貴重な時間を割いてここまで読んでくれたアナタに、私のビジョンの一端を記載させてもらいます。
福祉に対するスティグマ(蔑視感)-。これをどう克服するかは実に重いテーマだが、福祉界のトップに君臨する社会福祉士にとっても絶対に乗越えなければならない壁である。これがなくならない限り、福祉の世界でがんばる人たちが自分の仕事に誇りを持てない。自分の仕事に誇りをもてない人が、いつまで品質のいいサービスを提供し続けることができるだろうか?そしてまた、社会的評価イコール処遇でもあり、今福祉が置かれている特殊で特異な位置づけの元凶は、いくらひとりひとりが誠心誠意がんばっても報われない、世間の福祉というものに対する評価なのである。では、これをどう高めていくか?
日本の長寿高齢化の現実を考えると、福祉のステータスが上がり、従来のようなスティグマの中で生きてきた福祉従事者とは全く違う新しい人材がどんどん入ってこなければ駄目。今でこそ、福祉に関心を示す若者はケタ違いに増えた。施設に行けば、茶髪や耳ピアスの兄ちゃん・姉ちゃんもいっぱいいるが彼らは純粋だ。しかし、彼らが福祉を学び、実務をこなす場が、もうすでに特殊・特異な世界なのだ。これでは、これまでの多くの福祉従事者と結局は多くは変わらない。
今の日本では、学生時代に福祉を目指そうと決めた段階で、特殊な世界に足を踏み入れざるを得ない。すなわち、福祉専門学校、看護学校など。そこには、同じ空間に経済を学ぶ仲間も、法律や文学を学ぶ仲間もいないのだ。自身のポジションを外から客観的に見たり、他の分野との関連の中で認識することが許されない環境。閉ざされた福祉ワールドへ向けて敷かれたレールの上をひた走る以外にない世界。法学・経済学・文学等を専攻した学生が例外を除いて、決してそれらの分野で社会人とならないのと比較すると、福祉を専攻した学生たちの(就職先という意味での)ポテンシャルのなさ、選択の幅のなさは何なのか。
経済を学んだ学生が何かのきっかけで福祉に関心を持つことは確率として考えられるが、福祉を学んだ学生が銀行や商社に進むことはまず考えられないー、というか許されない。社会に出る前の、自分の進路を決めるために他のどの年代よりも幅広くいろいろなことを見聞きしなければならない時代に、学生の段階で既に枠組みを決められてしまっているのが今の日本の福祉教育だ。これでは、みずからスティグマを抱きこむようなものだ。つまり、多くのキャンパスに、法学部、経済学部、文学部が存在するのと同じように、そこに福祉学部が存在し、そこに一時身を置いた学生も、就職段階では、普通に民間企業に歩を進められるような「ごく普通の」状況を作らない限り、いつまで経っても、福祉やそこで懸命に働く人たちのステータス、というか、周囲の目線は変わらないのではないか。
例えば、総合的な意味において日本の大学のトップである東大・京大・慶大・早大などに、仮に福祉学部ができたとしたら、福祉の世界は他の世界と横並びになるに違いない。誤解を恐れずに言えば、まず間違いなくこれらの大学を卒業した若者がドクドクと福祉の世界に流れ込んだとしたら、福祉の世界やそこに従事する人たちの社会的評価や処遇は格段に上がると考えられる。残念ながら、形から入るしか方法はない。医学と同様、福祉は専門性が高いから・・・などという寝言は意味がない。福祉畑で来た方々は、金融や商法の専門性をご存知か?
どの学問であっても、それをもって生業を立てようとすれば極めて専門度は深くなるもの。福祉の教育課程のみをその専門性を理由に他と分けるとすれば、それはむしろその特異性に答はあるといっていいだろう。福祉学部がどこのキャンパスにもごく普通に存在するようになってこそ、福祉の世界に対するスティグマはまずまちがいなく解消されると確信する。
もしかしたら、私のビジョンが具現化する日は私が生きている間には来ないも知れない。しかしながら、世界に類のない長寿高齢国において、これが実現することの意義は計り知れない。どんなに富裕なひとであっても老いや死は避けられない。しかも、病院や施設のベッドではなく、街の片隅でひとり寂しく死んでいくことになる可能性は高い。それが現代日本の現実である。貧富の差なく、誰しもが通る道だ。
高等な教育を受けた有能で優秀な若い世代が流れる水のように医療福祉界に入ってくれば、そこで働くひとたちのステータスが上がり、彼らの提供するサービスの品質が高まり、私たちも含めた利用者側の満足度も向上する。そんなサービスに関与する事業体はビジネスの成果が形となり、そこで働くひとたちのプライドが満たされる。これを医療福祉のポジティブループと呼びたい。
これを実現するために、私はメジャーな企業群というフィルターを通して、日本全国に利用者本意の医療福祉サービスを流通させていきたい。もちろん、儲かるしくみを回しながら。そして、社会での進路を検討し始めた若者たちが、“医療福祉の世界に進んだとしたら、結構ハッピーな未来が待っていそうだなぁー” と感ずるような環境を一日も早く創っていきたいのだ。
大事なのは、その日が来ることを信じることだろう。その信念と情熱をもって毎日を完全燃焼していきたい。
福祉のスティグマが解消される日を信じて。