医者と対峙するということ ~70代女性の膝関節手術を巡って~
今回は、こんなケースを紹介します。
先日、会員さんのお友達が相談があるということで、相談者が入院中の某大学付属病院へ行ってきました。
以下にその内容をご紹介します。
彼女は一ヶ月ほど前、行きつけの大学病院から膝に人工関節を埋め込む手術を奨められたそうです。年明け早々には、手術に先立ち本人の血を1200ccも採るとのことです。入院期間も3週間から1ヶ月と聞かされた相談者は、なんとなく「本当にこのまま手術を受けていいものか」と感じているそうです。
私は直感的に、直接主治医から話を聴く必要があると思いました。そもそも相談者の女性はかなり細く、体重は40kgもなさそうです。つまり、基礎体力があるようには見えなかったのです。そんな70歳半ばの身体から1200ccもの血を抜き取っても支障がないものなのか。それに、ご本人から聞く限り、左膝の痛みの度合い・頻度とも、ここ1年は安定しているとのことでしたので、果たして大掛かりな手術をすることがベストな道なのかどうか確認する必要があると考えたわけです。
いろいろと話していると、主治医が本日の夕方から当直勤務に入るとのことで、成り行きで、いきなり主治医と会話を持つことになってしまいました。18時過ぎ、看護師を通じて主治医への面談を申し入れたところ、15分くらいして、私と同世代くらい(?)でモサァ~っとした感じの主治医(男性)がやってきました。早速、相談者にとっての手術の必要性とリスク、特にかなりの量の採血に体力的に耐えられるものかどうかを尋ねてみたのですが・・・。
果たして、主治医からの説明はこうでした。
①万一に備え、輸血用に本人の血液を1000cc~1500cc確保しておくのが今の標準。
②膝関節手術は技術進歩しており、まず失敗の心配はないと思う。
③手術については、過日患者に対してインフォームドコンセントを済ませてある。
みなさんは、この説明、どう思われますか?
私はこの医者と話して3分もせぬうちに「こりゃ見込みがない」と判断しました。
(1)まず、彼は私の質問にひとつも答えていない。
(2)一般論を持ち出して、患者固有の要因に配慮していない。
(3)まず手術ありきで、手術による副作用や合併症等のリスクに一切触れていない。
主治医が出て行った後、相談者に聞いたところ、「インフォームドなんとかってぇのは何なんですか?」。
これがわが国の医療現場の哀しむべき実情です。こういうのはインフォームドコンセントとは言いません。手術への誘導です。
その後、相談者に対して、私の母がこんな状況下にあったとしたら、彼の上級医に申し入れて別の道を探し始めるという話をしました。それが面倒というのであれば、転院するのもいいでしょうねぇ・・・と。
で、結局は、この相談者の『退院申入れの手続き』、『他の整形外科医の紹介』をやらせていただくことに決まりました・・・。
とにもかくにも、少しでも納得のいかない部分があったら、決して手術なんぞ軽はずみや流れで受けないことです。だって、現時点で取り立てて痛みがないんですからね。
ではまた。