私自身のためにも社会福祉士の社会的認知度を高めたい


 このレポートは、社会福祉士の収入とステータスとを底上げすることだけを祈りながら書き上げてみた。なぜなら、先述の調査結果で見ると、この私が上澄みの1.2%に入っていることが判ったから。共に通信教育に学び、共に合格した仲間たちを見渡すと、確かに私の市場アプローチは一風変わっていた。

 しかし、みなと変わっていたからこそ家族5人を養っていけるだけの収入に恵まれたのかも知れない。そう考えたのである。福祉の最高峰の資格を引っ下げて、仲間はみんな福祉の世界に進んでいった。それも殆どの奴が特定の福祉施設や介護事業者に。

 一方、私は福祉ではない一般市場に舵を取った。何人かの社会福祉士の方々にお会いして「こりゃ少々違うな」と感じたのもあるが、それは本質的な答えではない。答えは明快で、福祉の資格を武器に福祉の世界で勝負しようとしても全然目立たないからで、これに対して、福祉の「フ」の字も知らない一般産業界に行けば、少なくともオヤッとは思われると考えたからだ。職場デビューの際に多少なりとも注目を持ってもらうことは価値がある。その他大勢との差別化が図れるからである。


 もう一度言おう。社会福祉士の社会的認知度が低いのは、ズバリ、経済的成功を収めている者が少ないから。そしてこの私は、社会福祉士の社会的認知度を上げることこそが自分のミッションだと真剣に考えているのである。

経済的不遇のウラにある社会的認知度の低さ


 いくら福祉に情熱を持っていても、自分自身の実入りがこんなものでは、一定品質以上のサービスを維持することは困難であろう。バーンアウト症候群なる言葉が頭を横切る。実際問題としてお金は重要だ。これでは、優秀な若い世代の人たちが、一旦は福祉の世界を目指したとしても、先輩諸氏たちの実態を知れば、進むべき選択肢から外されてしまうのは当然である。

 また、経済的な問題と同様に深刻なのが、社会福祉士に対する世間の認知度であろう。あれだけの難関を突破して社会福祉士となったからには、ある程度華やかな活躍の場が用意されていなければ堪らないと思う。別に他人から賞賛されたいとは思わないが、蔑視されるのは許せない。

 「うちの息子はドクターになりまして」と知り合いが語れば、周囲は「それは凄い。優秀なお子さんを持ってお幸せですなぁ」となり、「うちの娘は社会福祉士になったんてすよぉ」と言っても、「はっ?なんとか福祉?普通の企業には入れなかったのかしら」となる。こんなひどい話が現実にあるのだ。

 かたや受けさえすれば誰でも合格る医師。一方、僅か3割の優れ者しか辿り着けないのが社会福祉士だ。お金が先かステータスが先かは、意見の分かれるところかも知れない。しかしながら、個人的見解としては、経済的成功なしに社会的認知度をアップするのは困難だ。

6割の社会福祉士が年収400万円未満という現実


 いきなりではあるが、社会福祉士の国家試験、あれは難しい。ここ数年の合格率は30%までも至っておらず、合格率3%の司法試験ほどではないにしろ、医学部さえ卒業すればバカでも合格る(?)医師国家試験(*その合格率は何と90%近い!)よりは間違いなく難しい。流石は、福祉関連資格の最高峰と言われるだけのことはある。

 が、しかしである。折角超難関な国家試験をパスしたものの、その後のキャリアや待遇を見ると、実に寂しい限りの現実がある。おそらく、遮二無二試験対策に取り組んで、見事合格した方々の中にも、「こんなハズじゃなかった・・・」とお嘆きの諸氏もいるのではないか。私の知人でも、勢い勇んで個人事務所まで開いた方が数名いるが、正直申し上げて悲惨な結果である。開業準備に奔走していた頃の晴れやかな顔はいつしか荒んでしまい、日々の生活費にも困っている様子がありありなのだ。「個人開業した場合、3年はジッと我慢」等と「石の上にも三年」的なことを真顔で言ってるひともいるが、今更ながらに、資格で顧客が寄ってきたり、メシが食えるような甘い時代ではないというのが現実だ。

 日本社会福祉士会が実施したアンケート結果を見てみよう。日本社会福祉士会が2007年に行った調査結果によると、社会福祉士の年収は、無収入:4.1%、100万円未満:3.3%、200万円未満:7.6%、400万円未満:42.2%、600万円未満:23.2%、800万円未満:10.7%、1000万円未満:4.9%、1000万円以上:1.2%となっている。


 つまり、8割の社会福祉士は年収600万円に届かないのが実態であり、更に6割の社会福祉士は400万円にも満たないのだ。月給にすると、社会保険料等が天引きされて25万円程度ということになる。これは、開業医の約8分の1、勤務医の約4分の1に相当する。悲惨である。月々の手取りが25万円ということは、一部上場企業に勤めるOLと同等ということになる。この金額では、少なくとも妻子(あるいは夫子)を養っていくのは困難だ。福祉界のトップとされる社会福祉士がこんなことでいいのだろうか。いい筈がないっしょ!

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