東洋医学の基本的な考え方 ~免疫・浄化・ストレス制御~

東洋医学では、その治療法に3つの重要な考え方があります。まず第1に、免疫機能を高めるという効用があることです。免疫の基本的な働きは、細胞の異常を早期に発見して増殖しないうちに排除してくれるというものです。ですから、免疫能力の優れた人は、きわめて健康です。さまざまなウィルスによる感染も抵抗力があれば最小のダメージで防ぐことができるし、万一感染しても回復が早いのです。私たちの日常生活をみても、免疫能力の高い人は風邪を引かないし病気にもなりません。

第2に、体内浄化ということがあります。英語ではDetoxification(デトクシフィケーション)といいます。私たちの体内には、あらゆる毒素が蓄積されています。鉛、水銀、カドミウム、ニッケル、アルミニウムなどの重金属は、脳、腎臓、免疫組織など、身体のいたる組織に蓄積されています。産業汚染された環境が原因のひとつですが、普段使用している調理器具や缶詰食品、歯の詰物などからも体内に摂取されています。さらに、肝臓に負担をかけるさまざまな有毒な化学物質。殺虫剤や除草剤の使用、化学薬品の摂取、食品添加物の摂取などによって体内に取り込まれた化学物質が蓄積されると神経性の異常や頭痛を引き起こします。通常、これらの毒物は肝臓で解毒されるのですが、そのため肝臓の負担が過剰になります。ほかにも、細菌そのものや細菌の産生する毒素、蛋白質代謝後の老廃物など。東洋医学には、これらの毒素の排泄を促すことで個人の健康状態をゼロベースから改善していこうとする発想があるのです。

3に、ストレスマネジメント。ストレスは私たちの健康状態に様々な形で大きな影響を与えます。ネガティブストレスは、精神的な疾病、免疫能の低下、臓器(特に心臓や血管)機能の低下といった障害につながります。しかしストレスがまったくない生活はあり得ないし、適当なストレスは、私たちのやる気を喚起し、健全な競争を促すなど、プラスに作用することもあるわけです。ですから、東洋医学が強みとするストレスを上手にマネジメントするということが非常に大切になってくるわけです。

このような東洋医学に特有の治療アプローチについて患者さんが理解したとしたら、仮にがんの摘出手術を受けたとしても、術後の治療に東洋医学を選択する人が増えるのも当然のことだと思います。でも、日本の医療現場では、抗がん剤や放射線療法を受けると健康な細胞までが痛めつけられ免疫力が極端に低下するとともに、なおさらがん細胞の成長が加速してしまうという真実について、必ずしもオープンにされていないのだなと思います。そんな気がしています。私のもとを尋ねて来られる患者さんたちのお話を聞くにつけ、胸が痛む思いがするのです。

日本でも江戸時代までは漢方が医療の主流でした。しかし明治維新以降、伝統的な医学は姿を消しました。現在でも、医学教育のカリキュラムにおける栄養学や薬草学の比重は極めて低いし、何と言っても臨床とかけ離れていて実際的ではありません。よって日本の医師には東洋医学に対する知識がなく、否定的な意見が圧倒的に多いということになります。すでに欧米ではたくさんの臨床研究データがあり、その有効性が証明されているにもかかわらず、です。

何事においても日本は米国の10年遅れと言われています。であるならば、もうそろそろ東洋医学をも含めた統合医療の重要性に気づいて、国家として米国の戦略を見習ってもいい頃ではないでしょうか。


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