さいごに

NPOの活動を始めてから、必然的に病医院や医者と接する機会が多くなりました。そのなかで非常に懇意な関係になった医者もかなりの数に上ります。人間的に魅力的な医者もたくさんいます。

しかし、彼らと親しくなるほどに、やはり納得のいかないことが増えていきます。ひとことで言ってしまえば、彼らが自分の家族に対して行う医療と、一般の患者に対して行っている医療は異なる、ということです。

医者も商売ですから、食べていかなければいけません。職員やその家族を養っていかなければなりません。医療財源がままならないわが国の厳しい状況もあり、多くの患者から売上を積み上げなければならない事情もわかります。

だから彼らは、検査や薬を必死で売ろうとするわけですが、そういうことを知らない患者さんは、彼らに言われるままにたくさんの買い物をしてしまうわけです。時に要らないものまで。そして時には有害なものまで。

こういう患者さんは、彼らにとって「良い患者」ということになります。そして、この「良い患者」のトップに君臨するのが後期高齢者と称される80歳以上の人たち。次いで65歳以上の前期高齢者、ということになっています。


つまり、適切な治療を受けるためには、そして、無駄な医療費を払わないで済むようにするためには、患者側も勉強しなければいけないということです。

私ども『二十四の瞳』では、医療をはじめ、介護や葬儀など、シニアが無用な経済的負担を被ることがないように、頻繁に啓発講座を行っています。ひとりでも多くの方に、自身の健康は自身で取り戻すものだということを、あなたのカラダについていちばんよくわかっているのは他ならぬあなた自身なのだということを、しっかりと認識してほしいと思っています。


今回、このプログの内容をまとめた小冊子を、私どもの会員以外の方々にも頒布させていただくことになりました。 もちろん、アマゾンからのご購入も大歓迎です!

老人クラブや町内会等でまとめてご購入いただける場合には、ディスカウントにも対応致します。 ご興味を持っていただけましたなら、下記までお気軽にご一報ください。

<連絡先>
メール:  npo24no1103@dream.jp
ファクス:  042-338-6682

「クールな老後」希望・・・と明記の上、ご連絡先(電話、ファクス、メール等)をご教示願います。

ふだん何気なく利用している医療ですが、その真実は、偶然あなたの前に現れた医者に盲従するだけでは決して知ることはできないものです。この冊子が、あなたのこれからの医療との接し方を再考するきっかけとなれば、こんなに嬉しいことはありません。

平成25年 早春   

NPO二十四の瞳 理事長 山崎 宏

抗がん剤の恐るべき真実(2/2)

前回からの続きで、抗がん剤治療の真実について、です・・・。

さて、今回は、もっとショッキングな事実をお伝えしなければなりません。


仮にある患者さんに対して、抗がん剤が有効だったとしましょう。
問題は、どう有効なのかということです。驚愕の回答はこうでした。

「ある患者さんに対してある抗がん剤が有効であるという場合、『有効』の定義は、もともとのがんの大きさが半分程度に縮んだ状態が四週間続くこと」なのです。

臓器にメスを入れられ、髪の毛が抜けたり、吐き気がしたり、そんなつらい思いをしながらもじっと我慢して抗がん剤を服用し続けている患者さんたちは、果たしてこの真実を聞かされているのでしょうか?

こういうところが日本の医療の、そして日本の医者たちのイヤなところです。インフォームド・コンセントは、一体どうしちゃったんでしょうか?

この真実を知ってから、私は日本の医療や政治や行政に嫌気がさすようになりました。だって患者さんは、この苦しみを乗り越えた向こうには健やかで健康な日々が待っているんだという希望があればこそ、治療に耐えているんですよ。

「10人中2人にしか効かないんですよ」という説明を事前に受けていたとしたら、誰が身体じゅうに不快感をもたらすあんな強い薬を使うものですか!

このことがあってしばらくしてから、別の医者からこんなことを聞きました。
 「うちはがん家系なんですよね。5年前に父が逝ってしまったんですが、年齢的なこともあったし、手術はしませんでした。もちろん放射線も抗がん剤も。ああいうのはまっぴら御免ですから。」
 

私は思った。正直でよろしいと。ならば患者にも正直に振る舞ってくれと。そして、わがNPOの会員のみならず、これを読んでくれたみなさんにも、とにかく声を大にして言いたい。
 
★もしも運悪くがんが見つかったとしても、慌てて治療法を決めないこと。
★ひとりでも多くの医者に、「あなたの家族がこの状態だったらどうするか」について見解を聞くこと。
★可能な限り手術はしない道を考えること。
★どうしても手術ということになってしまったら、『手術成功』の定義、術後の治療法、退院後の生活イメージを詳細かつ具体的に納得できるまで聞き出すこと。
★そのうえで自分自身で治療法を選択すること

・・・です。


とにかく、抗がん剤は2割しか効かないのです。効きもしない強い薬で最悪の予後を過ごした挙句に再発してしまう可能性があるという真実を、是非とも頭のどこかに入れておいていただきたい。

そして、ご自身や愛するご家族を自ら護っていくんだという意識と、そのための勉強を心がけていただきたいと、心の底から強く強く希望しております。

 
一事が万事。クールな老後を目指すあなたのために、今日も私どもNPO『二十四の瞳』は真実を伝えて参ります。

知らなきゃ怖い真実を、知らなきゃ損する、超高齢王国ニッポンの真実を。
 

抗がん剤の恐るべき真実(1/2)

さて今回は、毎年非常にお問合せの多い、がんの三大療法のひとつ、抗がん剤について驚愕の真実をご紹介しておきましょう。


私が医療の世界に関わるようになって、今年で11年目に入りました。時には医療を提供する病医院の側から、時には医療を利用する患者側から、またある時は、医療と連携する介護の世界から、さらにある時は、医療経営専門誌というメディアの世界から、多くの病医院や医者たちと接点を持ってきました。

当初は、本当に医療界とは摩訶不思議なところだと、つくづく感じたものでした。しかし、この10年で、かなりのことは理解できるようになりました。が・・・、それでも時には、「ゲゲッ、そんなことってあるか!」というような、一般社会では非常識と思われるようなことに出くわすことがあります。

ほんの3年くらい前のことです。コンサルティングの仕事をいただいた病院の外科医と仲良くなる機会があり、たまにふたりでお酒を飲みに出かけるような関係になりました。そこで私は、以前から不思議に思っていたことを彼にぶつけてみたのです。

それはがんの手術について。当時(正直に言えば、今も)感覚的に思っていたのは、がんが発見されて摘出手術に成功した患者さんのほとんどが、数年以内に再発または転移が見つかり結果的に死んでいく・・・ということでした。がんで家族を失ったご家族に話を聞くと、かなりの確率でこんな話が出てくるのです。

「手術は成功。目に見える限りのがんはきれいに取った。抗がん剤で再発を抑えれば問題ない。そう言われて、副作用に苦しみながらも治療を続けてきた。にもかかわらず、数年後に転移が見つかって他界した」。
 

この話をしたとき、彼が何気なく口にした衝撃的な言葉に私は絶句しました。

「開腹してみて目に見えるがんは全部取るだろうけど、目に見えないがんは取れませんからねぇ。どうしたって残ってしまうんじゃないかなぁ。」

まぁ、これはもっともな話なのかも知れません。だから、目には見えない転移を配慮して可能な限り広範囲を切除する慣習があるのだと思います。ただし、現在では、患者さんの負担を軽減すべく極力メスを入れる範囲を小さく抑えようという流れになりつつあります。

さらに、彼は続けてこう言ったのです。
 「それに、抗がん剤の有効率は、そこそこ2割程度でしかないから・・・」

問題はこの台詞です。私は口に含んだ日本酒を噴き出しそうになりました。以下はそのときのやりとりです。
 
「8割は効くってことですよねぇ?」
 「いや逆。8割は効かないんですよね。」
 「でも、たったの2割効く程度では有効とは言えないじゃないですか!」
 「そぉなんですよねぇ。」
 「・・・(まさか、そんなバカな)・・・」

翌日、朝一番から私は調べました。最終的には厚労省に電話までしてね。
その結果わかったのは、『わが国の抗がん剤の認可基準は、有効率20%以上』ということでした。

ある医者がある抗がん剤を10人の患者に投与したとしましょう。そのとき、2人に有効性が認められれば認可してあげましょう。他の8人には効かなくてもまぁ仕方がないでしょう・・・。

これが日本の医療の、抗がん剤治療の真実なのです。(続く)

朝まで待てないシニアたち

質問: 

高血糖で、地元の診療所に3年通院していますが、症状に改善が見られません。他の病院に変えようと思っています。今の先生に何と言ったらいいでしょうか?(70代女性)

回答:
病医院を変わるのに、いちいちそれまで通っていた医者に断る必要はありません。どこの病医院にかかろうと、すべて患者側の自由です。3年も通った挙句、症状は治らない。この期に及んでまだ医者に気を遣う・・・。いいかげんに目を覚ましてください! 

で、ここでは、彼女が土曜日の深夜2時すぎに電話をしてきたことを考えてみましょう。


この女性は、この問題で夜も眠れないくらいに悩んだ挙句、あちこち情報を探しに探して電話してきたのです。このことは、2つの視点から考える必要がありそうです。

まず、質問内容自体は週明けまで待っても支障はなさそうだということ。にもかかわらず、土曜深夜に電話をしてきた理由は、高齢者の場合、ほんの些細な不安でも、気にしだしたら夜も眠れないといった方が多いということです。ですが、自治体の相談窓口は平日の9時5時です。そんなとき、悶々としたまま月曜の朝を待つことなく、気軽に相談できる環境が整っていれば安心にちがいありません。

次に、これが仮に平日であったら、果たして彼女は自治体や病院に電話をしただろうかという点です。例えばあなたなら、ちょっと気になることがあるからといって、医師会や保健所、あるいは市役所や社会福祉協議会等の公的機関に出向いていきますか?

「相談して小難しい説明をされたり、たらい回しにされたりしないだろうか。まぁいい、面倒だからがまんしよう」。実際にはそんな行動パターンが多いのです。

高齢者にとっては、思い立ったときに気軽に相談できる環境が必要なのです。そんな思いからNPO「二十四の瞳」は、年中無休体制で対応しているのです。 

認知症予防あれこれ

質問: 

テレビで学習療法が認知症予防に有効だと言っていましたが、学習療法について教えて下さい。(60代女性)

回答:
学習療法は、音読と計算を中心とする教材を、学習者と指導者がコミュニケーションをとりながら学習することで、学習者の認知機能、コミュニケーション機能、身辺自立機能などの前頭前野機能の維持・改善を図ろうとする学習法です。

認知症高齢者のケアのみならず、健常者の認知症予防にも有効であることを、東北大学教授で医学博士の川島隆太氏などが提唱し、子どもたちの学習塾で有名なくもん学習センターが全国の福祉施設などに展開中です。

現在主流の認知症ケアは、従来のように薬物に頼るのではなく、音楽療法・芸術療法などの非薬物療法が主流ですが、これらは残念ながら、「本当に認知症の改善に有効だ」という根拠となるデータがありませんでした。

これに対して学習療法は、川島教授らの研究によって、「計算や音読を毎日行うことで、左右脳の前頭前野が活性化し、それが効果的な刺激となって低下しつつある脳機能を向上させることができる」という検証がなされ、ここ数年で急速に普及しつつあります。

『二十四の瞳』では、定期的に『生涯青春アカデミー』を開校していますが、この昨年からは学習療法を取り入れて、国語・算数・理科・社会に体育・家庭科など、小学校の授業形式の講座も運営しており、受講生の皆さんにご好評をいただいております。

人間ドックはがんのもと

質問: 

家内は年2回、わざわざ隣の県まで乳がん検診に行っているのですが、地元でやっている集団検診では効果がないものでしょうか?(60代男性)

回答:
なかなか深い質問です。そうすることで奥様が日々心配なく生活できるというのであれば意味はあるでしょう。

実は、既に米国では乳がん検診の非有効性が定説となっています。日本でも、集団検診の有効性について否定した公的レポートが存在します。公衆衛生審議会が、「子宮体がん、肺がん、乳がんは、現在の集団検診では実施してもなくても、発見率は変わらない」と報告していますし、過去の新聞記事にも、「大腸がん検診の有効性評価を行う厚生労働省の研究班は、集団検診での内視鏡・X線検査や直腸指診に否定的な見解を示した。自治体が実施する集団検診や職場検診などは奨められない」(平成20年3月23日の朝日新聞)とあります。

しかしながら、自治体や職場での集団検診には今でも必ずX線検査があるのはどうしたことでしょうか。ズバリ言います。健診や検診に多額の税金が使われ、それに伴い病人が増加して国民医療費は35兆円を超えました。このお金の行方を冷静に考えれば、医者に勧められるがままに聞きわけの良い患者にならないことです。

もちろん、適切なタイミングで適切な検査を受けることで危機を回避したケースもありますが、これからは、明らかな変調を感じたら検査を受ける、安心感を得るために年1回、誕生月に検査を受けるなど、自分なりにルールを設けることをお奨めします。

『健康管理は自己責任で』という自覚を持つべき時代になったと言えるでしょう。ちなみに、医者やその家族たちは、意外と検診を受けていないものですよ・・・。

 

出前一丁、訪問診療

質問:
ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』で訪問診療という言葉を耳にしました。現在、80歳の母に付き添って週2回の通院をしています。仕事をしていることもあり、かなりの負担になっています。できれば定期的に往診してもらえると助かるのですが。(50代女性) 


回答:
訪問診療または在宅医療とは、何かしらの事情で通院が困難な患者に対して医師・歯科医を総括責任者として、計画的・医学的管理のもとに介護体制を整え、看護師、薬剤師、理学・作業療法士、介護福祉士、ケアマネジャー、ヘルパー等が行うチーム医療です。
 
往診が患者の求めに応じて行われるのに対して、訪問診療は予め計画した日時に定期的・継続的に医師等が患者宅を訪問するもので、俗に「見守り医療」とも呼ばれています。

医師が通院困難と判断した場合に受けられるサービスで、主なケースとしては、①病院側の運営上の理由で自宅療養に切り替わらざるを得ない。②経済的な事情等で入院ができない。③病院で加療していたが、本人又は家族の強い希望で自宅に戻りたい。(がんの末期状態等)④老衰等、経過の長い疾患で、入院までは至らないが外出も困難。
 
また、患者側からすると、薬まで届けてもらえたり、費用面でも通院した場合と比べて殆ど変わらない(交通費を別途請求される場合がある)というメリットもあります。

しかし、訪問診療を提供する医療機関がまだまだ少ないという事情があるのです。最近では往診ですらなかなかしてもらえないのが実情です。自分が生活する地域で、訪問診療をしてくれる医療機関はどこなのか。地域の保健所や医師会から情報入手して、予め備えておきたいものです。かかりつけの医療機関で尋ねてみるのもいいでしょう。もちろん、そうした手間をかける余裕もないということでしたら、遠慮せずに『二十四の瞳』にご連絡ください。当該地域で訪問診療を手がけているドクターをお探しします。 

薬の多さにびっくり

質問: 

高血圧と頭痛で通院して1年以上になります。通院するうちに薬が増え、現在は8種類にもなります。
息子から「副作用が出るからやめておけ」と叱られるのですが、先生に尋ねることもできず悩んでいます。(70代・女性)

回答:
相談者は、血圧を下げる利尿剤の他、鎮痛剤、睡眠剤、眩暈薬。更に、副作用予防としてカリウム剤、痛風薬、胃薬にビタミン剤・・・といった具合に、細かな症状毎に薬を付け足されてきたようです。
根本の症状さえ抑えればいいものを、正直驚きました。さて、薬剤師からのアドバイスです。


★日本の医師は、臨床薬理学を無視してガンガン薬を処方する嫌いがある。米国では3剤までに抑えるのが原則。相談者の場合、米国なら2剤で済むと考えられる。

★高齢者の場合、各臓器の機能が低下しているため、薬の分解速度が遅い。よって、何種類もの薬を一日に複数回飲めば、体内で薬同士の相乗作用が生じ、非常に危険である。
 
私の父の主治医であった、全日本病院協会副会長の天本宏氏は言っている。「薬は飲まないに越したことはない。医師も患者さんも『医療には限界がある』と認識すべき。

健康寿命を決める因子は、食事・運動等の生活習慣が50%、住まいや人間関係等の環境が20%、持って生まれた遺伝子が20%。薬を含めた医療の影響は僅か10%に過ぎない」と。

 
薬を出す場合、医師はキッチリと説明する。不安ならば患者もしっかり質問する。いま、そんな関係が求められているとつくづく感じる。
 

施設パンフの美辞麗句と羊頭狗肉

質問:
老人施設に入所している母の様子がおかしいと深夜に連絡が入りました。その施設は病院と連携しているから安心と思っていたのに、結局私が施設まで出向き、タクシーで救急病院に付き添って行きました。後日、施設長に確認したところ、提携病院は夜間対応が困難で致し方なかったとのこと。何故か釈然としないのですが。(60代・女性)
 
回答:
それは大変でしたね。大事に至らなかったことをお祈りします。
さて、今回と同様の相談は、全国的にも非常に多いのです。

ズバリ、老人施設の「医療サポート」を巡るトラブルの原因は、医療機関との『連携』とか『提携』という言葉の定義にあるのです。パンフレットや事前説明の場では、「医療機関と連携しているから安心」という話が飛び交います。が、その実態は・・・。

 
つまり、施設側が説明する「連携」と、それによって入居者側が描くイメージにはかなりのギャッブがあるということです。一般に入居者側は、「休日や夜間緊急時に何かあっても、病院と連携しているから大丈夫」であろうと、ある意味、非常に都合よく考えがちです。ですから、いざその時になって、施設側が期待通りに動いてくれないと、感情的になって訴訟にまで発展してしまったりするのです。
 
対応策としては、入居決定前に、施設側の言う「連携」の定義をしっかりと確認すること。施設側の誰が、どこまで対応してくれるのか。連携病院は、いつ、誰が、どこまでのことをやってくれるのか。消費者保護が進んできたとはいえ、まだまだ私たちの方で、未然にトラブルを防ぐという意識を持つ必要があるというのが実際のところです。
 

突然の退院勧告

質問
75歳の母が、昨年末に梯子から落ちて右大腿部を骨折し、入院しています。入院先の病院から2日後に退院だと言われたものの、本人のみならずご家族も自宅に戻すにはまだまた不安です。あとしばらく病院で療養させたいと思うのですが・・・。


回答
私どもの相談案件トップ3に入るテーマです。そもそも入院した時点で、クリニカルパス(入院中の療養計画)に退院時期の目安が盛り込まれていないこと自体、その病医院の品質を物語っていますが、実際には場当たり的な入退院が当たり前になっている病医院がかなりあります。退院を告げられた際に、まだ不安を感じるようであれば、まずは次の3点をきちんと伝えることが必要です。
 
①本人またはご家族が抱いている不安 
 ②その上で退院時期の再調整依頼 
 ③転院先医療機関の紹介依頼
 
こうした患者さんからの相談や要望に対応する部署として、病医院の中には地域連携部門というのが存在します。組織の名称としては「地域連携室」が一般的でしょうか。また、規模の小さい病医院の場合には、MSW(メディカル・ソーシャルワーカー)なる専門職がこれに代わります。

いずれにせよ、『連携』というのがキーワードで、患者さんの退院や転院に係る不安を軽減したり、療養効果を上げたりするために、連携する他の医療機関や介護事業者、さらにはさまざまな生活支援事業者(配食、薬、リフォーム、タクシー等)などとのチームプレーが役割になります。

 
ですから、仮に病院側の都合で退院勧告するのであれば、転院先の紹介と申し送りをキチンとやって患者さんやご家族の不安を取り除いてあげるのが本来の連携であるはずです。

 
 患者さん本人やご家族は、治療環境が変わることに対していろいろな不安を抱きます。この不安を低減するために、退院元病院と転院先病院の然るべき担当者たちが患者さんの情報を共有し、今後の治療や介護の方針や治療内容、考慮点や生活上の注意事項などについて患者さんやご家族同席の下で協議・確認をする。

自宅療養するのであれば、家族による看護・介護の留意点、想定されるリスクとその対応についてきちんと説明する。さらに、不自由のない生活を送るために必要または有効と思われるサービスを紹介する。こういうことが本来の『連携』であるはずです。

 
しかしながら、この本質的な部分がすっかり忘れ去られている現状があちらこちらの病医院で見られるのです。「うちは連携先がたくさんあるから安心ですよ」と言っておきながら、いざとなると「転院先は患者さんのほうで探してもらうことになっていますので」とホカるのであれば、金輪際、『連携』という言葉は使って欲しくありません。
 
私どもに寄せられる相談の多くが、この『連携』という言葉の曖昧さや両者間(患者側と病医院側)の意識ギャップに起因するものです。
 
①病院から(患者さんやご家族にとっては)唐突に退院を迫られ、自宅での受け入れが心もとない家族は自ら転院先を探したり、折衝したりしなければならない。

⇒ 各病医院の地域連携部門は、対外的なチャネル拡充活動はそこそこやっているかもしれないが、患者側の意向を汲み取りながら退院後の具体的なサービス提供体制を確保することについては関心が希薄であると言わざるを得ない。

 
②訪問診療を受けている患家が、休日および夜間緊急時の連携先と(主治医から)教えられた病院に電話すると、当直スタッフから「はぁ?」という対応をされた挙句、一から事情を説明しなければならない。

⇒ 主治医に対して、特に高齢者は気を遣って言いたいことを我慢する傾向があるから表面化しないが、こんなのハッキリ言って詐欺です。
 

③「医療機関と連携しているから安心」と謳われている高齢者施設の入居者が、いざ夜間にナースコールを押すと、夜勤スタッフが救急車を呼んでくれるだけで結局は家族が夜中に呼び出される。

⇒ これは双方に問題があるのだが、一般的には弱い立場にある利用者側に対して、自施設の医療機関との連携内容について事前にしっかりと説明し、理解してもらえるよう努めるのが本当のところであろう。

 
誤解を恐れずに言うならば、世の中の地域連携には偽物が多いと思います。今年からは、地域にひとつでも多く『真の連携』が構築・実践されることを望んで止みません。そして、『真の連携』を謳う以上は、是非とも以下の3要素を満たした上で“連携”という言葉を口にして欲しいものです。

(1)連携先の確保
自院の守備範囲外の機能やサービスを提供してくれる、可能な限り多くの病医院、介護事業者、生活支援事業者とパートナーシップを構築する。

(2)責任所在の明確化
連携に係る責任部署・責任者を明確にし、そのミッションを理解させる。多くの場合、地域連携室やMSWがこれに当たるのだろうが、医療と介護の垣根が無意味となった今、対外的に連携網を拡充していくためには、社会福祉士という国家資格者が適任ではないか。

(3)連携プロトコルの設計
患者さんを引き渡す側と受け入れる側との手続きやプロセスをマニュアル化することが不可欠だ。引渡し後のフォローアップや病態急変時のオペレーションは是非とも盛り込んで欲しい。特に、退院時カンファレンスには、受け入れ側からも然るべき担当者(看護師&地域連携担当責任者がベスト)を参画させることが肝であろう。

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NPO法人 二十四の瞳
医療、介護、福祉のことを社会福祉士に相談できるNPO「二十四の瞳」
(正式名称:市民のための医療と福祉の情報公開を推進する会)
お問い合わせ 042-338-1882