NPO法人 二十四の瞳
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入院

百貨店関係者が中元歳暮シーズン到来を待ちわびるように、巷の医者たちは喜色満面で冬を迎える。寒さで体調を崩しがちな高齢者たちがどっと押し寄せるからだ。まさしく At last である。Winter has come ! なのである。

高齢者患者のみならず、その家族たちもちょっとしたことで彼らに医者通いを奨励する。下手に家で倒れ、そのまま寝たきりにでもなられた日には、生活や人生そのものが変わってしまうからだ。冬場にちょっと咳ばらいでもしようものなら、医者と家族が示し合わせたように、当の本人がいくら大丈夫だと言おうが、『家だと冷えるから病院で過ごしたほうがいいわよ』とか、『万一のことがあってからでは遅いから』とか…。

こんな光景は全国で日常茶飯事である。厄介者を体よく追い出して、忙しくも賑わいのある年の瀬の準備に専念できるというものだ。で、入院させられたほうは、本当に身体を壊してしまったりする。なぜなら、病医院の中ほど病気になりやすい場所はないからだ。ただでさえちょっとした環境変化で体調を崩しやすい高齢者を病原菌の宝庫放り込むのだ。感染確率はかなり高いはずだ。家族は一瞬ギョッとするが、医者にしてみればまさに思う壺。その患者が死ぬまで貴重な収益源になる。国家的には国民医療費が膨れあがっていく…。

いかがだろうか? 例えばこんな会話を、医者が外部の人間である私と一献傾けながらするわけだ。高齢者患者の家族や病医院を侮辱するにも程があると不快感を露にする人もいるかも知れない。が、これが真実だ。ここまで露骨に言動に表すかどうかは別にして、本質は一緒である。紅葉が終わりに近づき年の瀬が迫ってくると、医者は空きベッドを埋めることに躍起になる。誤解を恐れずに言ってしまえば、無理やりでも埋める。それが彼らの仕事なのだ。経営とはそういうものなだから仕方ない。

●普通の医者 入院病床の空き状況を見ながら、これはという患者に入院を勧める機会をねらっている。理由として「ちょっと肺炎気味なので安全を見て」とか言ってくる場合が多いが、「寒い時期が過ぎるまで予防のために」などと訳のわからないものまである。とくに秋の終わりから2月くらいまでの期間は、早めにベッドを満床にできるよう計画を練っている。入院自体の説明については事務職任せ。事務員は「入院のしおり」を渡して、「読んでおいてください」で終わり。基本的に差額ベッドを勧めてくる。
●良い医者 本当に入院が必要だと判断したら、入院の目的、治療内容、入院生活、用意すべきもの、入院期間、費用について事前にきちんと説明してくれる。とくに治療内容とそのスケジュールについては紙にしたものを渡してくれる。また、事前に入院病棟を見学させてくれ、要員体制や院内感染対策などについても説明してくれる。
●悪い医者 理由もなしに、「ちょっと来週から入院しましょう」とか「入院です」とか一方的に決めつけてくる。年の瀬が迫ってくると、事務長に命じて直近半年以内に通院した高齢患者の家に電話させる。息子や娘を口説いてでも入院させようとする。こんな医者の口車に乗って入院してしまうと、本当に病気になってしまう場合が多い。衛生面を筆頭に、まったく安全とは程遠い場所なのである。
 
空きベッドを何とか埋めようとする医者側を過度に責めようとは思わない。むしろ責められるべきは患者側だ。病医院の利用の仕方、医者という人種との接し方を間違えているのだ。自分の身体をいちばんわかっているのは、たまたま出会った患者の前でふんぞりかえっている医者ではない。他でもないあなた自身なのだ。自身の健康に何ら責任を持たない周囲の声に惑わされて、いつまでも安直に医者のドアを叩いてはいけない。自らの身体から変調のサインを受け取った場合のみ、検査を受けるために医者を利用すればいい。

そして、検査結果に異常がなければ、それっきり医者とは距離を置くことをお薦めする。あなたを引き留めるために、医者は『薬を出しておきましょう』、『しばらく様子を見ましょう』、『来週また来てください』などと言うだろう。しかし、もうおわかりだろう。医者の関心はあなたの健康ではなく、あなたが運んでくれるお金(診療の対価としてもたらされる医業収益)なのだから。もうそろそろ、自分や家族の健康を代償にしてまで医者の儲けに加担する愚に気づくときではないか。

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