私たちが目指す地域医療の姿

私は、医療の原点は、まず患者さんの話をよく聴くことから始まると思っています。
都内の某国立病院に勤務する知り合いの医師に聞いてみたのですが、彼も言っていました。

「確かに、診察のときに10分間ほど患者さんの話に耳を傾ければ、大体病気の診断についての方向性は見当がつく。
ところが、そうした悠長なことをしている余裕がないんだよ」。

結論としては、一人の患者さんの話を3分以上聞いてしまうと、決められた時間内に診療は終らない。
さらに、経営的にもまずい・・・ということのようです。

 
こうした話から私たちが理解すべきことは何でしょうか。
私たちが自分のかかりつけのお医者さんだと思い込んでいる医師は、他にも毎日100人以上の患者さんを診ている。
要するに、あなたにとってはただひとりのかかりつけ医であっても、そのお医者さんからすれば、毎日何十人何百人もやってくる大勢の患者さんのうちのひとりに過ぎないということです。
よほどのことがない限り、あなたの顔と名前すら一致しないというのが現実ではないでしょうか。
(あなたにしてみれば)かかりつけのお医者さんに過度の期待をしてしまうと、いざという時に落胆せざるを得ない顛末が待っている。
どうも、そう考えていた方がいいようです。

もちろん、中には高齢者医療を真剣に考え、往診も積極的にやってくれるありがたいお医者さんもいます。
しかし、残念ながらこれは、そのお医者さんの個人的な誠意や良心に基づくものでしかありません。
本当に患者さん思いのお医者さんで、自分の自宅や携帯電話の番号を患者さんに教えている方もいらっしゃいます。

 
では、患者さんが夜中に急な発作が起きて、緊急手術が必要になった場合、このお医者さんはどうするか?
個人的なツテで大学病院や地域の大病院に連絡をしてくれるかもしれません。
しかし、それで話が済むほど今の救急医療は柔軟ではないはずです。
結局はベッドが空いていて、医者と看護婦が空いていないかぎり、何件でも電話をし続けるしかないのです。
そして、初めから119番しておいた方が早かった…、という経験は診療所の医者であれば誰もが経験していることだそうです。
複数の開業医の方にこの手の話を聞いていると、私の両親も含め、高齢者の方、いえいえ、年齢と関係なく誰であっても夜は怖くて怖くて安心して眠ることすらできないということになってしまいます。
家族が同居していれば、多少はまぁマシか、そんな程度のことでしかないのです。
 
長くなりましたが、このような場面にいくつか遭遇してみて、ますます高齢化する地域社会の医療体制を何とかしなければ、と思ったわけです。
そして幸いにも、同じように何とかしなけりゃいけないと感じているお医者さんたちともめぐりあい、一緒に議論し始めたのが2005年の桜の散る頃でした。
あれから7年半。ようやく私の目指すものが形になってきた…、そう感じている今日この頃です。
 
何かのご縁でこのホームページにお立ち寄りいただいたみなさんには、是非とも私たちの考えてきた内容を知っていただき、お感じになられたことを教えて欲しいと願っています。
世界一の長寿国に生きる私たちにとって、万一の場合の医療確保は、まさしく他人事ではありません。
どうか、もし今、かかりつけのお医者さんがいれば、その医師とあなたの関係をイメージしながら、更には、愛するご家族が夜中に急に苦しみ出した時のことを想定しながら(縁起でもないことを申しまして恐縮ですが、今の医療の現実を知れば知るほど、常日頃から考えておくべきことだと、私は思います)次回以降も読んでみてください。

 


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