NPO法人 二十四の瞳
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真の“終の棲家”を実現できるのは医者だけだ!

認知症の父の受入れ先を探し回ったのは5年前のことだ。当時、推定150万人の認知症患者のうち1割に当たる“他人に迷惑を及ぼす可能性のある”認知症だった父の行き先はなかなか決まらなかった。

自宅での介護生活の間に、母は2度救急車で運ばれた。最初は極度の疲労とストレス、二度目は父の暴力による眼底等の骨折が原因だった。都内6ヶ所の施設等に体験入所したが、3ヶ所は予定の半分も持たずにサジを投げられた。

施設側の言い分は、「他の入居者に迷惑が及ぶ危険性が高い」、「ヘルパーが24時間、つきっきりで居なければならない」、「認知症に対応できるスタッフがいない」というものだった。残りの3ヶ所はそれぞれ約1ヶ月もったものの、「日常的に医療体制が整った場所に入れるべき」、「可能な限りご家族がスタンバイしてくれるなら再検討する」、「夜間緊急時の対応に責任が持てない」という理由で断られた。

当時、父のためにいくつもの施設等を見て回るなかで気づいたことが2点。ひとつは、入居を断られたすべての施設のパンフレットやホームページに、若干表現の違いこそあれ「認知症でも受入れ可」・「24時間、安心の医療サポート」と謳われていたこと。

もうひとつは、「入居一時金なし~600万円、月額自己負担金(医療・介護は除く)15万円~38万円」の幅と、実際に提供される医療・介護サービスおよびスタッフの質に相関関係はないということである。結局、お金の高さは建物・内装・調度品などのハードウェアに比例するというのが実感だった。

ちなみに、わがNPOが今春実施した調査によれば、入居者側の施設選定基準は、上位から、
①医療・介護サポート ②金額(明朗会計) ③日常の生活支援サービス ・・・となっている。

特に①と③については、施設側には、可能な限り具体的に、“誰が何をどこまでやってくれるのか”を説明する責任がある。一方で入居者側には、それを理解・納得して契約する責任が求められる。


医療法人でも高齢者施設・住宅に直接参入できるようになった今、ドクターには“誰のために、どのような住空間を提供するのか”をじっくりと考えて欲しいものだ。間違っても不動産ビジネスなどという意識は持って欲しくない。

建物系企業が持ち込んでくる話はハードウェアに比重を置きがちだ。彼らのビジネスは“建てる”ことであって、入居者のQOL向上ではないから当然の話ではある。

ここ数年、都市部を中心に一見して富裕層ねらいと見て取れる豪華な施設等が建設ラッシュだが、調べてみると運営会社は入居者確保に四苦八苦しているのが実態だ。建てた人(建てさせた人)だけが潤っているのが容易に想像できる。

だからこそ、建った後、彼らがいなくなった後も運営していかなければならないドクターたちには、誰に惑わされることもなく、自らが実現したい医療・介護サービスの提供のあり方について十分に吟味して欲しいものである。

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