患者の識別
シニアの8割が「主治医やかかりつけ医がいる」と言う。しかし、そのうちの8割が、「主治医・かかりつけ医は私の顔と名前が一致していないと思う」と言っている。本来は、こういうのは主治医とかかかりつけ医とか言わない。患者の顔と名前の一致度は、初診時の問診の長さと質に依存すると言われている。
ちなみに主治医とは、読んで字のごとし。「主に治療に当たる医者」である。決して「主に治す医者」ではないからご注意を。これに対してかかりつけ医とは、患者側からみた呼称である。自分が「かかりつけている医者」のことだ。
米国ではこれらに相当する概念はなく、ホームドクターというのが一般的だろう。ホームドクターが患者の顔と名前が一致しないということは当然ない。それこそ昔の八百屋さん、魚屋さん、お米屋さんのように患者の家のことをよぉく知っている。冷蔵庫のなかまでは知らないかもしれないが…。
●普通の医者 患者の顔と名前が一致しない。何年も通い続けている医者のことを自慢話のように大声で喋っている患者がいるが、医者からすると、一日に100人以上来る患者のひとりでしかない。大尾にして患者の片思いである場合が多い。
●良い医者 患者の顔と名前が一致している。病医院の外で偶然出会ったときにも挨拶を交わしてくれる。診察室でも、会話のなかに患者の名前が自然と出てくる。「●●さん、今日はだいぶ顔色がいいですねぇ~」という感じ。
●悪い医者 患者を人として見ていない。モノとしてしか見ないため、あいさつする必要がないわけだ。当然、診察時もきちんと向き合って目を見て話すことがない、気遣いの言葉も出てこない。患者のことを思っているという演技すらしない。その意味も理解できない。こういう医者は、職員の顔と名前も一致しないことがある。こんな医者に出会ったら、そっと退席することだ。あなたがいなくなったのも気づかずに、パソコンを見ながら喋っているかもしれない。
人間が相手の顔と名前を識別できる数というのがあって、だいたい120人から150人だそうだ。お正月の年賀状の枚数や結婚披露宴の招待状の数も、平均するとこの間になるという。で、医者にも当然、顔と名前を覚えてもらうのが得策だ。そのほうがメリットは多いし、リスクは低くなる。毎日100人を超える患者と接すれば、すべて一律にきめこまやかに対応できるということはまずあり得ない。わかりやすく言ってしまえば、親しい相手ほど親身に接するようになるということだ。医者だって患者同様、人間なのである。だから、身内を診るのと他人を診るのとでは違いが出るのも当然だ。
となると、その医師自身または家族が患者のような症状になったらどうするか。これを聞き出せれば、患者にしてみたら実に価値のある情報ということになる。頃合を見て医者に尋ねてみよう。「あっ、先生、ちょっと、(症状や困りごと等)になっちゃって困ってるんですよぉ。先生だったら、こんなときどうしますぅ?」。こういうことを気軽に尋ねられるような関係が、実はいちばんいい。
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