人生いろいろ、相談いろいろ

昨年の相談トップテン
 NPO二十四の瞳(正式名称:市民のための医療と福祉の情報公開を推進する会)では、高齢者のみ世帯を対象に、年中無休(24時間365日)の会員制困りごと相談を行っている。昨年(2010年)一年間に寄せられた相談案件の集計結果を紹介しよう。 

相談件数は全部で355件。これまで同様、そのうち九割以上が医療・福祉・お金・葬儀といったテーマに集中した。

 ①病医院からカルテや検査データを円滑に入手したい。代行してもらいたい。(82件)
 ②何年も通院しているのに、症状に改善が見られない。どうすべきか。(47件)
 ③処方される薬が多すぎるように感じる。どうしたらよいか。(45件)
 ④治療方針や治療法について他の医師に見解を聞きたい。(28件)
 ⑤入院先から急に退院と言われ困っている。病医院側と折衝してほしい。(23件)
 ⑥予算内で入居できる施設を探したい。具体的な物件の候補を見つけてほしい。(22件)
 ⑦必要最低限の費用で葬儀を賄いたい。対応してくれる葬儀社を探してほしい。(19件)
 ⑧医療や介護に係る費用負担がきつい。何かよい方法はないか。(17件)
 ⑨介護事業者に確認したいことがある。問合せ方をアドバイスしてほしい。(16件)
 ⑩自宅でもできる簡単で有効な認知症予防策を教えてほしい。(8件)
 
納得できないことがあっても、医師や病医院とうまく折衝できない・しづらいという状況は例年通りであった。提供者側(とくに医師)には、患者に寄り添うような姿勢が望まれる。最大の特徴としては、医療・介護・葬儀サービスが家計に占める負担が増加傾向にあることを窺わせる結果となっている。

その10 立つ鳥跡を濁すべからず

 自分が死ぬまでにどんなことが起こるのか。年寄りは自分でよぉく考えてみろ。生老病死は世の常。年とって老いぼれて病気になって死んでいく。このこと自体をありがたいと感謝せよ。

 戦争でも事故でも殺人でも自殺でもなく、人間の基本的なプロセスを経て人生を終われることに感謝せよ。この過程で必要となる医療・福祉・法律・お金・葬儀・・・。これらサービスの確保、手続き、費用をどうするのか。自分自身で調べて準備せよ。決して子どもたちを当てにしてはならない。みんな忙しいのだ。

 
 子どもや孫たちのみならず、国にも社会にも一切期待するな。国に何かしてもらおうなんてとんでもない。日本じゅうどこを探しても、もうそんな余裕はない。自分のことは自分で何とかしろ。

 人間はひとりで生まれてひとりで死んでゆく。生まれてオシメをつけられ、またオシメをつけられて死んでいくのだ。周囲に迷惑をかけながら死んでいくのだ。どんなに偉い年寄りでも、どんなにお金持ちの年寄りでも大差はない。

 このことをしっかりと認識し自覚すれば、年寄りのあり方は自ずと見えてくるはずだ。とにかく謙虚に、極力周囲に迷惑をかけぬよう、身の程をわきまえて生きていくべきだ。そのためには、少しでも早いうちから、自分の老後と最期を具体的にプランしておくことだ。

 
 通帳、印鑑、生命保険や不動産関係の書類の在り処を、今のうちから子どもたちに教えておけ。死んだりボケたりしてからでは遅いのだ。年寄りが死んだ後で子どもたちが手続きするのに探す時間がひと苦労だ。

 また、認知した隠し子がいる場合、借金を抱えている場合など、こうした家族にとってマイナスの事実についてもきちんとカミングアウトしておこう。でないと、アナタが死んでから遺族が修羅場を迎えることになる。そうなればアナタだって成仏できないだろう。

 
 NPO『二十四の瞳』では、元気なうちからエンディングを計画する個別相談の場を用意している。

 早いうちから身辺整理し、澄みきった心で最期に臨みたいものだと思う。 

その9 のしかかる医療と介護の費用負担の攻略法

 日本人の平均寿命は約80歳。健康寿命が約75歳。その差は5年。

 ちなみに健康寿命とは、病気や認知症などで要介護状態となった期間を平均寿命から差し引いた寿命のことである。長寿国では一般に平均寿命と健康寿命の開きが長く、わが国でも最晩年に寝たきりなどになる期間が国民平均5年以上に及んでいるのが現状だ。

 
 つまり、この5年間は医療費や介護費が大きく膨らむ可能性が高い。もっとも、もっと早い段階から医者に通い続けている人も多いわけで、月々の支払いたるや相当な金額になっているはずだ。
 
 これへの基本的な対策を挙げておく。まずは、医療費と介護費の上限設定だ。世帯の所得状況に応じて、それぞれ月額1万5千円の上限設定が可能である。

 要は、いくら医療や介護を使おうが、月額1万5千円だけ支払えばいいですよ、ということだ。これは大きい。使わない手はない。基本的に、国民年金だけに依存して暮らしている人であればまず適用される筈。単純計算では適用不可となる場合もあるが、『世帯分離』という裏技もある。

 
 かかりつけの医者と懇意であれば、障害者認定をしてもらって自治体の障害福祉課に届け出て、障害者手帳を給付してもらう手もある。そうすれば、医療も介護も自己負担ゼロだ。おまけに、市営バスやスーパー銭湯などのタダ券までもらえたりする。ただし、自治体によってメニュー格差あり。
 
 他にも、生活保護を受給したり、社会福祉協議会が行っている福祉融資制度など、一般の人たちには意外と知られていない(自治体としても、あまり大々的には告知したくない)救いの手というのがあるものだ。
 
 経済的に本当に行き詰ったら、自ら命を絶ったりせず(最近は列車への飛び込み自殺が増えているが、あれほど迷惑千万なものはない。死んでからも人様に迷惑をかける神経がわからない)に、自治体に相談に出向くべきだ。

 が、極めて失礼な対応をする職員もいるから、予め情報武装をしておきたいところだ。

 私どもでは、きめこまかいガイドをさせていただいている。遠慮なくコンタクトしてほしい。 

第2弾!『医シュランガイド』が出ましたっ!!!

みなさん、大変長らくお待たせ致しました!

医者の品定めガイドともいうべき『医シュランガイド』がついに書店に登場です。

お医者さんとのつきあい方にお悩みの方。
主治医に対して何かしらの不満や不安をお持ちの方。
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通院時の意識や心の持ち方が変わります。
診察室で緊張することなく、目の前のお医者さんを冷静に観察することができるようになります。

ご自分の体のことをいちばん正確に理解しているのは、他でもないアナタ自身です。
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そんな願いを込めた一冊です。

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その8 葬儀葬祭を後の祭りとしないために

 葬式にお金をかけるな。死んでまで無駄なお金を使わないでくれ。そんなお金があるなら、子どもや孫たちにあげてしまえ。葬式代など、どんなに高くともせいぜい50万円まで。云百万もかけるのは愚の骨頂。心優しい遺族たちに負担をかけるのもいい加減にしろ。
 
 世の中には、遺族の予算を膨らませることしか考えていない葬儀社が腐るほどある。祭壇・戒名から精進おとし・香典返しまで、ランク別に価格を設定し、高いのを押し売りしてくるのだ。頼みもしない式次第、勝手に書かれた弔辞を涙ながらに読み上げる役者たち、マジックショーさながらに華やかに天高く飛び立つ鳩・・・。大切な故人の葬儀のことでもめたり、値切ったりしたくないからと耐える遺族たち。よくある光景だ。
 
 日本消費者協会の調査では、2010年度の葬儀費用の全国平均は200万円弱。この費用を捻出しようと、年金暮らしの年寄りが日々の生活を切り詰めて暮らしている現実がある。華々しい誤解をしながら互助会とやらに月々云千円を支払い続けている能天気な人もいる。バカも休み休み言えと言いたい。これまでどれほどの人たちが痛い目に遭ってきたことか。 
 
 だから、元気なうちから自分の葬儀をどうしたいか決めておけ。そして、それを家族に明確に伝えておけ。最終的に病院で息を引き取ったならば、病院が紹介してくる葬儀社は断固断りなさい。遺族は毅然として故人との約束を果たさなければならない。病院に出入りしている葬儀社は、基本的に高いし融通が利かない。彼らに遺体を運ばれてしまったら最後、いつの間にか数百万円コースをひた走ることになってしまう。
 
 「故人の遺志で、お願いする葬儀屋さんが決まってますので」と必ず病院側に伝えることだ。お金をかけない葬儀など、いくらでもやり様がある。自治体によっては、10万円前後で一切を賄ってくれる『市民葬』という制度がある。

 あるいは、私どもNPO『二十四の瞳』にご用命いただければ、当該地域で予算に応じた葬儀を行ってくれる葬儀社を探して差し上げよう。実績として、都内であれば30万円で滞りなく故人をお送りすることも可能なのだ。

その7 「終の棲家」はこう決める ~騙されない施設選び3つの質問~

 実際問題として、介護が必要になったらこの世も終わりと心しておくこと。自分でトイレができなくなったら自宅での療養は諦めるべし。でないと大切な家族まで倒れてしまう。老老心中や介護虐待のもとだ。食事や入浴の介助と違って、トイレだけは計画的にいかない。家族は夜も眠れなくなり、やがてアナタを憎むようになっていく。この介護はいつまで続くのか・・・。

 この出口なき迷宮では、どんなに奇特な心の持ち主であっても、かなりの確率で自分自身を見失ってしまう。ボケも同様。身内だけではない。世の中に迷惑をかけることになる。そうならないよう日々努力するのがクールな老人のあるべき姿だ。
 

 死に場所くらいは自分で探しておけ。
 いつまでも自分の家にしがみつくな。
 それ以上に子どもたちにしがみつくな。

 懐具合と相談して、今のうちから終の棲家の目星をつけておくことだ。
 子どもたちも忙しい。自分のケツは自分で拭け。


 死に場所については、元気なうちから然るべき相手と十分に意思の疎通を図っておかねばならない。然るべき相手、と言った意味は、必ずしも配偶者や子どもたちが最期を看取ってくれるとは限らないからだ。

 多くの人たちが「自宅か施設か」を議論しているが、本当に問題となるのは「誰に看取ってもらうか」ということである。現代は、2組に1組が離婚する世の中だ。しかも、夫婦の5割がセックスレスだという。

 が、仮に配偶者に看取ってもらうという前提で考えたとき、次のように考えるべきだと私は思う。


 ●排泄介助が必要で、かつ月額三〇万円以上支払える財力があれば、無条件で施設。
 
 ●排泄介助が必要ではあるが経済的制約がある場合は、介護病棟を有する病院。併せて療 
  養費の上限を設定する手続きを取る。
 
 ●排泄介助が必要なく、自宅療養を望む場合、訪問診療&訪問看護&訪問介護他を利用す
  るための手続きを取る。
 
 なお、仮に施設を検討する場合のチェックポイントは、次の3点である。
 
 ①途中解約時の返還金の算出方法
 
 ②緊急時医療サポートの具体的内容
 
 ③認知症になっても本当に最期まで入居できるか
 
 私どもNPO『二十四の瞳』では、予算やニーズに合致した施設探しや現地見学同行等、最後の生活場所選びに失敗することがないよう、可能な限りのサポートを致しております。

その6 往生際の美学

 人間誰しも、自分の意思で生まれてくるわけじゃあない。生まれてからの長い人生にしても、自分の思い通りになることなどまずないだろう。仏教では思い通りにならないことを『苦』と言う。だから『生老病死』を四苦と言う。であればせめて、最後の最期に自分の死に方くらいは自分で決めようではないか・・・。というわけで、リビング・ウィルである。
 
 クールな老後の極めつけが医療との関わり方であることはまちがいない。その中でも「ターミナルケア(終末期医療)」である。特に、自然の摂理や人間の尊厳を無視した延命
治療については、元気なうちから方針を固めておかねばとんでもないことになる。

 昔で言うスパゲッティ、今ならパスタ。身体中を管で繋がれ、無理やり生かされるアレである。もともと医者はハナから延命治療に疑問を持っていない。むしろごく当然のことと思っている。今でも放っておいたらいつの間にか、点滴、酸素吸入器、人工呼吸器、尿管、心臓の状態を管理する管を挿入されてしまう確率が高い。患者の家族が、「何とか生き長らえさせて下さい」などと言おうものならば、待ってました、ってなことになる。病院としては莫大な売上を計上することができるからだ。

 
 が、当の患者本人の苦痛たるや想像を絶するものがあろう。数時間おきに採血されて腫れ上がった左右の腕を見たら、家族だって後悔するのは時間の問題だ。おまけに、延命治療を選択した場合には、最期の瞬間に患者とのお別れの時間は取れない。機械のゴーゴー言う音で話し声など全く聞こえない。

 こういうことを踏まえて、自分が現場復帰できない状態だとわかった時にどうするか。今から延命治療へのスタンスを決めて家族に伝えておくことだ。この、家族に伝えておくという点が重要だ。だって、いざその時になったら、アナタは意思表示できないのだから。
 

 さらにもうひとつ。延命治療の入口に位置するのが「胃ろう」だ。脳外科手術の後などに、胃に穴を開けて管を通し、そこから強制的に栄養液を入れるやつだ。誤嚥性肺炎を防ぐのが目的だが、実際には看護者や介護者の管理負担を軽くする目的で、ちょっとしたことですぐ胃ろうを造設されてしまう場合が多い。

 よくあるのは、脚を骨折して入院しただけで、「ご家族の介護も大変ですから、この際、胃ろうにしちゃいますか」的なノリで持ちかけられたりする。これで患者は食物を自分の口で味わうことができなくなってしまう。

 
 肝心なのは、本人の意思を反映することだ。将来的に経口摂取が望めないとわかった時にどうするのか。人生最大の楽しみでもある「食べること」を失ってまで生きたいかどうか。私であれば、例え死期が早まったとしても、こんな栄養補給は願い下げである。
 
 が、実際に胃ろうにするかどうかを決めなければならない時、多くの場合、本人の決断力は既に失われている。家族は人目も気にして、「とりあえずお願いします」などと言いがちだ。医者や看護師、更には知人たちに冷たいと思われはしないかと、どうしても体面を気にしてしまうところがある。だから、元気なうちから家族には自分の希望を明確に伝えておく必要があるのだ。

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