認知症患者の口座名義の書き換え(生前贈与)

【概略】

前川吾郎さん(仮名:55歳)は、母親の菊枝さん(78歳)と二人暮らし。昨秋、吾郎さんの携帯に菊枝さんから連絡が入りました。家に空き巣が入ったようで、通帳・印鑑・カードすべてが持ち去られているというのです。仕事を切り上げた吾郎さんが戻ってみると、家中のものがひっくり返されて散乱していました。菊枝さんがなくなったと言っていたのは、4つの金融期間の通帳(定期・普通それぞれ4冊)とキャッシュカード、それに印鑑。それ以外にも、家屋と土地の権利書、生命保険の証書です。

菊枝さんの話を改めて聞いた上で探索した結果、ほとんどのものがキッチンの食器棚の引き出しから出てきました。しかし、通帳のうち半分とキャッシュカード2枚が見つかりません。権利書は吾郎さんの父親が亡くなった際に吾郎さん名義に変更しており、書類も吾郎さんが管理をしていましたので、その旨を菊枝さんに伝えました。「ええっ?そうだったっけぇ?」という菊枝さんの反応を、そのときは吾郎さんも気に留めませんでした。それよりも、見つからない通帳について金融機関に紛失届と口座の停止をしてもらうことに意識が向いていたからです。

翌日会社を休んだ吾郎さんは、菊枝さんを連れて銀行回りをしました。預金者本人である菊枝さんが居るわけですから、さして面倒なことはありませんでした。と、行員の方とお話をする中で、菊枝さんが「もう歳だし、また紛失したりするといけないから、これを機に、全部吾郎が管理してくれたらたすかるんだけどねぇ」と言ったのです。すると行員も、「ああ、それでしたら安心ですよねぇ」という流れになり、家に戻ってから吾郎さんは菊枝さんの意思を確認し、すべての預金を吾郎さん名義に変更しようという方針が決まったのでした。


まずは定期預金。4つの金融機関を併せて3千万円。これを菊枝さん名義から吾郎さん名義に変えるには、いくつかのステップを踏まなければなりません。まず、菊枝さんが定期預金の解約をする。相当金額を菊枝さん名義の普通口座に入金する。吾郎さんは、毎年110万円ずつ、菊枝さんの普通口座から吾郎さん名義の普通口座に振り替える。

要するに、この行為は生前贈与に当たり、年間110万円を超えてしまうと贈与税が発生してしまうわけです。そんな無駄なお金は使いたくないというお二人の意向に基づき、こうなったわけです。普通口座ですが、こちらは吾郎さんが菊枝さんのキャッシュカードを使って振り替えればいいだけの話ですが、厳密に言うと、親子間であまり頻繁に振り替えが発生するのは望ましくありません。税務署は、明確な調査の意思さえあれば、特定個人の金融機関の取引履歴にアクセスができるからです。

3千万円程度の金額であれば目立ちはしませんが、将来的に何かのきっかけで調査が入った場合には民法に抵触することになるからです。ちなみに、税務署が調査に入るきっかけとしては、知人友人やご近所のチクリが結構あるそうです。親の預金が入ったからといって急に羽振りがよくなったり、安易に他言したりすると、やっかみ半分で税務署に密告する輩がいるということです。なんかいやな話ですよねぇ。


【対策】
本題に戻すと、親子の合意さえあれば、被相続人が元気なうちから相続人に少しずつ預金をシフトしていくのが得策です。吾郎さんは一人っ子だったためもっとも円滑にいくケースでしたが、仮に子供が複数いたとしても、被相続人が若いうちのほうが子供たちも近隣で生活している可能性が高いので、いずれ遺産相続されるまで待つ必要もないのではありませんか?

もしも預金総額が多くて年間110万円ずつ口座振替するのが面倒だということであれば、ドーンと現金で引き出しちゃう。特に定期の解約は理由を聞かれますから、『老人ホームに入ることになりまして』というのがポピュラーでしょうか。で、現金で未来の相続人である子供たちに渡しちゃう。子供たちは、それを何回かに分けて、臨時収入があったことにして普通口座に順次預金してもいいし、定期預金を組んだり、保険商品に入ったりするも良し。


【ポイント】
吾郎さんに災難が降りかかるのは、菊枝さんの預金を順次振り替え始めて3ヶ月ほど経過したころでした。菊枝さんから頻繁に携帯に連絡が入るようになり、「家に泥棒が入った」「通帳と印鑑を落とした」「私の通帳とかが入ったバッグを知らないか」「あなた、まさか、私の通帳を勝手に持っていったんじゃないでしょうねぇ」ってな具合になったのです。仕事の合間に医療機関の『物忘れ外来』を受診した結果、菊枝さんが認知症であることが明らかになりました。吾郎さんは今でも、菊枝さんからの携帯連呼、夜中の問いただしに悩まされていますが、そんなことはさしたる問題ではありません。これは吾郎さんにとって非常にラッキーだったのです。

つまり、こういうことです。仮に菊枝さんの認知症確定診断の後に金融機関を回っていたとしたら、そう簡単に菊枝さんの預金を解約したり引き出したりはできなかったからです。逆に言えば、行員の前で「母が認知症でお金の管理ができないので」などと余計なことを口走らないことです。まとまった金額を解約したり引き出したりするには、どうしても預金口座名義人である母親との同伴は必須です。状態のいい頃合を見計らって金融機関に出向くことです。


認知症という病気は、物事の判断や意思決定能力ができないと見なされます。よって、認知症の方の預金口座の扱いには、家庭裁判所にて成年後見人を選任してもらい、この成年後見人などの代理(同意)の元で諸々の手続を進めなければなりません。成年後見人の選任手続には数ヶ月の期間がかかる上、基本的に10万円以上の費用も発生します。非常に厄介です。


老老相続が増えてくる世の中においては、相続人が認知症というケースも増えてきます。中には相続人の署名や押印を偽造して遺産分割協議書を作成しようとする人もいますが、これは明らかに犯罪行為。認知症の相続人がいる場合には、成年後見制度の利用は必須となります。

オバマ大統領の勝利演説

4年前の米国の大統領選挙。オバマ氏の勝利演説。さて、今年の秋は、誰のどのような名スピーチが聴けるのだろうか。

2008年11月4日夜。オバマ大統領の勝利演説のクライマックス。彼は突然、アン・ニクソン・クーパーなる女性について語り始めた。
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今回の選挙戦ではさまざまなことがあったが、私が何よりも思い出すのは、アトランタで投票したひとりの女性の物語だ。彼女は他の何百万という人たちと同様に自分の声を反映させようと行列に並んだ。ただひとつだけ、他の人たちと違うことがあった。彼女は106歳なのだ。奴隷制が終わってから一世代後に彼女は生まれた。飛行機はもちろん、まだ車さえ走っていなかった時代。その時代、彼女のような人は二つの理由で投票できなかった。女性だから。そして肌の色ゆえに。

彼女がアメリカで生きた100年以上の歳月に思いを馳せるとき、多くの悲しみや困難の中でもひたむきに前進し続けた人たちに胸を打たれる。そして今年、彼女は自らの指でスクリーンに触れ投票したのだ。なぜなら、106年間もの人生を、暗い時代も、幸せな時代もこのアメリカで生きてきた彼女は知っているから。このアメリカという国がどれほど変われる国なのかを。

 Yes , we can. 

アメリカよ。私たちはこんなに遠くまで歩んできました。こんなにもたくさんのことを見てきました。しかし、まだまだやらねばならないことはたくさんあります。だから、今夜この夜、私たちは私たち自身に問いかけましょう。もしも私たちの子どもが次の世紀を目にするまで生きられたとしたら。もしも私たちの娘が、幸運にも彼女と同じくらい長く生きられたとしたら。娘たちは一体何を見るのでしょう。それまでに私たちは、どれくらい進歩できるでしょうか。この問いかけに答えるチャンスを、いま私たちは手にしたのです。

  Yes , we can. 

今この時こそが、私たちが新しい一歩を踏み出す瞬間なのです。

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 オバマ大統領は、アン・ニクソン・クーパーの人生に触れることで、100年前の過去と現在、そして100年後の未来をひとつに繋げてみせた。この夜シカゴに集まった20万人の人たちは、会ったこともないアン・ニクソン・クーパーのイメージを共有することで、行動に向けて結束した。20万人がそれぞれの心の中で、自分たちが生きていく未来を想像し、希望を持ったのだ。共感と発見と勇気を喚起する見事な演説。私にとってのお手本です。

モチベーションを高めるための脳科学的アプローチ


モチベーションとは私たちの内側から出てくる動機付け。これに対して外側から動機付けるものは「インセンティブ」という。
で、ひとつの結論。そもそも、根っからモチベーションの高い人などいやしない。つまり、モチベーションとは、人が生まれつき持っているようなものではなく、習慣やトレーニングによって身につけていくもの。

モチベーションアップのためには、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)という脳内ホルモンを分泌させればいい。ザッツ・オールだ。すでに脳科学の分野で実証済み。俗にヤル気ホルモンと称されるTRHは、ドーパミンやノルアドレナリンを放出させるトリガーとなって脳を覚醒・活動させる。

もう少し噛み砕いてお話する。イメージしてみて。私たちの頭蓋骨のなかは、人類の進化の順番に、内側から爬虫類脳・哺乳類脳・人間脳が重なるようにできている。それぞれ役割がある。爬虫類脳(脳幹・視床下部)は「生きるための脳」と言われ、心拍・呼吸・体温・血圧などの生命維持機能を担っている。哺乳類脳(大脳辺縁系)は「感じるための脳」と言われ、本能的な情動・行動を管轄しており、快・不快の判断などを行う。人間脳(大脳皮質)は「考えるための脳」であり、知性・知能を司っている。

重要なのは、私たちがモチベーションを持って何かに取り組むためには、これら3つの脳が緊密に連携する必要があるということ。人間脳が「この問題を処理せよ」と哺乳類脳に命令すると、哺乳類脳はそれを本能(扁桃核)と過去の記憶(海馬)から「好きか嫌いか判断する」。

ここで「好き」と結論づけられると、爬虫類脳(側坐核(通称、「欲の脳」))からヤル気ホルモンが放出される。これは全脳を覚醒させ、とくに行動計画を立案・実行させる前頭連合野を刺激。その結果、人間脳の内部では火花が散るようにニューロンが活性化し、想像と連想が絶え間なく広がっていく。

しかし、リストラの噂やいじめなどで爬虫類脳が危険を察知したり、自由に意見を言えない、適正に評価されないなどで哺乳類脳が不快を感じたりすれば、人間は自ずと逃避や保身に走ってしまうわけ。これでは何事も前向きに取り組めないのは当然。


これを理解すれば、私たちのモチベーションを高めることは簡単だ。「好き」なことをすればいいのだ。一般的に私たちが好きなこととは、次の3つである。①褒められること②必要とされること③愛されること。チャンチャン、だ。

やる気になっているときというのは、他人のために一生懸命になっているとき。「自分のために」と思うと「これやるのは、また今度でいいか」と気が緩んでしまいがち。けれど他人のために何かをしているときには「やらなきゃ!」という気分になっているため、自然と体が動きはじめる。

私たちのモチベーションを上げるきっかけとなるようなものを、心理学では「ストローク」という。スキンシップ、表情・態度・仕草、言葉がある。モチベーションを上げるためには、時に自分自身に対して、時に周囲の人たちに対して積極的にストロークを投げたいものだ。

真犯人は誰だっ

★これほど多くのヒトを不健康で肥満にしたのは誰か。 

★巨大な30兆円産業『加工食品業界』。 彼らがビジネスを最大化するために何をしているか。私たちは知っておかねばならない。
 

まず、日本経済において、市場規模30兆円を占める加工食品産業と、同じく30兆円の医療産業について理解しなければ、私たちは自己の健康をコントロールすることは難しいだろう。


現代社会においては、肥満でない人であっても、大概は不健康である。ただ、多くの人はそのこと
に気づいていない。従来の西洋医学においては、頭痛、胃の不調、身体の痛み、疲れ、関節炎等をはじめとする、ありふれた多くの疾患を、老化現象だからあきらめなさい(うまくごまかしながら付き合いなさい)と言うが、これらの疾患は、過体重や肥満と同様、ひどい食生活からくる必然的結果なのである。

つまり、自分の身体の危機的状況に気づいた時点から食生活を改善することで、症状が緩和され
たり、病気の進行を鈍化させたり、場合によっては、食い止めることさえも可能であるにもかかわらず、これまで多くの医療機関は、私たちがあるべき食生活に近づこうとする「気づき」をキチンと知らせてこなかったのではないか・・・ということなのだ。

こうした事態を招いた一番の原因は経済にある。強大な30兆円産業である加工食品産業は、考え
うる限り最悪の食べ物を次々と私たちに食べさせようとして、あらゆる手を打ってくるのだから。

私が直接聞いた介護現場のセクハラ被害

やるせない話だが・・・。
ある会合で知り合った介護職の女性たちから、とっても残念な話を聞かされた・・・。

仕事がなくてやむなくホームヘルパーの資格を取って介護現場にデビューする。賃金は全業界平均の6割。ほとんどが非常勤採用で移動費や交通費も出ない。事業計画上にも職員の昇給なんて記載されてない。それでも、不運にも弱い状況にある要介護者たちを元気づけようと、健気に笑顔でがんばっている介護現場の職員たち。しかしそこに待ち受けているのはつらく哀しい現実だ。

私自身も病院勤務時代に、介護事業部の職員から直接相談を受けたことがある。具体的に書いてみる。
まずはちょっと読んでみてほしい。

●医療法人が運営する賃貸住宅の居室にて。訪問介護に出向いた30代のホームヘルパーが、脳梗塞の後遺症で療養中の男性(70半ば)からセクハラを受けた。布団から腕を伸ばし「上体を起こしたいから手を貸して」と言われ、手を握って引っ張ろうとしたら逆に強い力で引き寄せられ、要介護者の体の上に抱きかかえられた。そのまま抱きしめられ、下半身を撫で回されたり、頬や耳やうなじにキスをされたりした。突き放そうとしたが相手の力は想像以上に強く、足も絡められて身動きが取れなかった。その間、30秒くらいだろうか。大声を出したらやっと離れた。「何するんですか。いいがげんにしてください」とにらむと、「ははは。いや、冗談冗談」と言いながらいやらしい視線で舐めるように見つめられた。 → 報告を受け、家族に連絡。次に同様のことが起きた場合には退去いただく旨、通達した。

●同賃貸住宅にて。栄養指導に部屋を訪れた20代半ばの管理栄養士が、右半身麻痺のある要介護3の男性(60代後半)から。話している最中に「トイレに行きたい。手を貸して」と言われ、パジャマのズボンを下ろすよう求められた。「パンツも」と言われ仕方なく下ろした途端、頭を押さえつけられて顔に性器を押し付けられた。当該職員は悲鳴を上げて廊下に飛び出し、近くにいた男性ヘルパーに泣きながら助けを求めた。 → 報告を受け事実確認に出向くと、「意識が朦朧としていて覚えていない。もし本当にそんなことがあったのなら申し訳ない。本人に直接謝りたい」と申入れがあったが、当該職員は二度と対応させなかった。以降の介助はすべて男性に担当させた。
●軽度の認知症と診断された要介護2の男性(70代後半)。通院中に掃除に入った男性ヘルパーが『サービス価格表』なる画用紙を布団の下から発見。そこには『手を握る:100円、胸を触る:500円、胸をじかに触る:1,500円、ほっぺにキス:1,000円、接吻:2,000円、あそこを握る(15秒):2,500円・・・』などと記載されており、居室を訪れた看護師や介護職員にこれらを要請した可能性がある。職員に個別確認した結果、40代前半の介護士より証言が得られた。当該男性は、「君たちも薄給で大変なんだろう。ちょっとこんなの作ってみたんだけど、どれか選んでほしいなぁ」などと言ってきたという。介護士が「みんなゼロがひとつ足りないわよ」と言うと、「そうか。わかった。いくらでもやる。いいことしよう」と目を輝かせた。それを見て君が悪くなった介護士は、以降その男性とは言葉を交わさなくなった。また、職員間のブラックリストにも載せて共有した。
●通所施設の昼食後の航空ケアでのこと。奥歯に何かが挟まっていると訴えた要介護3の男性(60代後半)。口を覗き込もうとした介護実習生(20歳前後)の右手を握ると、人差し指と中指を口にこじ入れ強く吸い続けた。異変に気づいたベテランヘルパーが助けたとき、実習生はガクガクと震えていたという。中指には内出血も認められた。それほどの強い吸引力だったのだ。残念ながら、当該実習生は翌日から来なくなった。

若い女性のホームヘルパーや介護士を中心に、要介護者のセクハラに悩む人たちが後を絶たない。中には、「多少のセクハラに耐えられないようなら、はなから介護職になんて就くんじゃない」などという介護事業者のトップさえいる。被害に遭った女性職員たちには共通項がある。それは、「要介護者たちのつらい心情の表れだから、多少のことは我慢しよう」「自分のほうに隙があったのかもしれない」など、何とかして自己完結しようとSOSの声を上げない傾向だ。

また、介護事業者側にも、「何があっても職員を守るんだ」という会社としてのスタンスが明確に感じられないのも介護業界の特徴だ。「何があっても要介護者には手を上げないように」などとルールを明文化していることもままある。自分の身に危険が迫っているときに、そんな悠長なことは言っていられないではないか。

実は、二次被害というのも多い。被害者が勇気を振り絞ってセクハラ被害を訴えても、逆に被害者の落ち度をあら捜しする先輩職員や同僚たち。被害者は仲間に裏切られたような沈うつな思いで介護の世界から身を引いていくのだ。財務体質が脆弱な業界ゆえ、セクハラやクレームに組織的に対応できるだけのインフラが整っていないのである。

まともな給料もなく有給もない。おまけに性的ないやがらせをされても誰も守ってはくれない。これでは介護市場の慢性的マンバワー不足も致し方ない。一方で味をしめた要介護者たちは、今日も全国の介護現場で束の間のパラダイスを堪能しているかも・・・?
例え加害者が要介護であろうがなんだろが、「体を触られる」等の被害を受けた心身のダメージという結果がすべて。介護職員も介護事業者も、もっと毅然とした姿勢を貫いてもいいように思うのだが。

ちなみに、東京都の訪問介護契約書のガイドラインには、『著しくサービスを継続し難い背任行為があった場合、事業者はサービスを終了することができる』という一文があり、これを適用してサービス提供を終了させている事業者もある。しかし、実際的には収益が滞ってしまうサービス提供終了は最終手段として、組織としての対策をきちんと設けることだ。

っちゅうか、さっさと同性の介護職員に交代させろよ!

経済的不遇のウラにある社会的認知度の低さ


 いくら福祉に情熱を持っていても、自分自身の実入りがこんなものでは、一定品質以上のサービスを維持することは困難であろう。バーンアウト症候群なる言葉が頭を横切る。実際問題としてお金は重要だ。これでは、優秀な若い世代の人たちが、一旦は福祉の世界を目指したとしても、先輩諸氏たちの実態を知れば、進むべき選択肢から外されてしまうのは当然である。

 また、経済的な問題と同様に深刻なのが、社会福祉士に対する世間の認知度であろう。あれだけの難関を突破して社会福祉士となったからには、ある程度華やかな活躍の場が用意されていなければ堪らないと思う。別に他人から賞賛されたいとは思わないが、蔑視されるのは許せない。

 「うちの息子はドクターになりまして」と知り合いが語れば、周囲は「それは凄い。優秀なお子さんを持ってお幸せですなぁ」となり、「うちの娘は社会福祉士になったんてすよぉ」と言っても、「はっ?なんとか福祉?普通の企業には入れなかったのかしら」となる。こんなひどい話が現実にあるのだ。

 かたや受けさえすれば誰でも合格る医師。一方、僅か3割の優れ者しか辿り着けないのが社会福祉士だ。お金が先かステータスが先かは、意見の分かれるところかも知れない。しかしながら、個人的見解としては、経済的成功なしに社会的認知度をアップするのは困難だ。

遺産分割に係る一般的なトラブル

【概略】
山岸智恵子さん(仮名:90歳)には、ふたりの娘さん(65歳、61歳。いずれも未婚)がいました。昨春に千恵子さんが亡くなられ、相続が発生しました。病床につくまで非常に活動的で心身ともに健康であった智恵子さんは、遺言作成はおろか、遺産分割の検討も全くしていませんでした。

ただ、長女のAさんはNPOの会員でもあり、智恵子さんとおふたりで顔を出される機会も多く、「何かあったら後はすべてAに任せる。Bは四国へ行ったきり音沙汰もないから」と口にされていたのを私どものスタッフが記憶していました。そこで私がAさんの相談に関わることになりました。まずは、現状認識をしてもらう必要があるのでおおまかな財産評価と相続税額の計算をし、Aさんの希望によりBさん(相続人はお二人のみ)にこれを伝えました。お住まいはあまり都市化されていない地域で、好立地とも言えないため路線価は低かったので、相続総額は2千万円ほどになりました。うち預金等の現金は200万円程度しかありません。

Aさんの考えにも配慮した上で、Bさんへの報告のなかには、「家屋と土地の一切はAさんが相続し、本家を維持するためのコストを鑑み、預金は折半する方向で考えたい」と記載しました。が、しばらくするとAさんに対し、Bさんから、『私には現金で1,000万円を支払って欲しい』と通知が届いたのです。相続人はAさんBさんのおふたりだけでしたから、法に定められた相続分を請求して来た訳です。


このケースの問題点を考えると、Bさんには2千万円という結論しか見えておらず、単純に(2千万円×1/2)という計算をした、ということです。魅力的な立地でない上に不動産市場も芳しくない時期であることを考えれば、売ろうにも売れないというのが実情です。明らかにBさんは現実が見えていませんが、実は相続人とはこういうものかも知れません。それでは、なぜBさんには現実が見えなかったのでしょうか?

簡単に言うと、Bさんには何の予備知識もなく、いきなり2千万円(あくまでも評価額)を見てしまったのです。私どもの会員の中にも、『相続財産の価額を子供たちに教えると、子供たちが当てにしてしまうから』という方がいるのですが、これは違うと思います。親が遺産分割案(想定している相続の配分)をきちんと子供たちに伝えていれば、財産価額を教えても問題にはなりません。子供たちは分割案に書いてある自分がもらえる分までしか当てにしないはずです。

逆に、分割案がないとすれば、民法で決められた相続分を当てにしても不思議ではありません。これでは、子供たちの争いの種を作るようなものです。また、分割内容についても、特定の子供がもらえる財産が極端に少ないなどということがなければ、あるいは、親の遺志を理解することができれば、多少財産が少なくても納得するものだと思うのですがいかがでしょうか。


【対策】
遺産分割の話し合いがまとまらない。つまり、いわゆる「相続争い」や「遺産争い」には、だいたい下記のような原因が存在しています。
■遺産の内容を自分に教えてもらえない
■遺産の内容について、相続人同士の認識が食い違っている
■遺産分割の割合に納得いかない
■自分の欲しい財産がもらえない
■相続人以外の人が遺産分割に割り入って、かき回している
■寄与分や特別受益を主張する人がいる
■感情的になってしまっている

こんな場合の対処法ですが、まずはしっかりと遺産調査を行うことです。具体的に言うと、『故人名義預金口座の残高明細及び取引経過の開示請求』を想定される金融機関に行うことです。かつては金融機関から、「共同相続人の一人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することは預金者のプライバシーを侵害し、金融機関の守秘義務に違反する」として拒否されることがありました。

しかし現在は、民法の改定がなされ、相続人は被相続人名義の預金口座の残高明細及び取引経過の開示を単独で請求出来ます。他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由にはなりません。金融機関の担当者によっては、このことを認識していない場合もありますが、まちがいありません。これが明らかになることによって、遺産の内容をしっかりと共有できさえすれば、遺産分割協議の第一歩を踏み出すことができます。


遺産調査の後は、2つの進め方があります。ひとつは、「話し合いでの解決を目指す方法」。
もうひとつは、「裁判手続により進める方法」です。

話し合いでの解決を目指す場合、どうしても方法遺産分割の基準となる法律を知らないために協議が進まないケースが多くみられます。しかし、仮に調停や審判になってしまった場合の弁護士費用は、遺産総額の数%~十数%にもなります。遺産総額が数千万円なら、弁護士費用だけで数百万円にもなる計算です。非常にもったいないですよね。また、協議が調わなくて家庭裁判所の審判になる場合、基本的には法定相続分を基準に分割される場合が殆どです。つまり、当事者がお互いに意地を張るだけ時間の無駄ということです。

■仮に弁護士に頼んだ場合の裁判費用は、非常に高額になる
■弁護士に頼んでも、結局は法定相続分での分割になる可能性がある

という前提を踏まえれば、冷静に話し合って譲るところは譲ったほうが、お互い時間もお金もかけなくてすみますよね。こうしたことを丁寧に根気よく説明することで話し合いがまとまるケースを多く見てきました。

しかしながら、ある程度の説得を試みてもどうしても相手方相続人が納得しないという場合には、いよいよ裁判手続をもって強行的に進めるしかなくなります。裁判手続を進める場合には、大きくは3つの方法が考えられます。

■自分でやってみる
■司法書士に書類作成を頼んでみる
■弁護士に代理を頼んでみる

証拠もあって、客観的にあなたが正しい事案なら、わざわざ弁護士に依頼するまでもなく、弁護士または司法書士に書類作成を依頼すれば勝訴できる可能性があります。しかし、証拠がない事案や、判例でもどちらの言い分が正しいのかが微妙な事案では、最初から弁護士に依頼したほうが良いでしょう。

いずれにせよ、遺産分割がまとまらずにお困りの場合には安易な行動をせず、まずは信用のおける専門家に相談してみることです。独断専行で相手方に安易に連絡を取ってしまうと、その発言や送付物が原因で裁判に負けてしまう可能性もありますからご用心ください。

【ポイント】

このケースを受けて、私どもでは、(死を予感するまで待つことなく)元気なうちにこそ、遺言の作成をお勧めしています。極端な話、『子供たちが困らないように』という理由のみならす、『最後に言いたいことを言ってやる』とか、『私の面倒を見てくれない子には財産はあげないわよ』といった意思表示でも構わないと思います。遺言を残そうという意思を明確にすることで、否が応にも遺産分割案を考えなければならなくなります。

これさえ整理できてしまえば、遺言状という形をとらなくとも、家族会議のような場でお考えを明確に伝えることができるはずです。が、経験則からいくと、やはり書面にしたためておくほうがベターかもしれません。どんなに仲がよく見える身内であっても、いざお金の話になるや腹の探りあいやら諍いやらが起きてしまうものですからねぇ・・・。


なお、遺言状の作成を検討する段階で、やはり気軽に相談のできる専門家の目星をつけておいたほうがいいでしょう。効力のある遺言のためには、やはりお作法というものがありますからね。法律のプロであれば、弁護士よりは司法書士。司法書士よりは行政書士のほうが敷居も低く、費用も安いというのが一般的です。あとは社会福祉士。彼らは、医療・福祉・葬儀・法律・お金など、長生きしていれば誰しもが通る道についてのゼネラリストです。相談の最初の入口としては最適かもしれません。概ね人当たりもいいし、法外な相談料も要求しませんからね。

真の“終の棲家”を実現できるのは医療機関だけ!

認知症の父の受入れ先を探し回ったのはもう8年も前のことだ。当時、推定150万人の認知症患者のうち1割に当たる“他人に迷惑を及ぼす可能性のある”認知症だった父の行き先はなかなか決まらなかった。自宅での介護生活の間に、母は2度救急車で運ばれた。最初は極度の疲労とストレス、二度目は父の暴力による眼底等の骨折が原因だった。都内6ヶ所の施設等に体験入所したが、3ヶ所は予定の半分も持たずにサジを投げられた。

施設側の言い分は、「他の入居者に迷惑が及ぶ危険性が高い」、「ヘルパーが24時間、つきっきりで居なければならない」、「認知症に対応できるスタッフがいない」というものだった。残りの3ヶ所はそれぞれ約1ヶ月もったものの、「日常的に医療体制が整った場所に入れるべき」、「可能な限りご家族がスタンバイしてくれるなら再検討する」、「夜間緊急時の対応に責任が持てない」という理由で断られた。

そして今、今度は母も認知症となり、再び終の棲家を探すことに・・・。が、父のときとあまり状況は変わっていない。応対に出てくる職員の方たちと話せば話すほど、彼らの話を聴けば聞くほどに不安が募ってしまうのだ。


いくつもの施設等を見て回るなかで、気づいたことが2点。ひとつは、入居を断られたすべての施設のパンフレットやホームページに、若干表現の違いこそあれ「認知症でも受入れ可」・「24時間、安心の医療サポート」と謳われていたこと。もうひとつは、「入居一時金なし~600万円、月額自己負担金(医療・介護は除く)15万円~38万円」の幅と、実際に提供される医療・介護サービスおよびスタッフの質に相関関係はないということである。

結局、お金の高さは建物・内装・調度品などのハードウェアに比例するというのが実感だ。ちなみに、私どもNPOが昨春実施した調査によれば、入居者側の施設選定基準は、上位から、①医療・介護サポート ②金額(明朗会計) ③日常の生活支援サービス となっている。特に①と③については、 “誰が何をどこまでやってくれるのか”を可能な限り具体的に説明する責任が、施設側にはある。一方で入居者側には、それを理解・納得して契約する責任が求められる。


医療法人でも高齢者施設・住宅に参入できるようになって久しい。医療経営者には“誰のために、どのような住空間を提供するのか”をじっくりと考えて欲しいものだ。間違っても不動産ビジネスなどという意識は持って欲しくない。建物系企業が持ち込んでくる話はハードウェアに比重を置きがちだ。彼らのビジネスは“建てる”ことであって、入居者のQOL向上ではないから当然の話ではある。

都市部を中心に、相も変わらず一見して富裕層ねらいと見て取れる豪華な施設の建設ラッシュだが、調べてみると、運営会社は入居者確保に四苦八苦しているのが実態だ。建てた人(建てさせた人)だけが潤っているのが容易に想像できる。だからこそ、建った後、彼らがいなくなった後も運営していかなければならない医療経営者には、誰に惑わされることもなく、自らが実現したい医療・介護サービスの提供のあり方について十分に吟味して欲しいものである。

アンパンマンのマーチ(作詞:やなせたかし)

そうだ!嬉しいんだ生きる喜び たとえ胸の傷が痛んでも

何の為に生まれて 何をして生きるのか 答えられないなんて そんなのは嫌だ!
今を生きることで 熱いこころ燃える だから君は行くんだ微笑んで。

そうだ!嬉しいんだ生きる喜び たとえ胸の傷が痛んでも。
嗚呼アンパンマン優しい君は 行け!みんなの夢守る為

何が君の幸せ 何をして喜ぶ 解らないまま終わる そんなのは嫌だ!
忘れないで夢を 零さないで涙 だから君は飛ぶんだ何処までも

そうだ!恐れないでみんなの為に 愛と勇気だけが友達さ
嗚呼アンパンマン優しい君は 行け!みんなの夢守る為

時は早く過ぎる 光る星は消える だから君は行くんだ微笑んで
そうだ!嬉しいんだ生きる喜び たとえどんな敵が相手でも
嗚呼アンパンマン優しい君は 行け!みんなの夢守る為

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特攻隊として飛び立ったやなせ氏の弟さん。
それがアンパイマンの正体だ。
特攻命令を受けた彼は、自分が二度と母国の地を踏むことは無いと悟り胸の痛みを感じつつも、使命を全うして死んでいくことのなかに「生」を実感する。
涙をこぼすことなく、死を恐れることなく、みんなの夢を守るために。
戦いに行くのは自分一人だけでいい。愛と勇気だけを連れて行くから。
幸せとは何か。
何のために生きるのか。
その答えを知らずに生きるのは嫌だ。
そして・・・。彼は飛んだ。微笑みながら特攻隊としての任務を果たしたのだ。
まるで光る星が消え行くように。彼は微笑みながら飛んだ。みんなの夢を守るため。

しかし、こんどは、かけがえのない弟を失った兄・やなせ氏の苦悩と葛藤が始まる。
たったひとりの弟を失った悲しみ。
自分だけが生き残ってしまった悔恨。
理不尽だけれどもどうにもならなかった時代・・・。
長年ひきづっていたそんな思いを託して、やなせさんはアンパンマンを生み出した。最愛の弟さんとともに。

肥満と不健康がとまらない

全人口の30%が過体重および肥満という事実小中学生の肥満児出現率がここ30年で3倍に
これほど多くのヒトを不健康で肥満にしたのは誰か
★とてつもなく強大な力が、私たちが自らの健康をコントロールできないよう操作している。いいえ。そればかりか体重増加を促している。あまりに強大なその力を食い止めるために、私は改めていま、ハナコマ流の食革命を推進していきます
 

知人のNPO代表者(って言うか、親愛なるJさん、つまり山崎さん)が、2006年の春の健康診断で初めて『肥満』と判定され、アルコール量の低減ならびに食生活全般の改善を宣告されました。それ以来、私はJさんをモニターに(ゴメンなさい!)、『意思の弱い人間でも、楽に継続的に実践できる食改善』について取り組んできた。

その過程で私がもっとも危機感を抱いたのは、
心身ともに健康的な生活を送るために不可欠な三大要素『食事・運動・ストレスコントロール』について調査すればするほどに、肥満というものの恐ろしさを再認識したからである。

米国同様、いまの日本にも過体重と肥満が蔓延しつつある。特に、未来ある子どもたちにその悪影
響が出始めていることは、私たちがもっとも気にかけねばならない点である。

私が肥満について学んだうち、もっとも重要なのは、これほど多くのヒトが不健康で肥満に陥った最
大の理由は、生物学ではなく経済学と密接に関係しているということ。とてつもなく強大な経済力が、私たちが自らの健康をコントロールすることを妨げている。それどころか、私たちの体重増加を促しているのだ。そして、その力はあまりにも強大で、それを食い止めるためには、生半可なエネルギーでは太刀打ちできない。

今回からは、私が推進する食生活革命の背景について、みなさまにわかりやすく説明していこうと思います

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