前回から、某企業の新入社員に対して行った講演の内容をご紹介しています。
学生と社会人のちがいにフォーカスしながら、『もう許されない学生時代の3つの習慣』について話しています。
今回のテーマは、『人間関係 ~組織人はひとりでは何もできない~』。
学生時代は、大学・学部・専攻・サークルのどれをとっても大体似たような人たちが周りに集っていました。 たまに波長が合わない人がいれば無視してもいいし、無理してつきあう必要はありませんでした。
しかし社会人となったら違います。ビジネスの現場には多種多様の人がいます。人種のるつぼです。出身・年齢や価値観も千差万別。最近では国籍も多種多様になってきました。今後、この傾向はますます強まっていきます。流行の言葉ではダイバーシティと言います。上司や先輩とウマがあわないからといって、つきあわないわけにはいきません。
とくに日本の会社は集団主義。よほどのことがない限り、例えどんなに有能な人であっても、いかなる仕事であっても、周囲の協力なしにやり遂げることは不可能です。会社組織というのはそんな体制・システムになっているものです。
前回お話したように、みなさんが信頼される言動を積み重ねていったとしましょう。そしてその結果、何かの仕事を任せられたとします。せっかくのチャンスをもらったそのときに、上司や先輩や同僚、さらには他部門のサポートが得られなかったら困りますよねぇ。
みなさんが困るだけでなく、会社としての組織力を発揮できなければ、結果的にお客様に迷惑をかけてしまう。いや、それどころかビジネス機会そのものを逸してしまうかもしれません。つまり、みなさんのみならず、会社の損失となるわけです。
みなさんも私もきっと大好きな福澤諭吉(1万円札の顔だから)。
彼はかつて、英語のSocietyを「人間交際」(じんかんこうさい)と翻訳しました。また、明治時代の辞書にも、社会とは「個々人のつきあい」と表現されています。社会人である私たちは、人間関係を築き、継続して深めていくことの大切さを絶えず意識していたいものです。
さて、ザキヤマさん(架空の新入社員)です。
上司から与えられた課題と悪戦苦闘していると、ひとりの先輩がやってきました。
「おっ、ザキヤマさん、がんばってるね」
「・・・」
「ザキヤマさん、何か問題はないかい?」
「・・・」
「遠慮しないで、わからないこととかあったら言ってくれていいよ」
ここでついにザキヤマさんが口を開きます。
「あっ、特に。ちょっと今テンパってるんで」。
これ、非常によくあるパターンです。
作業に没頭するザキヤマさんが咄嗟に口走ってしまった言葉です。あちらにも決して悪気はないのだけれど、こちらが何かに集中しているときに限って話しかけてくる。そんな間が悪い先輩とか、結構いるものです。
でも、そんなときこそ重要です。先輩の方から何か気にかけてくれたときに、例えその時点では特に困ったことがなかったとしても、タイミング悪いなぁと思ったとしても、感謝の気持ちを表現する必要があります。そこで返す言葉は後々の人間関係の浮沈を握っています。でないと、みなさんが本当に相談に乗ってほしいときに受けとめてもらえなくなる危険性を孕んでいます。
教訓です。真実が常に正義とは限らない。
仮に申し出を断る場合にでも、いかに「なかなか可愛い後輩だな」と思われるような返事を返せるかどうか。
ザキヤマさん曰く、予めいくつかのパターンを用意しておいてもいいくらいだ・・・ということです。
(続く)