージするギャップについて2回にわたって書いてきましたが、両者間にズレが頻発する概念に、『手術の成功』、『患者第一』、『かかりつけ医』などがあります。各病医院には、これらの言葉の再定義と相互理解を職員のみならず地域のひとたちとの間で浸透させて欲しいものです。そして、患者さん側も時には「こちらの病院の“患者第一”って具体的にどういうこと?」と尋ねるくらいの意識を持っていただきたいと願っております。(以上)


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