CRMってなぁに?

さて、早速ですが、一般産業界で当たり前に使われている顧客開拓&育成手法 《CRM》をあなたはご存知ですか?
 
CRMとは、(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:Customer Relationship Management)の略で、顧客を、自社にとっての重要度(購入金額や購入頻度など)によって幾つかの階層に分類し、各階層ごとに一定の決まりを設けて情報発信することで顧客を刺激し、顧客を段階的に 優良顧客へと引き上げていくシステマティックな手法のことです。
 
転じて、医療や福祉の世界に目をやると、こうした仕組みが導入されているケースは殆どありません。確かに、患者さんや利用者さん等に直接売り込みをかけるような世界ではないことは承知しています。

 

しかしながら、例えば介護サービス事業に目をやれば、介護保険がスタートして丸11年。居宅介護ビジネス自体が成長期から成熟期に差し掛かり、要介護認定者 500万人の利用者(実際に給付を受けている人は400万人)を10万事業者(実働ケアマネジャー15万人)でシェアしている過当競合状況において、効率的な新規利用者の獲得とその育成(利用金額や利用期間、更にはひとりの利用者がもたらしてくれる売上・利益の最大化)を考えない経営者はいない筈です。
 
なぜならば、突き詰めて考えれば、経営とは次の3点に尽きるからです。
 
  ①   見込客を開拓する 
  ②   見込客を顧客にする
  ③ 顧客をリピート客に育成する
 
この一連の流れがスムーズでない場合、いや、もっと本質的に言えば、①の仕掛けがない場合、遅かれ早かれ、その企業は経営破綻します。どんな大企業であろうと、どんな個人事業主であろうと同じことが当てはまります。
 

であるからして、百貨店をはじめとする小売業、航空会社・ホテル等のサービス業、更には、自動車・家電・食品等のメーカーに至るまで、各企業はかなりの投資をしてCRMを導入・展開してきたわけです。
 
そして、多くの場合、いかに①を費用効果的に実現するかという点が最大の焦点になります。増してや、取り扱っている商品・サービスが商品サイクル上、成熟期に位置する場合、一般には広告宣伝にコストをかけてはならないのがマーケティングの鉄則です。

では、どうやって①をローコストで実現したらいいのか・・・? これこそがみなさまにお伝えしたいテーマであり、『患者(利用者)獲得大作戦(PRM)』を企画した主旨なのです。

 

    

2005年以降に開業した院長のコメント

周辺の診療所を視察した結果、一日100人は堅いとタカをくくっていたが、際に始めてみると5ヶ月間はひと桁状態が続いて焦った。いつまでたっても者が全然増えないのだ。
 
同じ市内にある病院を退職して開業した。地域ではそこそこ知名度もあると思っていたから楽観的に考えていたが、開業月は平均外来患者数が2人に届かなかった。
 

開業時のことを思い出すたびに冷や汗が出る。それほど患者が来なかった。窓から通りを見下ろしながら、「ウチに入れっ!」と心で叫んでいた。しかも、やっと来た患者もそれっきり。
 

開業当初は、患者に「私の足を舐めたらもう一度来てあげる」と言われたら舐めたと思う。
 

患者がゼロにもかかわらずスタッフへの給料は払わねばならず、預金をかなり持ち出した。
 

夏場に開業すると、全く患者がこない。ただし、小児科・耳鼻科は夏休みには患者が増える。また、花粉症が終って以降、患者は激変する。8月は特に少ない。おとなの外来が増えるのは冬。インフルエンザが流行る季節を狙ってオープンするとよい。
 

最初の患者が満足すれば、新規患者を最低でも3人は連れてきてくれる。そう聞いていたが、実際には思ったほど口コミは期待できなかった。

いかがでしょうか?
 

来年の診療報酬の改正で、各医療機関では大打撃を受けるところが多い筈です。そこへ来て、更に患者数まで減ってしまうとしたら、これはもう決して冗談ではなく「医療経営厳寒の時代」の到来です。旧態依然とした「知らしむべからず、依らしむべし」といった、医療を提供する側にとって非常に都合のいい風潮は、もはや批判の対象です。早急に消し去らねばなりません。
 
 「医療機関もサービス業」と言われて久しいですが、流通サービス業界のお客様に対する接し方と比較すれば、殆どの医療機関の患者さんへの対応は論外の外です。これからは、もう「患者さん」でも、上っ面だけの「患者様」でもなく、本当の意味で「お客様」という対応をしていかなければなりません。
 
しかし、ここで開業医をはじめとする医療機関のみなさんは、はたと気づきます。ホテルやデパートなどは、具体的にお客様をどのようにマネッジしているのだろうか?このサービス業のノウハウを知らなければ、いくら場当たり的に動いてみても報われるものではありません。
 
さて、ここからようやく、当レポートの主題である『PRM ~患者獲得大作戦を決行せよ~』の本質に踏み込んでいきます。
 

まずは、私が、社会人になってから15年間を費やして、流通サービス業界のクライアントとともに試行錯誤してきた顧客管理手法について触れておきましょう。この手法をベースとして、医療機関(病院も含む)や介護サービス事業者の方々向けにアレンジした画期的患者(利用者)獲得ノウハウ、それが後述するPRMなのです。

医療機関(個人開業医を含む)が直面している課題

 さて、今回からは、『医療経営の浮沈を握るコミュニケーション戦略 ~PRM~』について読んでみて下さい。この手法がベストかどうかはわかりませんが、これまでに手がけたケースにおいては100%評価と満足を勝ち取っています。 
 

2002年以降、診療報酬はマイナス改定が前提です。そして2012年、いよいよ大鉈が振るわれます。霞ヶ関界隈で『恐怖のダブルインパクト』と呼ばれている、診療報酬と介護報酬の同時マイナス改定のことです。
 
となれば、従来と同じ数の患者さんに、同じような診療行為をするにとどまっているならば、収益は減少して当然なわけです。しかも、現実問題として、殆どの診療所では、のべ患者数が減少しています。患者数を2002年当時と比較して維持している診療所はごく一部に限られます。なぜ患者数が減っているのでしょうか。
 
ひとつには、診療所数の増加が挙げられます。背景には、医療改革に伴う病院数の減少と、あいも変わらず毎年8千名ずつ増え続ける医師数の増加があります。要するに、大学の中で居場所がなくなった医師たちは開業するしかなくなるわけで、俗に言う開業コンサルに背を押されて、結構楽観的に明るい未来を描いて地域に下りてきます。
 

たしかに、わが国は、世界に類のない長寿高齢王国です。高齢者をはじめとする患者の数も増え続けるのではないかと主張する方もいるかも知れません。しかし、やはり殆どの診療所では患者の数は減っています。とどまることを知らない医療過誤報道、医療現場を題材としたテレビドラマやバラエティにコミック、いわゆる患者学ブーム。これらを通じて、患者さんたちは極めて戦略的な行動を取るように変化しているのです。

つまり、患者側もしっかり賢くなっているわけです。現時点での後期高齢者ならともかく、これから2015年までに65歳以上になる団塊世代は非常に勉強熱心です。いくら医者の言うことであろうと、自分で納得できない買い物はしないでしょう。検査然り、薬然り、手術然りです。既に彼らの間では、現代医療に対する怒り・不信・諦めが徐々に浸透してきています。

 
しかも、霞ヶ関が描いている驚愕の医療再編シナリオ『2015年、メディカル・カタストロフィー(医療界の悲劇的結末)』には、いよいよ淘汰されても文句の言えない、ムダな医療が具体的にリストアップされています。質的あるいは量(規模)的に中途半端な病医院は、間違いなく地域でのポジションを失うことになるはずです。 
 
次回は、こうしたパラダイムシフトが動き出した昨今、無謀にも?開業されたドクターのナマの声を拾ってみましょう。いかに患者さんを確保することが困難か、その一端はおわかりいただけるのではないでしょうか。  

 

PRMerへのエール

 今までは開業すれば喰えた。先生、先生と持ち上げられもした。例えそれが、地域医療に対する志の欠片もなく、ただ単に医局でのポスト争いで先が見えてしまったり、薄給でプライベートまで犠牲にせざるを得ない勤務医生活に疲弊したりして、消極的動機から開業の道を選んだ医者であったとしても、である。              

 しかし今、第一次小泉内閣以降の医療改革がジャブのように効いてきて、競合激戦区では数年前から事実上の倒産に追い込まれる開業医が確実に増えている。こんな冬の時代だから開業しても患者が来ない。これはもう見事なまでに来ない。遅れ馳せながらではあるが、開業医にも経営努力が求められる時代が来たわけだ。真剣勝負と言ってもいいだろう。

 この真剣勝負を乗り切るためのツールPRMについて、いよいよ次回から説明していくことになる。PRMはおそらく最強の経営改革手法である。それでいて実にシンプルで即効性がある。院内のムードが一変する。
 

 しかしながら、PRMを導入すればだれでもが成果を収められるかと言えばそうではない。アナタが心からサービスマインドの重要性に納得し、実践する意思と行動力があるかどうか。平たく言えば、眼の前の患者のみならず、地域の方々ひとりひとりに対して、少なくとも意識レベルで身内のようないたわりの情を持てるかどうか。つまるところ、サービスマインドなのである。
 
 そう、ただもうひたすら、アナタがして欲しくないことは絶対に彼らにしない。アナタがして欲しいと思うことを彼らにしてあげるのだ。これを理解できたアナタが
PRMという武器を手にしたときこそ、貴院およびアナタのブランディングの始まりだ。幸いなことに、世の中の分の開業医はこのことに気づいていない。仮に気づいたとしても、具体的なアクションプランを持っていない。アナタにとって千載一遇のチャンスなのである。
 
 自らの心の持ちようを変革し、地域の人たちのバックボーンとならんとするアナタに敬意を表して、今日からPRMの実践者を
PRMer(ピーアールエマー)と呼ぶことにしよう。
 

 首都圏では、月に2施設のペースで医療機関の実質的な経営破綻が起き、消費者金融や風俗営業店のブラックリスト上位にドクターが名を連ね、医師との出会いを仲介する結婚相談業者への入会金が年々低廉化している。

 つまり、医師は、もはや古き良き時代のような花形商売ではなくなった。遅れ馳せながらではあるが、他の産業同様に、医師も地に足をつけて経営と商売に取り組むべき時が来たのである。

 
 この現実を理解していただいた上で、もう一度アナタを地域の花形として甦らせる最強の方法論。それがPRMなのだ。
 
 信じるか、信じないか。試すか、試さないか。いずれも選択権はアナタにある。デパート、航空会社、ホテル・・・。異業種で導入されてきた経営手法を学んでみようという謙虚な気持ちが、果たしてアナタにあるだろうか。幸運を祈る。
 

 今のままではいけないと感じていらっしゃるアナタには、次回より、PRMの具体的な作業手順をご用意致します・・・。

職員をソノ気にさせる

 経営者がなにか新しいことを始めようとする際、最初に考えなければならないことは人の気持ちだ。職員の気持ち。案件によっては患者の気持ち。これを度外視して理屈だけで走ると必ず歪みが生じてくる。世の中の技術革新がいくら目ざましくとも、結局最後は人手に頼らざるを得ない。肝心のその人の気持ちがないがしろにされていたとしたら、いかなる作業にも心が入らない。情熱、ヤル気、真心が入らないのだ。時にマイナスに作用することすらある。いちばん簡単な方法は楽しくできる作業をあてがってやることだ。楽しくて、やりがいを感じることができる作業・・・。
 
 多くの医者には理解できないかも知れないが、それは、患者との直のコミュニケーション、会話なのである。これは好都合だ。アナタは職員にサービスマインドを根付かせるための具体的な方法を教えてやればいい。
 
 その方法は、TDLやリッツカールトンホテルの研修マニュアルや、医療業界では聖路加国際の接遇マニュアルに綴られている。まずは職員それぞれが、特に親近感を感じている患者さんを5人、具体的に選定し、彼らに対して、「自分がして欲しくないことは絶対に彼らにしない。自分がして欲しいと思うことを彼らにしてあげる。」これを徹底実践していくというもの。

 すると、いつしかこの総和が院内全体に心地よさをもたらすのである。目には見えないものを提供して対価を支払ってもらうサービス業にあっては、顧客満足の構成要素の中で、これこそが、もっとも具体的でわかりやすく、かつ効果的な方法だと感じている。

 
 本当の意味でアナタの待合いに患者を連れてくるのは、アナタの技術ではない。そんなものは良くて当然なのだ。プラスアルファとして、心身を病んだ患者たちの印象と記憶に残るのは、受付の笑顔、看護師の温かみある問診、待合いですれ違う職員のちょっとした声かけ等々。

 
 これらはすべて、患者を心地よくさせるサービスマインドなのだ。このことを全職員が理解し実践するためには、そう、まずはトップであるアナタ。トップがいい加減だと職員もいい加減になるもの。子どもの躾と一緒なのだ。

医療の原点に帰れ

 さて、診察室においては、視診・問診・触診が基本である。風邪と思しき患者さんの扱いは特に重要だ。彼らは、アナタの風邪の診察ぶりを観察しているはずだ。高視聴率の医療番組を彼らは観ていたかもしれない。

 その番組によれば、風邪の診断こそがもっとも難しい。然るべき時間をかけなければならない風邪と思しき患者さんとのやりとりこそが、かかりつけ医として相応しい医者かどうかのチェックポイントになるという。 
 ズバリ、医療の原点ともいえる3つの基本をじっくりと時間をかけてやってくれる医師が評価される時代なのだ。デジタル時代だからこそのアナログなのだ。これ、おわかりいただけるだろうか。

 
 高度先進的な検査機器ではないのだ。サービス業とは人とひとの「触れ愛」なのだ。患者さんを見るあたたかい眼差し、不安を受け止めてあげる優しく穏やかな語りかけ、アナタの手指の温もりを伝えるスキンシップ。この視診・問診・触診の過程で、アナタの人となりが患者に伝わるのだ。信頼関係が芽吹く重要不可欠なプロセスなのだ。
 
 
 極論すれば、不慣れなうちは演技でもいい。眼の前に座っている患者さんを身内の誰かだと思って、心の底から「どうしたのですか?大丈夫、いまキチンと調べて最善の方法を見つけますからね。心配しなくていいのですよ。肩の力を抜いて、ラクにして。お辛かったでしょうねぇ。もうちょっとの辛抱ですよ」。

 こう囁きながら視診・問診・触診をするのだ。3分続ければ、患者の、少なくとも心は救われる。あったかい気分になって、アナタへの信頼が確立されるだろう。例えて言えばこうだ。アナタと偏差値を比べれば雲泥の差のタレントもどきだって、ブラウン管を介して何千何万という視聴者を感動で泣かせたり笑わせたりできるのだ。
 

 要は、なりきることが大切で、嘘も10回繰り返せば本当になる。結婚詐欺師は、騙す相手に「愛してる」と繰り返すうち、本当に相手を愛せるようになるという。日野原重明さんは、冬場は白衣のポケットにホッカイロを入れている。触診するときに温かな温もりを注ぎ込むためだ。彼でさえそうなのだ。

 3分が無理なら2分でもいい。続けていくうちに、結婚詐欺師よろしく、アナタは何も知らずに頭を垂れている患者さんを愛しく思えてくるはずだ。そして、これこそが、アナタの信者を作る最短の道であることを断言する。

サービスマインドはあるか

 何でもいいのだ。時間を割いてアナタのもとに来てくれた患者さんが、まったく何の歓びも感じなかったしたら、アナタがたはその患者さんからお金をいただく価値がない。厳しいが、それがサービス業の本質だ。(本心を言えば、これが社会人としての必要ミニマムだと思っている。)
 
 そして、このエンターテインメントのベースとなるのがサービスマインドだ。サービスマインドとは何だろう。「人が人を癒す」という言葉がある。この言葉を肝に銘ずべきだ。医者をはじめとする医療従事者は、いつも病人や怪我人に囲まれている。それが日常の風景だ。だから気を緩めると、痛みに耐えながらさまざまな苦難を乗り越えて受診にやってきた患者さんの大変さ加減に鈍感になりがちだ。 
 

 
 患者さんにとっては、病院は非日常的な空間なのだ。
だから、何時間も待たされてようやく順番がきた患者さんに労いの言葉ひとつかけられないようなドクターは、社会人として非常識と言わざるを得ない。ましてや、初対面の患者さんに対して、ろくに挨拶もしない、名前も名乗らないなどもってのほかだ。基本は患者の立場になって、その苦しみや痛みを理解しようとすることだ。そして、それを少しでも和らげてあげようとする心。

 
 これが医療の世界のサービスマインドである。医療サービスが物販ビジネスでない以上、アナタと患者とが向かい合っている瞬間がすべて。これからの時代の医療とは、地域の人たちとの関係構築ビジネスなのである。

 その瞬間瞬間に何かしらの形で患者をエンターテインできるかどうか。患者と向き合っているアナタのなかにサービスマインドがあるかどうか。これが試される時代が来たということだ。もはや藪医者とは、診断のできない医者や手術の下手な医者ばかりを言うにあらず。サービスマインドが劣っていても、それは立派な藪医者の条件なのである。

 

 

 

キーワードはエンターテインメント

  もっとわかりやすく言うとこうなる。巷には、医療に取り組む姿勢以前の問題として、威張っている医者が実に多い。診察室ではあからさまにしないまでも、心のどこかで唯我独尊モードの医者たち。確かに医者は頭がいいのかも知れない。良い家柄なのかも知れない。お金だって当然あるだろう。が、だからと言って、アナタは偉いのか?

 
 仮に、そんな驕りが少しでもあったとすれば、あるいは、患者や職員との間に上下関係を敷いていたとすれば、そんな医者は、やがて裸の王様になり、淘汰される。特に開業医であればなおさらだ。
 

 しかし、まだ間に合う。アナタが心底サービスマインドを理解して、今から実践したとすれば、ファンは必ず着いてくる。この先も増える。そして、マイナス改定が続いても勝ち残れる。他の業界と異なり、医者の世界には、新しいことや別の世界について学ぼうとすらしない輩がうじゃうじゃしている。これはアナタにとってなおさら好都合だ。                             
 
 改めて念押しをするが、医療もサービス業である。この命題に対して心の底からイエスと言えるアナタ。サービス業であるならば、キーワードはエンターテインメントである。特にプライマリーケアを担う開業医は、専門的な医療を行う医者以上にこの点を理解する必要がある。このエンターテインの最も基本的なものが前述のコミュニケーションということになる。
 

 

 
 何かしらの苦痛や不安を抱えてアナタのもとを訪れた患者が、「ああ、キツかったけれど先生のところへ来てよかった」、「痛みの原因がわかってホッとした」、「痛み止めを打ってもらって幾分楽になった」、「あの看護婦さんは注射がうまい。ちっとも痛くなかった」、「受付のお嬢さんは、いつでも元気でにこにこ。本当に元気付けられる思いだ」・・・等々。

コミュニケーションが命

 私は、医療の質とは、突き詰めていけば「診療(診察と治療)の確かさ」と「患者満足度」だと考えている。特に開業医の場合、前者は診立てと治療方針(自院で対応するか、然るべき連携先に振るかも含めての意味)、後者は根拠の提示とわかりやすい説明となる。実はここで、医者と患者とのコミュニケーションという問題がクローズアップされてくる。
 
 かつて、母校の云十周年記念行事の講師として聖路加
国際病院の日野原重明さんの話を聞く機会があった。彼は、「医療とは患者と医師の両者で作り上げるもの。そこには必然的に信頼関係が不可欠であるが、そのためにはまず、医者は聞き上手に、患者は話し上手になるべし。」というくだりがあった。

 
 私なりに噛み砕けば、患者さんがリラックスして、うまく話せるように効果的な質問をしながら診立てと治療方針を提示。かつ、その根拠をわかりやすく説明して理解させる作業が医者には求められるのだと思う。

 考えてみれば、遠いギリシャ時代からプラトンも言っていたではないか。「医術とは、患者の本性をよく考察した上で、今後の処置についてその根拠を示し、説明するプロセスである」と。こうしてみたときに、いま私たちのまわりに溢れている開業医(ドクター)たるや、果たしてそれを実践していると評価できるだろうか。

患者第一のウソ

 若干主題とは逸れるが、病院側が提供するサービス構成要素のうち、診療自体のことを除いて患者側がもっとも改善してほしいと願っているのが診療時間の問題だ。これは、待ち時間の割りに診療時間が短いということではなく、診療時間の融通性のこと、つまり、休日夜間も含めた診療時間の設定のことである。

 
 
例えば私が社会人になった20年前、大手のコンビニは文字通り夜の11時までしか営業していなかったものだ。それが今や全国津々浦々、どんな片田舎に行こうがコンビニは24時間開いている。百貨店、量販店やスーパーマーケットだって同様に営業時間を延ばし、休業日を減らしている。

 
 が、しかしである。あれから四半世紀が経とうとしている今日でも、医療機関の対応する時間帯は変わっていない。いや、それどころか休診日が増え、実質的にサービスレベルは落ちているのだ。サービス業と言われる各企業が顧客サービス向上を叫び、利用者の便宜を図るべくさまざまな経営努力をしてきたのに対して、医療機関は何の努力も創意工夫もしていない・・・と言ったら言い過ぎだろうか?

« 前へ | 次へ »


NPO法人 二十四の瞳
医療、介護、福祉のことを社会福祉士に相談できるNPO「二十四の瞳」
(正式名称:市民のための医療と福祉の情報公開を推進する会)
お問い合わせ 042-338-1882