感動する医者の話22
さて、先述の外科医と一杯やりながらこんな話を聞きました。私が、「俗に“外科医の切りたがり”というが、本当に手術はがんに有効だと思っているのか」と質問したときのことです。彼の答えは、執刀する外科医にも真実はわからないというのが本音とのことでした。
例えば、転移のあるがんの手術をして患者さんが1年後に亡くなったとします。患者さんの家族は、「手術しなければ半年しかもたなかっただろうけれど、手術が成功したおかげで1年も生きられた」と言うでしょう。どうしてそんなことが言えるのかといえば、「お医師さんがそうおっしゃったから。できるだけのことをしていただいたから」と…。これが典型的な関係者たちの心模様ではないでしょうか。
このあたりのことで悩んでいる外科医は少なくないようです。「この患者のがんは末期がんで、手術しなければ半年余りの命だ。しかし少なくとも数ヶ月は普通の生活ができるだろう。手術をすれば1年は生きられる。しかしQOLは低下し、再発すれば患者の苦痛は大きくなる。ベッドを離れての生活は困難になるだろう」といった葛藤がままあるそうです。
でも、がんであることを告げておいて手術をしないと言えば、「手術ができないほど悪いのか」と患者や家族が絶望しかねない。そこで結局、外科医は患者の身体にメスを入れる道を選択するわけです。彼自身も、こうした葛藤が日常茶飯事だと言っていました。
この原因のひとつは、おそらく一般人(患者さんやご家族)の意識のなかに、“がん=手術”という図式が強く染みついているからではないでしょうか。だとすれば、この思い込みを打ち破る必要があると私は思うのです。そして、この問題を考える際に、絶対に忘れてはならない真実があります。
ひとつは、「(医師が言う)手術をしなければ半年で死ぬ」という科学的根拠はどこにもないということ。もうひとつが、実際に摘出手術を受け、抗がん剤や放射線治療を受けた患者さん当人の苦しみは誰にもわからないということです。一体全体、誰がためのがん手術なのでしょうか…。
世界に目を向ければ、人体にメスを入れることなくがんを治療する東洋医学的治療という選択肢が定着しつつあります。欧米では東洋医学によるがん治療に対しても保険が適用されるなど、西洋医学を偏重することなく、患者さんにとって本当に望ましい医療を提供しようとする国家としての戦略があります。
わが国においても、いいかげんに対症療法的な予算編成はやめて、本当の意味で国民にメリットのあるがん対策を講じてもらいたいものです。
(完)
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