これだけは知っておきたい、患者に対する医者の義務

 患者と医者。両者にそれぞれ、もう一度、確認しておきます。まず、お医者様に伝えたい。どうか診断結果は書類にして渡してあげてください。まず、患者さんがそのままそこで治療を受けるのであれば、治療方針や見通し、主治医の名前、手術の場合には執刀医の名前、当該手術についての経験や成功率について書いてあげて下さい。

 
病気を抱えて動転している人間が、医師の説明を口頭で聞いてキチンと消化できるはずありません。あとで冷静になってから知り合いの医師に相談したくても、素人があやふやな記憶だけを頼りに説明しても、的確な助言が得られないでしょう?ましてや大きな手術が必要だというのであればなおさらです。大きな決断を要するときこそ、第二・第三の意見を聞きたいと思うのは当然じゃないですか! 

自分や家族がそういう立場になったときのことを考えてみてください。どうも、そういう相手の立場に寄り添うといった姿勢が足らない医師が多いような気がしてなりません。世間的には偉いとされる医師であるならば、なおさらきめ細かな配慮をして欲しいものです。

 
私たちが受ける相談案件のほとんどが医師とのかかわり方の問題です。世間的には医師の過酷な勤務状況について擁護する論調が増えてきた昨今ではありますが、まだまだ不当な不利益を被っている患者さんが多いことを実感します。相談者に共通するのは、いずれも極めて「良い患者さん」であるということです。どうもわが国の医療現場においては、「良い患者さん」ほど医療提供者にいいようにされてしまう危険性を孕んでいるようです。
 
次に患者さんに知っておいて欲しいこと。その上で、医者にきちんと言うべきことは言う姿勢を持って欲しいのです。それは、医師という職務には遵守すべきさまざまな義務があるということ。逆に言えば、これを果たしていない医師に対して、患者側はもっともっと権利を主張して然るべきだということです。

しかしながら、ほとんどの患者さんは医師に対して従順です。複雑な胸の内とは裏腹に、ついつい医師の言葉に頷いてしまう。そんな呪縛から逃れるために、患者に対して医師が果たさねばならない義務について整理します。

 
ちょっと難しい話になりますが、患者と医師の間には、診療契約という契約関係が成り立っています。とくに契約書は交わしていませんが、そんなこととは無関係に『診療契約』という概念が存在するのです。その契約内容ですが、ズバリ、医師が医療を施すことによって患者の健康を回復することです。ただし、医療行為には少なからず身体や生命の危険が生じる可能性も否定できません。また、治療法が複数ある場合も多々あります。
 
そこで患者側には、いかなる治療を受けるべきか、自分自身で決定する権利が認められているわけです。これを自己決定権といいます。しかしながら、通常、患者は医療についての専門知識を持っていません。で、診療に当たる医師には、専門家として、患者の診療状況を説明する義務が課せられているのです。これを説明義務といいます。
 
例えば手術となれば、患者の身体と生命に強い影響を及ぼすので、患者が自己決定権を行使するのに足るだけの十分な説明義務を果たさなければなりません。具体的には、最高裁判所が判示している次の5項目が説明されなければいけません。
 
①手術前の診断について ②手術の内容について ③手術の危険性について ④他の治療法について ⑤予後(手術後の経過)について
 
なお、この5項目は手術という特別な場合に限ったものではなく、すべての治療行為に妥当するものです。みなさんがいま通っている病医院の医師はどうでしょうか?仮にいまの治療について納得がいかぬままにお金と時間を費やしているようであれば、みなさんの主治医は説明義務を果たしていないことになります。みなさんの出方次第では、その医師や病医院の立場は非常にまずいものとなる可能性があります。
 
こうした点も踏まえて、みなさんにはただ「良い患者さん」になるのではなく、彼らの言動をチェックするような感覚で診察室に入っていただきたいと思います。
 


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