東洋医学のメリット
最近出てきた言葉に「統合医療」というのがあります。私のクリニックで行っているのも統合医療ということになります。統合医療とは、従来の西洋医学に東洋医学を上手く取り入れた相互補完的な医療と考えればいいと思います。日本でもここ数年でようやくその概念が確立されつつあります。もちろん、まだまだ限られた医師の間でのことではありますが…。この章ではまず、東洋医学というものの特徴について、西洋医学との比較しながらわかりやすくお話したいと思います。
NPOの知人から受けた相談にこんなものがありました。あるご婦人が漢方薬について主治医に聞いたところ、「ああいう科学的根拠のないものはやめた方がいい。いまの薬で問題ない」と言われたというのです。約1年前に脳梗塞となって以来、ずっと降圧剤を飲み続けているそうで、最近、めまいや動悸が頻発するようになった。もしや薬の副作用かと思い、身体にやさしいとされる漢方薬についてちょっと質問してみた…というのが経緯のようです。
主治医の回答部分だけを聞くと、私としては実にお座なりな印象を受けました。もうちょっと言うと、おそらく主治医は漢方薬について知識や情報を持ち合わせていなかったのではないか。そんな気がしますだとすれば、患者が意を決して発した質問に対する答え方としては納得がいきません。昨今は、西洋医学と東洋医学の良いところを組み合わせて最善の結果を出そうとする統合医療という考え方がかなり話題にあがるようになってきています。そういう風潮を考慮すれば、科学的根拠がないと一方的に決めつけて、自分の処方に従えばいいという言動はプロらしくないと思います。西洋医学にしたって、根拠のない治療などたくさんあるのですからね。
漢方薬の大きなメリットとして、患者さんの複数の症状に対してひとつの薬で対応できるという点があります。病気のデパートと称される高齢者の場合には、このことの意味は大きいと思います。例えば、糖尿病、腰痛、高血圧、腎炎などを併発している患者さんがいるとします。おそらく今の日本の西洋医学ならば、それぞれの症状ごとに薬が処方され、さらに胃薬やビタミン剤や抗生物質までだされてしまう可能性が高いのではないでしょうか。ところが生薬を煎じて処方する漢方であれば、たったひとつの薬で済んでしまうというようなことが多々あるわけです。患者さん個々の体質や症状に合わせて処方するオーダーメイドの治療が漢方の最大の魅力と言えるかもしれません。西洋医学で問題視されている薬漬けですが、漢方であればまったく無用の心配です。また、漢方を含めた東洋医学には、西洋医学にはない「未病」という考え方があります。病気を未然に防いだり、生活習慣病の進展を抑制したりできるといった点でも、患者さんにやさしい治療法と言えるかと思います。
患者さんにとっての東洋医学の一般的なメリットを整理しておくと、①予防と治療を同時に行うことが可能 ②副作用が少なく身体に負担をかけない ③西洋医学よりも優れた効果をあげることも少なくない。この3点でしょうか。もちろん東洋医学も万能ではありませんから、西洋医学と東洋医学のどちらを使うかは状況次第であって、患者さんを治すという目的の下に、両者の優れたところを取り入れていくのが理想だと思います。
トラックバック URL
コメント & トラックバック/ピンバック
コメントはまだありません。
コメント