カルテ入手のすすめ

こんにちは。アンクル・ジャムです。
さて前回は、医師が患者に対して果たすべき説明義務のお話をしました。早速お問い合わせがあったのでちょっとだけ補足をしておくと、説明義務とは、治療前だけに課せられているのではないということが重要です。治療後に注意すべき点についても、医師は患者に十分な説明をしなければなりません。これを怠って患者側に被害が発生した場合、医師は説明義務違反として責任を負わなければなりません。施した治療の内容・経過・食事といった、その後の生活についての注意事項を説明しなければならないのです。
 
もうひとつ大事なのが、医師の説明は患者が自己決定権を行使するために行われるものなので、患者が理解できるようにわかりやすく説明しなければならないということです。ただ説明したんだからいいだろ・・・ってなわけにはいかないのです。患者側の受け止め方をしっかりと意識して説明することが求められているわけですね。
 
さて今回は、カルテのことです。(正式には、「診療録」という)みなさんからしょっちゅうお問い合わせがあるテーマですね。実は、相談者からの依頼でカルテ等を入手してみると、カルテへの記載内容はかなり稚拙です。文字がよめないものから、ほとんど白紙状態のものまで・・・。わが国の医師には、どうやら危機管理意識というものがないようです。逆に言うと、彼らは従順で人のいい患者さんたちのお陰で命拾いをしているように、私なんぞは感じてしまいますねぇ。

実は、医師は患者に対して、どのような治療を施したのかについて客観的な記録を残しておかねばならないと定められています。この義務を怠ると、50万円以下の罰金を科せられることになります。具体的に記載すべき事項は、以下のとおりです。

 
①診療を受けた者の住所・氏名・年齢・性別 ②病名・主要症状 ③治療方法(処方と処置)
④診療年月日 ⑤既往症・原因・経過 ⑥保険者番号 ⑦被保険者証の記号・番号・有効期限 ⑧保険者の名称・所在地 ⑨診療点数
 
ただし、これらを機械的に書けばいいというものではありません。カルテとは、客観的な事柄を記録として残しておくための文書です。よって、誰が見ても読み取れるよう、記載者にしかわからないような略語や略字は使用できないことになっています。また、責任所在を明らかにするため、記載者と記載年月日&時刻も記載しなければなりません。もしもカルテの写しを入手する機会があったら、是非ともこれらの項目が判読しやすく記載されているかどうかをチェクしてみてください。
 

さいごに、もうひとつ知っておいて欲しいことがあります。それは、患者から請求された場合、医師には、正当な理由がない限り、診断書を作成して交付する義務があります。ここでいう正当な理由とは、患者以外から請求されて患者のプライバシーが侵害される恐れがある場合、未告知のがん患者の場合、保険金詐欺等に悪用されることを医師が知った場合、などをいいます。

患者に対する医者の義務とは

こんにちは。アンクル・ジャムです。

ここ数週間、またまたみなさんからの相談案件が増えてきました。ほとんどが医師とのかかわり方の問題です。こうした実例を聞くにつけ、世間的には医師の過酷な勤務状況について擁護する論調が増えてきた昨今ではありますが、まだまだ不当な不利益を被っている患者さんが多いことを実感します。相談者に共通するのは、いずれも極めて「良い患者さん」であるということです。どうもわが国の医療現場においては、「良い患者さん」ほど医療提供者にいいようにされてしまう危険性を孕んでいるようです。そこで今回からは、どうしてもみなさんに(患者の立場として)知っておいて欲しいことを書いてみます。
 
それは・・・、医師という職務には遵守すべきさまざまな義務があるということ。逆に言えば、これを果たしていない医師に対して、患者側はもっともっと権利を主張して然るべきだということです。しかしながら、ほとんどの患者さんは医師に対して従順です。複雑な胸の内とは裏腹に、ついつい医師の言葉に頷いてしまう。そんな呪縛から逃れるためにも、是非とも知っておいて欲しいのが、患者に対して医師が果たさねばならない義務…です。
 
さて、患者と医師の間には、診療契約という契約関係が成り立っています。とくに契約書は交わしていませんが、そんなこととは無関係に『診療契約』という概念が存在するのです。その契約内容ですが、ズバリ、医師が医療を施すことによって患者の健康を回復することです。ただし、医療行為には少なからず身体や生命の危険が生じる可能性も否定できません。また、治療法が複数ある場合も多々あります。
 
そこで患者側には、いかなる治療を受けるべきか、自分自身で決定する権利が認められているわけです。これを自己決定権といいます。しかしながら、通常、患者は医療についての専門知識を持っていません。で、診療に当たる医師には、専門家として、患者の診療状況を説明する義務が課せられているのです。これを説明義務といいます。
 
例えば手術となれば、患者の身体と生命に強い影響を及ぼすので、患者が自己決定権を行使するのに足るだけの十分な説明義務を果たさなければなりません。具体的には、最高裁判所が判示している次の5項目が説明されなければいけません。
 
①手術前の診断について ②手術の内容について ③手術の危険性について ④他の治療法について ⑤予後(手術後の経過)について
 

なお、この5項目は手術という特別な場合に限ったものではなく、すべての治療行為に妥当するものです。みなさんがいま通っている病医院の医師はどうでしょうか?仮にみなさんがいまの治療について納得がいかぬままにお金と時間を費やしているとしたら、主治医にこの5項目が該当するかどうかチェックしてみてはいかがでしょうか?クリアできていないとしたら、その医師は明らかに説明義務を果たしていないことになります。みなさんの出方次第では、その医師や病医院の立場は非常にまずいものとなる可能性があります。この点をご理解いただき、みなさんにはただ「良い患者さん」になるのではなく、彼らの言動をチェックするような感覚で診察室に入っていただきたいと思います。

日本の患者は我慢強すぎる・・・

こんにちは、ジャムおじさんです。先日、ニューヨークにいる親友が久々に帰国したので、一杯やってきました。で、あちらの病院の療養環境についていろいろとナマで教えてもらいました。わが国の病院の体制は簡単には改善されそうにありません。結論としては、患者自身が認識を改め、厳しい批判や選択の目を光らせることによって、改善をうながしていくしかなさそうです。
 
病院はあくまでも患者のためにあるということを、まずは患者さんたちにしっかり認識していただきたいのです。医者やスタッフに遠慮することはありません。自分の意思や希望や疑問を、病院側にきちんと伝えていく必要性を感じています。逆にそうでなければ、主治医や看護婦とよい関係を保つことはできません。
 
いつも気になることですが、日本の病院では、患者に対するスタッフたちの態度が敬意を欠いています。患者が高齢の場合、看護婦や他のスタッフがまるで幼児でも扱うような態度で接することもあります。立派な大人が幼児語で呼びかけられれば、不快に感じるのは当然です。そんなときは、対等な大人として扱うようにはっきり要求すべきです。
 
担当医にもっと病室まで来てもらいたいなら、そう申し出てください。主治医なら毎日、少なくとも一度はベッドを訪れるのが当然だし、病状によってはもっと頻繁に様子を見るべきです。よい医師なら、かならずそうします。
 
もし、あなたと担当の看護婦がうまくいかないときは、本人に直接、自分の気持ちを伝えるのがいちばんよい方法です。一度は自分の口から、不満や要求を具体的な言葉にして伝えなければなりません。それで解決できないときは、主任や婦長に相談します。

 「痛み」だって、かならずしも我慢する必要はありません。痛みについては、患者と医療スタッフの考え方が往々にして異なり、医者のなかには、鎮痛剤の処方を嫌う人もいます。看護婦が忙しくて、なかなか相手にしてもらえないこともあります。

 「手術の後は誰だって痛むんですよ」
 「しばらくの間だから我慢してくださいね」
 
しかし、痛みの感じ方は人それぞれに違います。同じ病気で、同じ手術を受けたとしても、ある人は比較的、楽な術後を過ごし、別のある人は耐えがたい苦痛を感じます。もし、あなたが痛みをあまり我慢できないたちだと思うなら、「病気なんだからしょうがない」などとあきらめず、スタッフに訴えるべきです。医者や看護婦に迷惑がかかるなどと心配するのは筋違いです。痛みを軽減するのも彼らの仕事です。痛みがとれればその分、回復も早いのですから、我慢するのは賢いことではありません。


変に「(病院にとって)良い患者」になってしまうと、それこそ病院のいいようにされてしまう・・・。悲しいことですが、これがわが国の実情だと認識しておいたほうがいいと思うのです。


NPO法人 二十四の瞳
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