経営者がなにか新しいことを始めようとする際、最初に考えなければならないことは人の気持ちだ。職員の気持ち。案件によっては患者の気持ち。これを度外視して理屈だけで走ると必ず歪みが生じてくる。世の中の技術革新がいくら目ざましくとも、結局最後は人手に頼らざるを得ない。肝心のその人の気持ちがないがしろにされていたとしたら、いかなる作業にも心が入らない。情熱、ヤル気、真心が入らないのだ。時にマイナスに作用することすらある。いちばん簡単な方法は楽しくできる作業をあてがってやることだ。楽しくて、やりがいを感じることができる作業・・・。
多くの医者には理解できないかも知れないが、それは、患者との直のコミュニケーション、会話なのである。これは好都合だ。アナタは職員にサービスマインドを根付かせるための具体的な方法を教えてやればいい。
その方法は、TDLやリッツカールトンホテルの研修マニュアルや、医療業界では聖路加国際の接遇マニュアルに綴られている。まずは職員それぞれが、特に親近感を感じている患者さんを5人、具体的に選定し、彼らに対して、「自分がして欲しくないことは絶対に彼らにしない。自分がして欲しいと思うことを彼らにしてあげる。」これを徹底実践していくというもの。
すると、いつしかこの総和が院内全体に心地よさをもたらすのである。目には見えないものを提供して対価を支払ってもらうサービス業にあっては、顧客満足の構成要素の中で、これこそが、もっとも具体的でわかりやすく、かつ効果的な方法だと感じている。
本当の意味でアナタの待合いに患者を連れてくるのは、アナタの技術ではない。そんなものは良くて当然なのだ。プラスアルファとして、心身を病んだ患者たちの印象と記憶に残るのは、受付の笑顔、看護師の温かみある問診、待合いですれ違う職員のちょっとした声かけ等々。
これらはすべて、患者を心地よくさせるサービスマインドなのだ。このことを全職員が理解し実践するためには、そう、まずはトップであるアナタ。トップがいい加減だと職員もいい加減になるもの。子どもの躾と一緒なのだ。