患者に選ばれる医療機関になるために


以上の話からわかるのは、患者に感動を与えるのは医療の本質である診立てや治療の技量ではなく、医師やスタッフの対応や彼らが作り出す場のムードだということ。私なりに分析するならば、医師の腕前(医療技術)はそもそも一般人には評価ができない。はっきり言ってしまえばわからないのだ。また、建物自体や診察室・検査室・待合スペース等といった施設面や検査機器等の充実ぶり(ハードウェア)に対しては、患者はひとたび慣れてしまえばそれが当然となってしまい感動には値しなくなるものだ。

しかし、人間系のサービスはちがう。一度、気の利いた言葉や思いやりある言葉をかけてもらった患者の心には、その瞬間の一部始終がインプットされ、記憶として定着するのである。特に、人間、自分が弱い不安な状況にあるときに誰かに温かく接してもらう程感激することはない。

しかも、多くの医療機関がサービス向上を謳いながらも現場に浸透していない実態からすると、この人間系のサービスを改善することは、極めて即効性のある差別化施策になるはずではないか。極論すれば、貴院が地域になくてはならない医療機関として定着するための切り札は、医師も含めたスタッフひとり一人の心配りある言動ということになる。


幸いにして、一般のひとたちは医療機関に対して、ホテル業界やディズニーランドに求めるような高品質な接遇を期待していない。というか、なかば諦めている。この事前期待が低いからこそ、彼らに感動や感激をもたらすことは比較的容易なのである。これを利用しない手はないではないか。(続く)


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