PPPの重要性
めまぐるしく変遷する医療環境下にあって、自施設の将来に向けての舵取りは容易でないことは周知の事実でしょう。しかし、だからといって漫然と流れるままに身を任せていると命取りにもなりかねません。そこで、まずは自院のポジションを再構築、もしくは明確化する必要があることは前述の通りです。
マーケティングの教科書的には、ポジショニングを策定するには、まず、自院が置かれている環境、マーケット(市場)がどのような状態になっているかを把握しなければなりません。例えば、医療行政。病院と診療所の機能分化がはっきりとしてきており、それを誘導する診療報酬体系も確立されつつあります。
また、今後はますます在宅医療サービスにも重きがおかれてくるでしょう。それと同時に、入院・外来・在宅のネットワーク化が推進されてくる筈です。患者動向は、どうでしょうか。長寿高齢化が進み、それに伴って疾病構造が変容してきています。それが、5年後、10年後にはどのように変わっていくのか。この点についてもウォッチが必要となります。
そして、地域の医療施設整備状況は? どの地区にどのような(規模及び機能)施設があるのか。その状況は5年前と比べてどうか。協業することで相互に価値を生み出せるパートナーがあるか。医療計画見直しのガイドラインがかなり具体的にアナウンスされた今、とくに内科系診療所にとっては、ここも大事なポイントとなってきます。
こうした作業を経て得られた結果に、開設者である院長の理念をも反映させながら、自院の、現在並びに将来的なポジションを設定することになるのですが、いかがで しょう。マーケティングを学んだ経験のない方にとっては、かなりタフな作業に映るのではありませんか。こうした一連の作業は、世間のコンサルティングファームに依頼すれば、三ヶ月で六〇〇万円程度の作業量に相当します。
しかしながら、現実には日々の診察をこなしながら、戦略策定のためのプロジェクトを運営できる医療機関は少ないことでしょう。誤解を恐れずに言わせていただけば、医療界で育った方々にとっては、そもそも不得手の領域です。だからと言って、殆どの医療機関は、残念ながら、外部のコンサルタントに数百万を払える程の懐具合でもありません。で、やむを得ず、理屈ではわかっていながらも、日々の業務をルーチン的にこなしていくしかない。そんな悶々とした日々を過ごしている院長や事務長は非常に多いようです。もっと言ってしまうと、そんな危機感すらない方々がその云百倍もいるのがこの医療界の実情なのです。