NPO法人 二十四の瞳
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がんは切るな

ご主人(84歳)が、精密検査の結果、末期の大腸がんと診断され、慌てふためいて飛び込んでこられた女性がいました。一年前に自治体で受けた検診では異常なしだったにもかかわらず、です。すぐに摘出すれば成功の確率はほぼ100%だと言われたらしいのですが、当のご主人は手術だけは死んでもイヤだと言う。そこでご主人と会って話してみると、本人は痛くも痒くもないそうです。84歳。日常生活の支障はまったくない。術後の人生のことまで含めて考えたら、どう考えても摘出手術のリスクのほうが高いに決まっています。私は、手術は心でもイヤという直感は当っている可能性が高いように感じると伝えました。

基本的に外科医というのは、がんにはまず手術という習性があるものです。なぜならば、「身体に悪いところがあれば切り取るのが外科医の仕事。手術はがん治療のプロフェッショナル・スタンダードで、がんと診断しておきながら何もしないというのは外科医の倫理に悖る」という教育を長きに渡り受けてきたからです。だから外科医は“取れるがんは取る”し、何も知らない患者側ももちろん、“がん治療の第一選択肢は手術”と信じて疑うことはありません。しかし、言ってみればこれこそまさしくEBMとは対極の理屈だと思いませんか。

もうひとつ、こんな相談がありました。77歳の女性が肝臓がんと宣告されました。転移もひどく末期とのこと。しかしながら本人には何の自覚症状もなく、これまた1年前の検査では異常なしだったそうです。この先何をどうしたらいいのかわからない。先生、助けて…とのことでした。

相談していただいた時点で一切苦痛がないということなので、ちょっとじっくりと考えましょうということにしました。そして、まずはセカンドオピニオンです。これだけの重篤な診断結果ですから、複数の専門医の見解を聞かずして手術するなどはもってのほかです。必要であれば、専門医の紹介もする旨お伝えしました。

次に、セカンドオピニオンの結果、末期がんが確定した場合、治療法の選択をどうするか。これが相談者の今後の人生にとっての分岐点です。年齢的なことや広範囲への転移を考えると、まず摘出手術は絶対に避けるべきかと思います。例え手術が成功しても後々の生活がキツい筈です。術後の放射線や抗がん剤は、いずれも副作用の覚悟が必要になります。何より気分が悪くてどうしようもない場合が多いのです。

現時点で痛くも痒くもない以上、敢えてリスクの高い従来の治療法を選択することはお薦めできません。主治医には、「放っておく(手術や化学的治療を行わず、生活習慣を改善しながらがんと折り合いをつけていく)」という選択肢も含めて、相談者の「生活の質」の観点から最善策を提示してもらえるよう要請しました。基本的な考え方として、そもそもがんは生活習慣病です。つまり、糖尿病や高血圧と同様、現代の西洋医学では根治できない病気です。がんのような内なる病気に対しては、根本原因を取り除かない限り、むしろ
治療すればするほどがんの患者さんが死んでいくという傾向があります。私は、実際に従来のがん治療を受けた人たちがすぐに衰弱して亡くなられてしまうのを嫌というほど見てきました。


さて、結果的にこのケースは療法とも、患者さんが高齢という点を考慮して、食事、運動、適温維持等の生活改善で免疫力を高める工夫をしていきましょうということになりました。その結果、腫瘍マーカーの値にも改善が見られ、初めてお目にかかったときからは想像もできないくらいに表情も明るくなられました。今では体内に巣喰ったがん細胞とうまくつきあっていくという開き直りみたいな気持ちだと仰っています。

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