NPO法人 二十四の瞳
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感動する医者の話15

長年にわたって飢餓に苦しんできた人類は、ある時期、食糧を大量生産するしくみを作り上げた。いわゆる農業革命である。それまでの有機肥料をやめて、化学肥料と農薬を大量に使う無機農法にシフトした。その積み重ねの結果、私たちは、私たちの健康にとってひつようなミネラルなどの栄養素を摂取できなくなってしまったのだろう。
 
有機農法では、緑肥・堆肥・腐葉・動物の糞や死体などの有機物を肥料としていたが、これらのなかには私たちの体内で遺伝子が正常に働くために必要なミネラルがたっぷりと含まれていた。しかし、化学物質で汚染された農作地から取れる穀物や野菜には、有機農法の頃のようなふんだんのミネラルは期待できない。それと同様の土壌になる草木を食べて育った牛や豚も同様である。
 
ミネラルが不足するとどうなるか。がんの遺伝子を多く持った人はがんになり、糖尿病の遺伝子を持った人は糖尿病になる。同じように、アレルギー体質の人は、ミネラルが不足することでダニや花粉に反応して、アトピーになったり、花粉症になったり、喘息になったりするわけだ。健康の源である食べ物の変化は、いつしか成人の6人にひとりが糖尿病、3人にひとりががんで亡くなる世の中を作ってしまったのである。
 
そして今日、私たちの多くはあまりにも忙しすぎて、新鮮な材料のみを探し求めて食事の準備をすることなどできやしない。そこでやむを得ず、一部または完全に調理された食品、つまり、脂肪や砂糖、ナトリウムや中毒性のある化学調味料をたっぷり使って加工された食品を購入しているといった状況なのである。
 
「なんか、もう何を食べても身体に悪そうですよねぇ…」
「時間とお金に余裕があったら、無農薬で天然の食材が望ましいのですけどね…。お母さんたちもみな忙しいという現状があります。従って、ついつい“お袋の味”ならぬ“袋の味”に逃げてしまいがちです。レトルトカレーとかですね。」
 
お母さんが、またクスッと笑ってくれた。食事の話をするときには必ず使うフレーズなのだが、内心気に入っている。気づいてもらえると、なんか嬉しい。
 
「そうしたくなる気持ちやそうせざるを得ない事情はよぉくわかるんですよ。でもですね、そんな忙しいなかにもなにかひとつでいいんです。お子さんへの愛情を注いであげて欲しいのです。ええっと、お食事のなかに。」
 
「食事のなかに…? 愛情を…」
「こういうことです。お母さんの作るオニギリ。君は好きですかぁ?」
「うん! コンビニのも好きだよ。和風シーチキンマヨネーズ。」
ガクッとなりそうなのをこらえて先へ行く。
 
「お母さんが作ってくれるオニギリが何ともいえず美味しいのはですね、手で握る時にね、お母さんの掌から出る愛情エネルギーがオニギリのなかにギュ~ッと注ぎ込まれるからなんですよぉ。あと、お家で作る手打ちうどんや蕎麦も同じ理屈です。食べ物を手で練るとか触るとかいうのは、同じ料理でも一段と美味しく食べるためのコツなのです。インドの人達が箸でなく手で食べるのは、その方が美味しいからかも知れません。だから、お母さんがじっくりとひき肉を捏ねてつくったハンバーグは、最高の愛情料理ということになるのです。」
 
「ハンバーグ、ハンバーグ!」
 
子どもが高らかに声を上げ、お母さんはそれをなだめながら微笑んだ。
 

「こんど、次の日がお休みのときに作ってあげてもらえませんか? ちょっと大変かも知れませんがね。」

(続く)

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