感動する医者の話18

子宮体部がんの罹患率は、年齢別に見てみると40~50歳代で増え始め、60歳代でピークを迎えますが、年齢層を問わず、増加傾向にあります。とくに閉経後の女性に多くみられますが、発見自体が遅くなることが多く、完全治癒率は比較的低いタイプのがんです。子宮体部がんは、頸部がんに比べて自覚症状が現れにくいため、診断が遅れる傾向があります。そのためにも定期的検診が必要なのですが、Ⅰ期までに治療できれば、比較的治りやすいといわれているがんの部類に入ります。
 
 「わかりましたよ。決して責めてるいのではないですからね。あなたはちっとも悪くないんですよ。泣くことなんかないんですからね。」
 わたしは軽く彼女の方を叩きながら、自分にできる限りのことはするつもりであること、さらには、わたしの治療を受けるのであれば、まずはじめに、わたしの治療法について十分に理解してもらう必要があることを伝えたのでした。
 
彼女が落ち着いてから話を聞くと、わたしの盟友である新潟大の安保教授の本でわたしのことを知ったということがわかりました。その本でも書かれていることだと思いますが、わたしはまず、がんのメカニズムについて説明することにしました。
「ちょっと難しくなるかもしれませんが、まず最初に、がんという病気がどのようなメカニズムで発生するのかということをお話しておきますからねぇ。大切なところなので我慢して聞いてくださいよぉ。」
 
がんとは、異常な遺伝子が際限なく増殖してしまい、過剰に発生した細胞が腫瘍を生み出す病気です。人間には、あるレベルまでは細胞を制御する機能が備わっているから問題ないのですが、その能力を上回るほどの激しい細胞分裂が起きるとコントロールできなくなってしまうのです。この過激な細胞分裂の一因としてフリーラジカルと呼ばれる異常分子があります。フリーラジカルとは、「自由自在に動き回る攻撃分子」という意味で、体内の分子が何らかの刺激を受けて一部分が壊れると、それを補おうとして周辺の正常な分子まで攻撃してしまうのです。このフリーラジカルの攻撃が他の分子に次々と連鎖し、遺伝子まで傷つけてしまうとがんが発生するということになります。
 
「フリー??? ラジカル???」
彼女は必死にメモを取っています。
 
もっとも代表的なのが、酸素分子がラジカル化した活性酸素です。また、脂肪もフリーラジカルになりやすく、体内に大量に存在するため連鎖反応が起きやすいという特徴があります。他にも、フリーラジカルを発生させる刺激物として、紫外線、放射線、X線、さまざまな化学物質や排気ガスなどが挙げられます。こうした原因によって異常な遺伝子が異常に増殖することで、腫瘍というものが出来上がります。そして、ならばその腫瘍を摘出しようじゃないかというのが西洋医学の基本的な考え方なわけです。
 
でも、がんが発生する原因をよぉく考えてみると、そもそもの元凶は私たちの日常生活のなかにあることがおわかりいただけると思います。と言うことは、表面化した腫瘍だけを削ぎ落としたとしても、根本的な私たちの生活を改めなければ、やがてまたがんが復活してしまうのではないかと考えるのが普通ではないでしょうか。ある意味では、だからこそがんの手術が成功したはずの人たちが、術後しばらくするとバタバタと死んでいく。その繰り返しなのだと思います。つまり、悪い病気は「モトから断たなきゃダメ!」ということなのです。
 
1996年には、がんの発症については白血球の自律神経支配が関わっていることが新潟大学大学院の教授である安保徹氏によって発表されました。安保氏は、「がんになる人は人生に無理がたたっていて、そのストレスががん発症のひきがねになる。無理な生き方をしていると、交感神経の緊張が長く続き、活性酸素によって組織が破壊されやすくなるからだ」という安保理論をまとめて旧態依然としていた医学会に衝撃を与えたのです。
 

わたしも安保理論についてはまったくの同意見です。これまでのように、原因不明だからといって「とにかくがんを取ってしまおう」といった対症療法をするのではなく、生き方を見直すことこそが何よりのがんの治療法なのです。いいかげんに、身体を痛めつける治療からは脱却しなければいけない時期にきていると思っています。

(続)


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