おことわり

    今日現在、私たちが出入りする病医院で行われている医療。これは、近代科学の一分野である西洋医学に則った医療で、一般に『西洋医学』と称されるものです。おそらく99%以上の割合です。東大病院や慶應病院をはじめ、最近では「漢方外来」など一部東洋医学的な治療法を導入しているところはありますが、まだまだ希少です。

 で、いま「漢方」と言いましたが、西洋医学の範疇には入らない医療が世界中にたくさんあります。漢方などでよく私たちにも比較的馴染みのある中国医学をはじめ、インドのアーユル・ヴェーダ医学、ドイツ人医師によって欧米に広まったホメオパシー、さらには最近コンビニでもよく見かけるサプリメント、その他、ヨガ、気功、霊気、太極拳、各種の祈り、食餌療法等々。こうしたものを総称する言葉として、代替医療、東洋医学、東洋医学など複数の呼称が存在していて、まだ統一見解には至っていないのが実際のところです。

 本ブログでは、読者のみなさんにすっきりと理解していただくために、便宜上、『東洋医学』という言葉を使わせていただきます。どこまでを東洋医学に含めるかというのは非常に難しい問題ではありますが、現代医療の象徴である『西洋医学』に対して、それ以外のすべてのものを『東洋医学』と表現させてもらいました。西洋と東洋という字面を見ても、両者を比較しながら読み進めていただくのがわかりやすいだろうと思うからです。ここのところを誤解曲解のないように、はじめにお断りさせていただきます。

このブログを始めたワケ

    私は、医師の仕事はただただ患者さんを治すことだと思っています。そのためには西洋医学だの東洋医学だのという枠は取り払って、目の前の患者さんにとって本当に効果があると判断したものを治療に取り入れていくのが医師の務めだと思うのです。だから、今回この本を書くことにしたのです。たまたま西洋医学と東洋医学を学んだ結果として、双方の長所短所や強み弱みといったものがわかってきたからです。

 ひとりひとりの患者さんが抱えている病気は、同じものなどふたつとありません。たとえ病名が同じでも、その患者さんが何十年も人生を生きてきたなかで現れてきた症状である以上、原因は異なるはずです。ならば、その患者さんが辿ってきた道のどこに根源的な原因があるのか。それを患者さんとじっくりとお話しながら見極めたうえで、それを取り除いていくための治療法を検討していきます。ある意味では、完全オーダーメイドの医療ということができるでしょう。

 今日では、巷の多くの病医院の診察室で、医師たちが患者さんの訴える症状を、ただそれだけを解消するために薬を処方するといった光景が一般化しています。これを対症療法と言います。しかし、本当にその患者さんの健康を真剣に考えるのであれば、その症状をもたらした行動を突き止める必要があるはずです。さらに、患者さんはなぜそのような問題行動を取るようになってしまったのかといった生活背景までを追求していく姿勢が求められます。生活習慣病への対処というのはそういうものです。

 東大の名誉教授で、多くの著作もある養老孟司氏は、「同じ病気や症状であっても、患者さんが受けている感覚というのはすべて異なるものだ。病人のケアに関わるのであれば、相手と自分との違いを認識し、その上で相手を理解しようとすることが大切だ」と仰っています。私は、いつもこのことを意識しながら、同じ一個の人間同士としてお互いが影響しあい自己発見していけるような、そんな関係が作れたらいいなと考えながら毎日の診療に当っています。

 そのなかで、みなさんが医療というものについて誤解していたり、疑問に感じたりしていることがたくさんあるのだなぁと思うようになりました。なので今回は、みなさんやみなさんの大切な家族が健康になるために、あるいは適切な医療を受けるために、知っておいたほうが良いこと、知っておかなければならないことについてわかりやすくまとめてみようと思ったのです。


 どうか肩の力を抜いてお読みいただき、いま通院している病医院や医師との関係をちょっと見直してみるきっかけにしていただければいいかなと思っております。そして、みなさんの健康を授けてくれるのは決して病医院や医師ではなく、答えはみなさん自身のなかにあるということに気づいていただけたら嬉しく思います。それでは、みなさんの毎日が健やかで幸せなものとなりますよう心から願っております。


NPO法人 二十四の瞳
医療、介護、福祉のことを社会福祉士に相談できるNPO「二十四の瞳」
(正式名称:市民のための医療と福祉の情報公開を推進する会)
お問い合わせ 042-338-1882