NPO法人 二十四の瞳
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スカッと本音! 患者対医者

今回から、『患者のための医者の品定め ~良い医者 悪い医者 普通の医者~』をお届けする。
 
まずは、前提条件を明確にしておきたい。『患者ための、医者の品定め ~良い医者 悪い医者 普通の医者~』では、患者側から見た「最大多数の最大幸福」を考えることにする。5年間にわたるNPOでの相談活動のなかで、世の中でもっともありがちな患者像を捉えた感がある。そんな最大多数の一般的な患者にとって、理想的な医者とはどのような医者なのか。これについて考えてまとめたのが本ブログである。
 
読者のみなさんは、ご自身の医者に対する価値観と比べながら、肩の力を抜いて読んでみていただきたい。そして、実際に病医院で医者と対峙したときに、ちょっぴりクールな視線で目の前の医者を品定めして欲しいと思う。その結果をご近所のお友だちたちと意見交換しながら、100パーセント患者視点に立った、地域の良い医者ランキングなどを作ってみていただけたら本望である。
 
さて、現代に生きる私たちの死因の殆どは生活習慣病と称されるものである。この世に生を受けて長いこと人間稼業を営むうちに、私たちの身体には少しずつガタがくる。中年と言われる年代にさしかかると、糖尿、高血圧、高脂血症、骨粗鬆症等の症状が出始める。そしてその延長線上には、日本人の3大死因であるがん・脳梗塞・心筋梗塞といった影がちらついてくるのである。逆に、予期せぬ感染症や事故・ケガ・自殺で死ぬのは、現代社会においては少数派である。
 
よって、本書でいう最大多数の患者とは「生活習慣病の症状を既に持っている人および予備軍」と定義させていただく。また、そんな患者たちの品定めの対象となる医者であるが、「生活習慣病の患者が全診療の8割以上を占める医者」のことである。つまり、テレビ番組でよくある、救命救急病棟とかで天才的な技術で高度な難手術に敢然と挑んでいくような、ブラックジャックのような医者は品定めの対象としない。言い換えれば、地域の第一線でプライマリーケアに従事する医者ということになる。昔風に言えば“町医者”である。
 
つぎに、本書でいう患者像をもう少し明確に定義しておこう。できることなら、読者のみなさんが、「あっ、私もそうだ」と賛同して、頷きながら読み進めていただきたいものである。そこで、私が数えきれないほどの相談者と接してきた経験から、彼らがこれからの人生に対して抱いている希望や願望の最大公約数を設定してみた。それは、「50歳過ぎくらいから何かしら生活習慣病の症状が目立ちはじめたものの、日常の活動に支障がない程度に症状をコントロールしながら、100歳まで人生を全うしたい」ということである。たぶん、読者のみなさんの7割以上は該当するのではないかと思っている。
 
日本が世界でいちばん長生きの国となって久しい。100歳以上の人が3万人を超え、国民の4人にひとりは高齢者(65歳以上)なのだ。感染症や戦争であっと言う間に命を落としてしまうことも少なくなかった時代と比べ、現代人の「死」とは極めて緩やかなものになった。何かしらの症状を発症したからといってもすぐに人生の終わりとはならない。その後何年もの長い時間をかけて、ゆっくり死んでゆくという特徴がある。死に対する準備期間があると言い換えることもできるだろう。
 
このことから、先述の患者の願いをもう一度見てみよう。「50歳過ぎくらいから何かしら生活習慣病の症状が目立ちはじめたものの、日常の活動に支障がない程度に症状をコントロールしながら、100歳まで人生を全うしたい」。これを具体的な日常生活の過ごし方に書き換えるとどうなるか。
 
そう。患者にとって幸せな人生とは、「その患者自身が決めた寿命までの長い歳月を、然るべき範囲内で、好きに食べたり飲んだりできて、好きに活動できる人生」ではないか。健康上あるいは身体上多少の不具合があったとしても、明るく楽しく前向きに毎日を送っていける。これが長生きしなければならない時代の幸せな生き方なのではないだろうか。
 
例え寿命だけを無理して延ばしたところで、自分の好きな食べ物を自分の口で食べられない、美味しいお酒も嗜めないというのでは人生を堪能しているとは言いがたい。自分の足で散歩したり、お風呂に入ったり、友だちとお喋りしたり、映画や芝居を観たり、旅行にいったり…。若い頃と同等とはいかないまでも、心身ともに愉しく潤いのある日々を過ごすことができる。それが健やかで幸せな熟年ライフというものではないだろうか。そう考えると、最大多数の患者にとって理想的な医者とは、こうした患者の幸せを実現できるように応援してくれる医者ということになる。
 
こんな視点から、読者のみなさんのまわりを見渡してみていただきたい。果たして、これから先の長い長い期間にわたって、みなさんの健康や幸福に貢献してくれそうな医者がどれくらい存在するものなのか。そして、みなさんが100歳まで健やかで幸せな日々を送っていくためのパートナーとなり得る医者を、なんとか探し当てていただきたいと心から願っている。

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