根拠より治ったという事実
ところで、NPOの彼のお父さんは認知症で要介護5だそうです。長生きしなければならない時代の最大の課題であるアルツハイマー病と診断されて5年が経ちました。主治医がたまたま謙虚で正直な人だったそうで、こんな説明をしてくれたと言っていました。
「アルツハイマー病には多様な症状があり様々な原因が考えられるのですが、いかなる生活習慣が脳にダメージを与えるのか、実際のところはわかっていません。つまり、お父さんがこうなった原因というのは医師にもわからないのです。現在の西洋医学にできることといえば、せいぜい認知症の進行を鈍化させるためにアリセプトを処方するということぐらいです。」
この話を聞いた彼が偉かったのは、アリセプトについていろいろと調べた結果、「認知症といっても、人によってその症状や原因が異なるはずなのに、なんでもかんでも一律にアリセプトを処方するだけというのは、本来は無理な話ではないか」という疑問を持ったところです。飲み始めてすぐ吐き気を催すひとも多いということを知って、お父さんには服薬量と頻度を彼が調整しながら飲ませていたそうです。
先の主治医から、「歳を取ると肝臓や腎臓の機能が落ちるため薬を分解したり排泄したりするのに時間がかかる。前に飲んだ薬が体内に残っているのにまた飲むというようなことをすると身体に良くない」と聞いていたからだと言っていました。この主治医の謙虚さと正直なところ。彼のお父さんを思う熱心さ。そこには非常に良い人間関係が出来上がっていたのだろうなぁと想像できます。
ところで認知症には、多くの医師たちは根拠がないと言って嫌うものの、有効と思われるケアが多数存在することも事実です。介護の現場では、食事(食餌療法)、音楽療法、学習療法、園芸療法、アロマセラピーやマッサージなどによって、問題行動が緩和されるなど改善傾向を示す認知症患者がかなりいます。これはもう結果がすべてであって、データがどうだの再現性がどうだのということを持ち出しても意味がありません。少なくとも患者本人や家族にとって、科学的根拠など関係のないことでしょう。
まず患者さんたちに知っておいて欲しいのは、世の中に医師の知らない治療法が存在していても何ら不思議ではないということです。医療は絶対的なものではありません。人間の持つ自然治癒力とか回復力というものについては、まだまだ科学ではわからないことが多いのです。ただ、自分が知らないからと言って、結果が出ている治療法を拒否しているだけというのでは医療のプロとしてはどうでしょうか。
医師のミッションは、まずは目の前の患者さんを治すことに他なりません。そういう意味では、科学的に実証されていないから東洋医学はダメだと固執する医師は、マスターベーションのようなもので、患者さんやご家族の満足や納得ということをないがしろにしています。医師としての本来のミッションを理解していないと思われても仕方ないのじゃないですかね。
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