NPO法人 二十四の瞳
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医療もエンターテインメント


ある意味では、
医療もサービス業です。サービス業であるならば、キーワードは『エンターテインメント』です。たまに誤解されて困るのですが、患者さんをエンタテインするというのは、何も患者さんをリラックスさせるために笑わせなさいと言っているわけではありません。サービス業で言うところの「(お客様を)もてなす」を一歩踏み込んで、「患者さんを癒す」ということです。『癒す』という言葉の本質的な意味は、「長い間欲しくてたまらなかったものを手に入れさせて満足させる」ということです。そして、患者さんがずっと欲しかったものとは、『気持ちがわかってもらえたという安堵感』です。特にプライマリーケアを担う臨床医はこの点をしっかりと理解する必要があるでしょう。
 
何かしらの苦痛や不安を抱えながらやっとのことで医師のもとを訪れた患者さんが、「ああ、キツかったけれど先生のところへ来てよかった」、「痛みの原因がわかってホッとした」、「痛み止めを打ってもらって随分楽になった」、「あの看護婦さんは注射がうまい。ちっとも痛くなかった」、「受付のお嬢さんは、いつでも元気でにこにこ。本当に元気づけられる思いだ」…等々。

極論すれば何でもいいのです。時間を割いて病医院を訪れた
患者さんがまったく癒されることがなかったとしたら、その病医院はその患者さんからお金をいただく価値がありません。厳しいかもしれませんがが、それがサービス業の本質だと思うのです
 
そして、このエンターテインメントのベースとなるのがサービスマインドとかケアマインドということになります。日本には「人が人を癒す」という言葉があります。この言葉をいま一度肝に銘じて欲しいと願います。医師をはじめとする医療従事者は、いつも病人や怪我人に囲まれています。それが日常の風景です。だから気を緩めると、痛みに耐えながらさまざまな苦難を乗り越えて受診にやってきた患者さんの大変さ加減に鈍感になりがちなのです。
 
患者さんにとって病医院は、非日常的な空間です。だから、何時間も待たされてようやく順番がきた患者さんに労いの言葉ひとつかけられないような医師は、社会人として非常識と言わざるを得ません。ましてや、初対面の患者さんに対して、ろくに挨拶もしない、名前も名乗らないなどというのは信じられません。藪医師とは、診断のできない医師や手術の下手な医師ばかりを言うのではありません。患者さんの立場になってその苦しみや痛みを理解しようとする意識。そして、それを少しでも和らげてあげようとする心。これらが劣っていても、それは立派な藪医師の条件だと思うのです。
 
この章の最後に、淀川キリスト教病院の名誉ホスピス長で金城学院大学学長の柏木哲夫氏の言葉をご紹介しておきます。柏木氏はクリスチャンの精神科医で、わが国のターミナルケアの権威です。

「これまでの近代病院には、検査・診断・治療・延命という
4つの機能があって、治らない患者さんについてはとにかく延命してきました。しかしこれからは、治らない場合にはしっかりとケアをして、その人がその人らしい人生を全うすることを援助できる医療でなければなりません。時代も環境も激変した今、もうそろそろ高度な先進医療ばかりを追求した従来の発想を脱却しなければいけないと思います。

そこで医療者に求められるのがケアとコミュニケーションの資質です。不治の患者さんは、つらい、悲しいという気持ちをわかってほしいと願っています。その気持ちに寄り添うようなケアとコミュニケーションを回復していかなければなりません。私は、これらがないと、もはや本当の医療とは言えないと思っています。」(2008915日、東京国際フォーラムで行われた『21世紀高野山医療フォーラム』での講演より抜粋)

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