コミュニケーションが命
私は、医療の質とは、突き詰めていけば「診療(診察と治療)の確かさ」と「患者満足度」だと考えている。特に開業医の場合、前者は診立てと治療方針(自院で対応するか、然るべき連携先に振るかも含めての意味)、後者は根拠の提示とわかりやすい説明となる。実はここで、医者と患者とのコミュニケーションという問題がクローズアップされてくる。
かつて、母校の云十周年記念行事の講師として聖路加国際病院の日野原重明さんの話を聞く機会があった。彼は、「医療とは患者と医師の両者で作り上げるもの。そこには必然的に信頼関係が不可欠であるが、そのためにはまず、医者は聞き上手に、患者は話し上手になるべし。」というくだりがあった。
私なりに噛み砕けば、患者さんがリラックスして、うまく話せるように効果的な質問をしながら診立てと治療方針を提示。かつ、その根拠をわかりやすく説明して理解させる作業が医者には求められるのだと思う。
考えてみれば、遠いギリシャ時代からプラトンも言っていたではないか。「医術とは、患者の本性をよく考
察した上で、今後の処置についてその根拠を示し、説明するプロセスである」と。こうしてみたときに、いま私たちのまわりに溢れている開業医(ドクター)たるや、果たしてそれを実践していると評価できるだろうか。