NPO法人 二十四の瞳
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変わり始めた地域医療機関


さて、東京へ戻ってから・・・。有給休暇を取得した私は、これまで仕事上の付き合いのあった医療機関の中から、高齢者医療では定評のあるA病院を選択。事務部門の責任者に事前相談の電話を入れた。その上で、父母を連れて院長の唯一の外来診察日である日曜日にA病院を訪れた。巷で人気の高い院長唯一の外来日である。予想以上の混雑であったが、受付に保険証を差し出してから起こったことを書き上げてみよう。

患者でごった返す待合室に、かろうじて父母が腰を下ろすスペースを見つけてまもなく、社会福祉士を名乗る職員が登場。私が事務長に電話で伝えた経緯の確認にやってきたのだ。じっくりとこちらの話を聞き、母が倒れた原因と想定される父の状況を含めて、A病院グループとして対応できることは何か、A病院では対応できないが紹介できる地域のプレイヤーはどこか、これからの流れについて説明をしてくれた。そして、やや離れた場所に居た父母に近づき、気遣いある言葉を投げかけてくれたのだった。そして、看護師は、初診患者用の質問シートを埋めた後、ほぼ15分間隔で待ち時間の目安、その時点で何番目なのかを腰をかがめて伝えに来てくれた。

そして、いよいよ診察室に入る。そこには何年ぶりかに顔合わせをする院長がいたが、こちらに気づくと彼はスッと立ち上がり、「いゃあ、長いことお待たせしました。」と頭を下げた。母には、血液検査とCTスキャンの段取りと、脳神経科の専門医に再診を勧めるとともに、通院困難時の往診を案内してくれた。診察室の片隅で不安そうに佇む父に対しては、両手を握りながら、心配しなくても大丈夫だと勇気づけてくれた。

検査の結果、母の健康状態は医学的には問題がなく、やはり痴呆の出始めた父と四六時中ともに生活していることによる心労が原因と判断するのが妥当ということであった。通院する過程で、父も院長に心を寄せるようになっていくのだが、出てくるスタッフの対応がいずれも心地よい。基本的に、こちら側を労い、受け止めてくれる寛容さが感じられるのだ。今では私が付き添うことなく、父母だけで通院しているのだが、先日はこんなことがあったそうだ。

いつも受けっぱなしの市主催の健診に意味を見出せなくなっていた母が、ふたり揃ってA病院で定期的な健診を受けることを切り出したときのこと。件の院長は、カルテを記載する手を止め、襟を正して立ち上がり、「是非私どもでやらせて下さい。お願いします。」と頭を下げたというのである。母は思いがけない院長の姿勢に感激し、私の携帯にその感動を伝えてきた・・・。

一連の話から、患者側の心理を理解している医療機関もあるにはあるということ。そして、現時点ではほんの一握りしか存在しないが、真に患者視点のオペレーションを実践している医療機関こそが、これからの医療飽和の時代に、「地域になくてはならない医療機関」として勝ち残るためのパスポートを手中にできるということである。 (続く)

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