特定健診の舞台裏
さて、2008年4月から駆け込みで法制化された特定健診。これで得をしたのはいったい誰なのでしょうか?高血圧患者3500万人。糖尿病患者・予備軍は1800万人。諸々のアレルギー患者が5000万人。がん患者70万人。難病患者60万人。これだけで軽く1億人を超えている計算になります。さらに死亡者の原因疾患は、がん・虚血性心疾患・脳卒中で約60万人と、日本人の3人に2人がこれらの生活習慣病で亡くなっています。だから若いうちから病気を予防して健康なひとを増やし、結果的に国民医療費を抑制しようということでスタートしたのが特定健診です。肥満・高脂血症・高血圧・高血糖が揃った状態は「死の四重奏」と称され、放置すると重大な症状を引き起こすぞ、と大々的にキャンペーンが行われています。
男性の場合でヘソ周りのウエストが85センチ、女性は90センチを超えた場合は「要注意」となり、メタボかどうかの大きな基準となります。これに加えて、さらに①血中の中性脂肪値が多いか善玉コレステロールが少ない ②血圧が高い ③血糖値が高い の3つのうち2つが該当すると「メタボリックシンドローム」と診断されてしまいます。
メタボあるいはその予備軍と診断されると、保健師や管理栄養士などから保健指導を受けなければなりません。こうやって若いうちから危機意識を持たせてメタボを減らし、国民医療費も削減しようというシナリオだったのですが、この特定健診には最初から疑惑が渦巻いていました。
最大の疑問はウエストの寸法です。男が85センチで女が90センチという数字の根拠がわかりません。米国の診断基準は男性が102センチ超、女性が88センチ超でいずれも日本より緩やかです。また、米国では女性のほうが男性より基準値が厳しくなっています。他の国の例を見ても男性の基準のほうが厳しいのは日本だけです。また、男性のウエスト85センチという値は、日本人男性のほぼ平均値であり、この基準でいったらほとんどの人が引っかかってしまうのではないかと指摘されていました。
そうこうしているうちに、読売新聞が、「メタボリックの診断基準を作成した委員会メンバーのうち国公立大学の医師11人全員に高血圧などの治療薬メーカーから合計約14億円の寄付があった」と報じたのです。これによって特定健診とは、結局は多くの人をメタボに仕立て、その治療に薬を使用するのではないかという見方が定着してしまったわけです。そうなれば、医療費の抑制なんぞ夢のまた夢となってしまうのは当然かもしれません。少子高齢化によって瀕死状態にある社会保険制度を救う唯一の方法とされる予防医学ですが、こうした事実を知ってしまうと、結局は医師が薬を処方する口実を与えてしまうだけではないかという疑念が生じてくるのです。
いや、はっきり言いましょう。私は、日本の西洋医学の現状は、検査と薬を売らんがために患者さんたちの健康をないがしろにしていると思っています。多くの医師たちが、薬と検査の売人に成り下がっています。ですから、新薬の研究開発については非常に危機感を覚えています。これから患者さんたちにとって望ましい医療が浸透していくためには、ようやく芽吹いてきた東洋医学のような自然的な治療法の対立概念として、どうしても製薬メーカーの商業的開発姿勢が浮かび上がってくるからです。メタボリックを解消するために日常的に服用する薬からがん治療における抗がん剤に至るまで、その研究開発は毒と効能を抱き合わせて行われているため、患者さんは生涯にわたって薬害から逃れることができなくなってしまいます。まさしく薬漬けの状況に陥ってしまうのです。
トラックバック URL
コメント & トラックバック/ピンバック
コメントはまだありません。
コメント