NPO法人 二十四の瞳
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ゆでがえるの行く末は?

 ところで、欧米と比べ、わが国ではいわゆる「医経分離」がまったくもって進んでいない。医師法という法律で「医療経営者=医師免許保有者」と定められているのだから仕方ない。が、はっきり言って殆どのドクターは、能力的にも、意識的にも経営というものとは程遠い存在だ。従来の医局崩壊の流れもあって、勤務医の開業志向は相変わらずであるが、肉体的・時間的・経済的に過酷な勤務医はうんざりだからと開業してみたところで、もはや簡単にはやっていけない時代になったのだ。状況は一変したのだ。
 
 
いくらマイナス改定時代だからと言って、なぜ医療経営がうまくいかないのか。なぜ業界全体で8割もの医療施設が赤字なのか。ここはひとつ経営の原点に戻るべき、いや理解すべき時なのではないか。多くのドクターと接する度に、私は心底そう思うのだ。

 
 医師と患者のあるべき関係といった視点からすると実に遺憾なことではあるが、ここ数年で患者が医師を見る目は本当に懐疑的になった。原因は多々あれど、突き詰めれば医者と患者の信頼関係が断たれたということだ。止まらない医療過誤、公私にわたる医者のスキャンダル、ホスピタリティのかけらもない殿様商法。患者学の普及による患者の情報武装化。それに気づかない鈍感な医者・・・。
 
 これらの結果としての各種メディアによる医療バッシングは、利用者サイドからは何も見えないブラックボックスの中で、何十年も国家から保護されてきたツケと言ってもいいだろう。そんな環境変化にも気づかないで、いくら「俺は医者だ」と威張ってみても、患者に評価されなければ、利益があがらなければ、それでは単なる裸の王様だ。
 
 
そして、さすがにゆでがえるになる直前で遅ればせながら改心したとする。しかしながら、医者の専門的な技術や知識は、経営には何の意味も持たない。何をどうしてよいやら見当がつかない。なぜか。経営とは激動する環境変化に対処する技術だから。時には人の生命までも預かる過酷で繊細な作業の傍らでこなすには、経営とはあまりにも難解至極な分野だからである。

 
 どうやったら医療や看護の質を上げられるか、そのための経営効率をどうするか・・・といったことまで、医者には頭が回らない。だからこそ「医経分離」が必然なのだ。8割が赤字経営などという業界が他にあるか。(福祉があった!)欧米では、医療とマネジメントを司るプロが完全に分かれている。つまり、現場責任は医師、経営責任はきっちりと経営学を学んだその道のプロだ。
 
 
わが国でも、ごく一部の医療機関ではマネジメントの専門組織やスタッフを組織している。そんな医療機関はCS、いわゆる患者満足度が高い。利益率も高い。職員の定着もいい。言わば、医療経営のポジティブループが確立されているのである。

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