NPO法人 二十四の瞳
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感動する医者の話11

事情があってご主人はいない。まぁ、ご主人がいたとしても、ご主人だって仕事が忙しいだろうし、お母さんの負担が減るかどうかはわからないが。ある意味、ご主人がいないだけ負担が軽いとも言えるかもしれない。いずれにせよ、助けて欲しい、何とかならないだろうかというのが2週間前の相談だった。
 
煎じ薬と痒み止めの抗ヒスタミン剤を処方。成人であれば組織胎盤注射をするところだが子どもには控える。併せて、保湿剤を入れたお風呂にゆっくり浸からせるよう指導したのだが…。私が気にしているのは、お母さんが会計を済ませている間に男の子と交わした会話のことだった。
 
 「君、保育園は楽しいですかぁ?」
 「うん、楽しい。」
 「痒いのがはやく良くなるように、先生もがんばりますからね。」
 「うん。」
 
子育ても遠い昔の私には、正直なにを話していいのかわからないところもある。無難なところで、と思い、こう続けた。
 
 「君は、食べ物はなにが好きですかぁ?」
 
間髪入れずに男の子。
 
 「じゃがりことキャラメルコーンでしょ、あとカラムーチョ!」
 「ええっ???」
 
聞きなれない言葉に目を白黒させていると、近くにいたスタッフが教えてくれた。
 
 「お菓子ですよ。お菓子の名前。すっごい美味しいんだよねぇ~?」
 「うん!」
 
支払いを終えたお母さんが男の子の手を握り、行きますよと合図する。
 
 「さようなら」と、屈託のない笑顔で手を振りながら出て行く姿を見ながら、私は得体の知れないお菓子を必死に連想しようとしていた。
 「ねぇねぇ、いまの男の子が言ってたお菓子ねぇ、どういうお菓子なの?」
 「スナック菓子ですよ。じゃがりこもキャラメルコーンもカラムーチョも、たぶんどれも人気トップ10に入ってますよ。」
 
女性スタッフの説明を聞いて、たまに立ち寄るコンビニにズラリと並ぶスナック類のカラフルなパッケージが浮かんできた。ジャンクフード。欧米ではこう呼ばれるスナック菓子は、ハンバーガーやフライドチキンやドーナツなどのファストフードと並んで、健康に有害な食べ物の代表選手である。ジャンクフードとは、「屑な食べ物」という意味だ。

(続く)

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