病院のルーツはホスピタリティ


話を医療機関に戻そう。“止まらない医療ミス”は、衝撃というよりも恐怖である。病院のことを英語でホスピタル(hospital)とかホスピス(hospice)という。本来、ホスピタルやホスピスはホスピタリティとルーツは同じである。治療に訪れる患者を優しく治癒することが目的であり、病院というところは、患者や外来者に対して親切に厚遇すべき場所の筈である。ところが、昨今の大学病院や公的病院で発生する注射ミスや手術ミスなどは、信じられないニュースとしか言いようがない。


そもそも大病院に患者が集中する理由は、一般の開業医よりも、医師の知識や経験、カバーし得る領域、検査機器等の設備など、あらゆる点で自分の病気を正しく診てもらえる確率が高い、そんな患者の信頼の表われである。それなのに、そうした大病院に限って医療ミスが続発しているのだ。「人間のやることだから」では済まされない人為的ミスであり、まさに人災という以外に言葉が見つからない。こうした事件が発覚するたびに、当該病院の医師たちは記者会見をして陳謝している。

しかし、病院で働く医師、看護師、その他の職員たちは、果たして自分たちがホスピタリティ・ビジネスに従事しているということをどの程度自覚しているだろうか。病院では、患者は問診票を書かされ、さまざまな質問をぶつけられる。医師や看護師の前で裸にされたり、寝かされたり、彼らの思うように奴隷のごとく服従を迫られる。そして、十分な説明もないままに注射され痛い目に遭わされる。入院患者の場合はもっとひどい。見舞い客の訪問時間も制限され、完全看護ならぬ囚人扱いである。そこにはプライバシーもなく、食欲のわかない最低限度の食事しかあてがわれない。まるでトイレと最低限の食物を与えられた拘置所の囚人と何ら変わらないではないか。医師や看護師たちは、ホスピタリティという言葉を知っているのだろうか。


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