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カルテは誰のもの?

質問
76歳の母が新しくできた別のクリニックへ移ろうとしています。以前に何かの講演会で話を聞いて、なかなか面白い人だなぁと思っていたドクターが、週に一回、そのクリニックで診療していることがわかったらしいのです。そこで、それまで二年ほど通っていたクリニックでカルテのコピーをもらいたいと申し出たのですが、「必要ない」と断られてしまったそうです。どうしたものでしょうか?


回答
いまだにこのような対応をする病医院があるかと思うと、呆れてしまってモノが言えません。実は、カルテ入手についての相談は、過去5年、私どもに寄せられる相談案件のトップです。全国至る所で、カルテの写しをもらいたいのに上手く入手できずに苦慮している方々がたくさんいるということです。なので、このケースの詳細をご紹介したいと思います。
 
まず、カルテの写しをいただきたいと伝えた患者に対して先方から返ってきた言葉です。
 『何の目的で使用されるのですか?』
 『当院の治療について、なにか疑問な点でもおありですか?』
 『当院になにかご不満でも?』
 
予想外の質問に、相談者は自分の言い方に失礼でもあったのかと驚き、思わず正直に別のクリニックを受診しようと考えている旨を伝えたのだそうです。
 
すると・・・、
 
『どこの医療機関にかかろうと、それは患者さんの自由です。ただし、カルテをお渡しするには正当な理由が必要です。カルテなど持っていかなくても、普通は診てもらえますよ。 
問題があれば、そちらの先生から私のほうへ連絡するように言ってください』。
 
私は、一気に血圧が上がっちゃいました。最悪の医療機関ですよ、これは! こういうのを一般社会では詐欺というんです。悪徳商法といっしょですね。カルテとはいったい誰のものなのか、このクリニックは勘違いしています。しかも、現在では患者の求めに応じてカルテを開示する義務が法律で定められています。
 
患者がカルテの写しを要望したら、「なにが疑問だ、不満だ」などと四の五の言わず提供しなければならないのです。それを本当に知らないとしたら、この医者は100年遅れています。また、知っていて提供しないのであればペテン師と言われても仕方ないでしょう。

提供しないだけでなく、「そんなものなくたって診てもらえますよ」と論点をズラしてしまう。そりゃあ日本では、患者は全国どこの病医院でも診てもらうことができます。しかし、そこで一から病状を説明する無駄をなくし、効率的かつ効果的に治療を受けるために、前医(それまでかかっていた医者)からカルテの写しをもらっていきましょう、という話なのです。

 
実は、相談者からの依頼でカルテ等を入手してみると、カルテへの記載内容はかなり稚拙です。文字がよめないものから、ほとんど白紙状態のものまでさまざまです。わが国の医師には、どうやら危機管理意識というものがないようです。逆に言うと、彼らは従順で人のいい患者さんたちのお陰で命拾いをしているように、私なんぞは感じてしまいますねぇ。
 
一方で、この相談者にも苦言を呈したい。なんでそんなところに2年間も通院していたのかと。70年以上も人間をやっていて、人を見る目はないのかと。患者側がこうだから、こういう医者が蔓延るということも言えるのです。
  
しかし、カルテ開示などというテーマが取り沙汰されてから、もう何年になるでしょうか。10年は経ってますよねぇ。だから、医者も医者なら患者も患者だと、私はいつも言ってるんです。どちらもいい加減なんです。もちろん、すべての医者、すべての患者がそうだとは言いません。でも、多いことは確かです。

 

 私も自分の母親を見ていて感じるのは、ある程度の高齢になったらやむを得ないのかなぁとも思います。自分がそれぐらいの年齢になったときに、果たして自分の子ども程の年齢の医者相手に折衝ごとができるだろうかと考えると、やはり医者のほうから歩み寄ってあげるべきなんだと思うのです。
 
とにかく、年末からカルテ絡みの相談が多いんです。なぜに自分自身のカルテをもらうだけなのにそんな大騒ぎになるのか。なんで病医院側は簡単に提供してくれないのか。見られてまずいことでもあるのかと疑ってみたくなります。それほどカルテの写しを入手したいのに円滑にいかないという相談が多々あるのです。なんたることでしょうか。
 
医師は患者に対して、どのような治療を施したのかについて客観的な記録を残しておかねばならないと定められています。この義務を怠ると、50万円以下の罰金を科せられることになります。具体的に記載すべき事項は、以下のとおりです。
 
①診療を受けた者の住所・氏名・年齢・性別 ②病名・主要症状 ③治療方法(処方と処置)④診療年月日 ⑤既往症・原因・経過 ⑥保険者番号 ⑦被保険者証の記号・番号・有効期限 ⑧保険者の名称・所在地 ⑨診療点数
 
ただし、これらを機械的に書けばいいというものではありません。カルテとは、客観的な事柄を記録として残しておくための文書です。よって、誰が見ても読み取れるよう、記載者にしかわからないような略語や略字は使用できないことになっています。また、責任所在を明らかにするため、記載者と記載年月日&時刻も記載しなければなりません。もしもカルテの写しを入手する機会があったら、是非ともこれらの項目が判読しやすく記載されているかどうかをチェックしてみてください。
 
他にも医師には、患者から請求された場合、正当な理由がない限り、診断書を作成して交付する義務があります。正当な理由とは、患者以外から請求されて患者のプライバシーが侵害される恐れがある場合、未告知のがん患者の場合、保険金詐欺等に悪用されることを医師が知った場合、などをいいます。

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