NPO法人 二十四の瞳
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感動する医者の話10

比叡山のふもとで開業している私だが、数年前から週のうち3日は東京で診察をしている。日本の病院界のトップブランド、慶応義塾大学病院。そのすぐ目と鼻の先にあるものの、どちらかと言えば目立たないマンションの1階がわが木下内科東京分院である。滋賀県大津市の本院をスタートしたのが平成元年。おかげさまで、近隣の方たちばかりか、西洋医学でいろいろな意味で嫌な思いをされた人たちが遠方からもやって来られる。
 
が、やはり東京以北から大津まで来るというのはちょっとキツい。そんな声に背中を押されるように5年ほど前に開いたのが東京分院だ。西洋医学に限界を感じ、その至らない部分を東洋医学で補完する統合医療を標榜する私が、広い東京の、それも西洋医学の頂点を極める人気の大病院がそびえる地で、妥当な物件を見つけたというのも不思議な巡り合わせだと思う。
 
新緑の季節、神宮外苑の杜を望めば、その向こうに抜けるような青空が広がり、凛としたそよぎを身体じゅうで感じることができる。本院から眺める比叡山も最高だが、大都会の真ん中で味わうオアシスもおつなものだ。カラフルないでたちでジョギングや壁テニスに興じる人たち、家族連れで賑わう遊具広場から聞こえてくる幸せそうな笑い声。目にするもの耳にするものすべてが私の波長に合っている気がする。
 
昼食を終えた私は、いつものように食後のコーヒーをやりながら、風薫る街並みを見下ろしている。診療の合間のつかの間、こころやすらぐひとときである。が、今日に限っては、午後の診療時間の最初にやってくる母子について思案を巡らせていた。2週間前、ちっちゃな男の子を連れて30代半ばくらいの女性がやってきた。相談内容は子どものアトピーだ。
 
問診のあいだも、男の子は、手といわず足といわず、まさにボリボリといった感じで掻きまくっていた。両手の指の間からは掻きすぎて血が滲んでいるほどだ。顔は真っ赤に腫れ、手首から肘、そして二の腕にかけて、ところどころ浸出液が見られる。服を脱がせると、ほぼ全身に症状が広がっている。お母さんの最大の悩みは、夜眠れないこと。子どもが痒がって寝ないからだ。
 
毎朝6時に起床。身支度をして朝食の準備。7時に子どもを起こし、必死の思いで7時45分に家を出る。子どもを保育園に預け、8時45分に会社到着。帰りは18時半に子どもを迎えに行き、買い物をして家に着くのが20時近い。来る日も来る日もこの繰り返し。このハードな日々を乗りきるための活力源は、なんといっても睡眠である。これを絶たれてしまうとすべてに支障が出始める。目の下には隈ができ、やつれは隠せない。

(続く)

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