医療機関(個人開業医を含む)が直面している課題
さて、今回からは、『医療経営の浮沈を握るコミュニケーション戦略 ~PRM~』について読んでみて下さい。この手法がベストかどうかはわかりませんが、これまでに手がけたケースにおいては100%評価と満足を勝ち取っています。
2002年以降、診療報酬はマイナス改定が前提です。そして2012年、いよいよ大鉈が振るわれます。霞ヶ関界隈で『恐怖のダブルインパクト』と呼ばれている、診療報酬と介護報酬の同時マイナス改定のことです。
となれば、従来と同じ数の患者さんに、同じような診療行為をするにとどまっているならば、収益は減少して当然なわけです。しかも、現実問題として、殆どの診療所では、のべ患者数が減少しています。患者数を2002年当時と比較して維持している診療所はごく一部に限られます。なぜ患者数が減っているのでしょうか。
ひとつには、診療所数の増加が挙げられます。背景には、医療改革に伴う病院数の減少と、あいも変わらず毎年8千名ずつ増え続ける医師数の増加があります。要するに、大学の中で居場所がなくなった医師たちは開業するしかなくなるわけで、俗に言う開業コンサルに背を押されて、結構楽観的に明るい未来を描いて地域に下りてきます。
たしかに、わが国は、世界に類のない長寿高齢王国です。高齢者をはじめとする患者の数も増え続けるのではないかと主張する方もいるかも知れません。しかし、やはり殆どの診療所では患者の数は減っています。とどまることを知らない医療過誤報道、医療現場を題材としたテレビドラマやバラエティにコミック、いわゆる患者学ブーム。これらを通じて、患者さんたちは極めて戦略的な行動を取るように変化しているのです。
つまり、患者側もしっかり賢くなっているわけです。現時点での後期高齢者ならともかく、これから2015年までに65歳以上になる団塊世代は非常に勉強熱心です。いくら医者の言うことであろうと、自分で納得できない買い物はしないでしょう。検査然り、薬然り、手術然りです。既に彼らの間では、現代医療に対する怒り・不信・諦めが徐々に浸透してきています。
しかも、霞ヶ関が描いている驚愕の医療再編シナリオ『2015年、メディカル・カタストロフィー(医療界の悲劇的結末)』には、いよいよ淘汰されても文句の言えない、ムダな医療が具体的にリストアップされています。質的あるいは量(規模)的に中途半端な病医院は、間違いなく地域でのポジションを失うことになるはずです。
次回は、こうしたパラダイムシフトが動き出した昨今、無謀にも?開業されたドクターのナマの声を拾ってみましょう。いかに患者さんを確保することが困難か、その一端はおわかりいただけるのではないでしょうか。